秋はいも・クリ・カボチャの他、梨や葡萄・リンゴなどスイーツが美味しくなる食材が豊富です。
パティスリーマルズでお手伝いをしている、りーちゃんとどんぐりさんは、スイーツ作りにより気合が入る季節。
「秋の食材で、一番好きなのって何?」
「カボチャかなぁ」
「そうなんだ。僕はね、おいもが一番好き!」
そんな会話をしているりーちゃんたちは、農家をしているケイヒさんにさつまいも掘りのお手伝いを頼まれます。
「いっぱい掘れたら、マルズさんに持って行ってやってくれな」
「はぁい」
子どもさんと遊ぶのが好きなケイヒさんは、ちょっとテンション高めです。
「そうだ。虫とかもいるからな」
「虫?ほんとだ。つかまえてもいい?」
「今は飯食ってるみたいだから、静かにしておいてやってくれ」
「そっか、そうだよね」
「ほら、この辺良さげだぞ。掘ってみな」
「おっきいおいもある?」
「どうかな?頑張ればあるかな」
「ようし、じゃあ頑張るぞ!おっきいの掘るぞ!よいしょ!」
さつまいもの根は思ったよりも、しっかりと土に張り付いています。
「ん〜!!」
まだ子どもさんであるりーちゃんには、さつまいも掘りは一苦労です。
その間にケイヒさんは、たくさんのさつまいもを掘っていました。
おそらくマルズさんや、マメチュー先生に配るためでしょう。
「わっ」
りーちゃんは力を入れて引っ張ったからか、尻餅をついてしまいました。
「だいじょぶかー?」
「うん。ほら、おいも抜けたよ」
「それ、さつまいもいっぱいついてんじゃん」
「ほんとだ、すごいねぇ。でもケイヒさんが掘ったさつまいもの方が大きい」
「もっと頑張って掘ってみ。俺を越えるくらい」
「ようし」
りーちゃんは、大きなさつまいもがありそうな所を探します。
なんだかトレジャーハンティングでもしている気分。
さつまいもの根元を見ていると、土がもこもこし始めました。
「あれ?なんだろう…わっ!」
再び尻餅をつくりーちゃん。
土の中から大きなミミズが、ひょっこりと現れました。
「だいじょぶかー?」
「でっかいミミズいるー」
「そいつは俺の友だちだ。畑を手伝ってくれるんだ」
その大きなミミズは畑の土を、どんどん良いものにしていってくれるそうです。
おかげで、美味しいおいもを作ることができるのです。
「そうなんだぁ。ありがとだね」
「そう。ありがとだ」
涼しい風が吹き抜け、空気も乾燥し始める季節ですが、秋の日差しはまだまだ強い日もあります。
泥だらけになりながらも一生懸命働いていたため、汗をかいているりーちゃんとどんぐりさん。
「疲れたー」
「お腹減ったー」
「よし、じゃあ今日はこの辺にしておくか」
「そこそこいっぱい掘れたよね?」
「そうだな。二人ともこっちこい」
「なにぃ?」
ケイヒさんに呼ばれてついていった先には、落ち葉が集められていました。
「ここで焼き芋やろうぜ」
「落ち葉で焼き芋?」
「このさつまいもなら砂糖をそんなに入れなくても、十分うまいスイーツが作れるぞ」
「楽しみー」
りーちゃんとどんぐりさんが大喜びした瞬間、強風がポ村を猛ダッシュで通り過ぎて行きました。
ころんと転がっていってしまうどんぐりさんと、風とともに一瞬で消え去ってしまった落ち葉たち。
「わぁ」
「ありゃりゃ」
落ち葉がなくなってがっかりしながらも、なんだかその光景がおかしくて笑い転げるりーちゃん。
転がっていったどんぐりさんも、笑いながら戻ってきました。
「しょうがねぇな。いもはあきらめるか。でも腹減ってんだろ。弁当あるから食うか?」
「え?いいの?」
「ほらこれ。さつまいもの蔓のきんぴら」
「蔓?食べれるの?」
「食えるよ。蔓は天ぷらにしても、なかなかうまいんだ」
「へえ。そうなんだぁ」
さつまいも掘りにきて、なぜかスイーツではなく、渋めのきんぴらを食べているりーちゃんとどんぐりさん。
「ふふ。これ、美味しい」
「ご飯もすすむね」
お腹が減っていたので、二人ともぺろりと食べてしまう。
「おいもは次の楽しみにしよう」
「そうだな。それにしてもあの風のやつ、さつまいもは寝かせて熟成させた方がうまくなること知ってたのかな?」
「そうなの?」
「そう」
「ふうん。さつまいもは寝かせた方がいい。蔓も食べられる。
そっか。メモメモ」
なんだかお勉強になった1日でした。
スイーツはまた今度マルズさんと、つくれば良いのです。
寝かせてより美味しくなった、さつまいもを使って…