前回のお話
てんまさんの異母妹、しょうまさんはカゲに襲われていたダンゴムシを見かけて、助けてあげました。
しかし、カゲから受けた恐怖が大きかっためか、ダンゴムシは未だ怯えています。
そこへひょこひょこと、にゃこさんがやって来ました。
「にゃほ?おまえは…」
「むむ?お前は」
対峙する、しょうまさんとにゃこさん。
“ふっ、にゃこちゃん相変わらず可愛いなって…
ヒュー…
あっ、やば”
「にゃむ?」
“ヒューヒュー”
にゃこさんが来たその時、しょうまさんに喘息の発作が出てしまいました。
ねこさんの毛などが原因で、症状が出てしまう場合があるのです。
「なんにゃ?おまえどうしたにゃ?」
“ヒューヒュー”
「あっ…ううん……
なんでもないよ」
「そうにゃの?」
「にゃこちゃん、久し振りだよね。
まゆは元気…だよね。
てんまは元気かな?」
「にゃ!」
“てんまは元気?”
何となく今、てんまにも喘息の発作が出ているのでは?と思った。
双子でも無いのに…
「にゃま?おまえも、どしたんにゃ?」
にゃこさんは、うずくまって固まっているダンゴムシの存在に気が付いたようです。
「ぐあい悪いにゃか?」
ダンゴムシはにゃこさんの声に、少しだけ反応を示しました。
「そこに水あるにゃ。
飲んだらいいんにゃ」
にゃこさんはしょうまさんの代わりに、ダンゴムシのお世話を始めました。
「にゃちにゃち」
「きゅ…」
ダンゴムシの方もにゃこさんに促されるがままに、お水を飲む。
ダンゴムシは、にゃこさんと接しているうちに“なぜいつまでも、気持ちがふさいでいるんだろう”と感じ始めたようです。
「元気ににゃったか?」
「きゅ」
にゃこさんはダンゴムシが元気になったことを確認してから、しょうまさんの方に目線を向けます。
「それでおまえの方は、てんまちゃんに会いに来たのにゃ?」
にゃこさんはドスンと、しょうまさんの膝の上に座ります。
「てんまに?」
しょうまさんは今、目の前で見ているかのように、てんまさんが自分に向ける顔、そしてまゆさんやにゃこさんに向ける顔の違いを思い出す。
「ううん。違うよ。
今は会いに行かない」
「なんでにゃ?」
「小川に自分から水を飲みに行けるくらい…
元気になったら、そしたら」
「にゃ?」
「だから今はさ、にゃこちゃんが少しあたしの薬になってよ。
お願い、あたしを元気にして?」
「いいにゃよ。
にゃこさんは、セラピーキャットにゃすから」
「セラピーキャット?」
「そうにゃ。
癒すのはにゃこさん、得意なんにゃ」
「そっか、すごいね」
「にゃし」
「あたしは、癒すの苦手かも」
姉のてんまにいたっては、あたしと一緒にいると、居心地が悪そうにしている。
でもそれは仕方がないと思う。
あたしもてんまの顔を見ると、毎回毎回あたしへの気持ちを確かめたくなってしまうから。
それはやはり、うっとうしいだろう。
「いやすの苦手?
そんなん気にすることないにゃ。
おまえの分も、にゃこがいーっぱい癒したるにゃから」
「ほんとに?
お任せしちゃってもいいの?」
「てんまちゃんもおまえも、にゃこが癒したるにゃから。
だから会いに行ったらいいにゃよ」
「えー、でも行かなーい」
「?なんでにゃ」
「……」
「なんでにゃ、なんでにゃ?」
「おしえてあげない」
理由を教えて貰えなくて拗ねてしまったにゃこさんは、ダンゴムシを連れてどこかへ行ってしまいました。
「にゃっふ、にゃっふ!」
「あれ?にゃこちゃん行っちゃうの?」
「おまえのそばに居るより、てんまちゃんのそばにいる方がいいにゃ」
「なにそれぇ。
はっきり言うなあ」
癒しのプロみたいな事をいっていたにゃこさんですが、まだまだセラピーキャットとしては研修中なのです。
「にゃこちゃんたら」
もしかしてこれは、一人で強くなれってことなんです?
そうですか、分かりました。
あたしもにゃこちゃんみたいに、この村みたいに優しい雰囲気を醸し出せるような人間に…そして妹になる…
んー?でも…はて?
どうやってなるんだろう。
“強くなる”
けっこう道のりが遠そうだなと思った、しょうまさんでした。
「いっぱい戦って、経験値つまなきゃ」