にゃんにゃか、にゃかにゃか
にゃんにゃんにゃんっ♪
ポ村には毎月その月のポ村の運勢を、占い師に占って貰うという風習があります。
そしてポ村の住民は毎月当番制で占い師の元へ向かい、その結果を村長に伝えるという役目を担っています。
今月の占い結果は
“世界的危機の影響でカゲが勢力を増してくる”
というもの。
残念ながらとてもいい結果とは、いえるものではありませんでした。
今月の占い担当に任命されていたまゆさん。
少しでも悪い占い結果をいい方向に持って行くため、占い師・ソヨウさんのアドバイスに従いカゲの弱点である十字架を清めにいく事にしました。
「早く清めに行かないと、また村長に睨まれちゃうなぁ。
じゃあ、にゃこ出掛けてくる…」
家の中に、にゃこさんの姿はありませんでした。
「にゃこはもう出掛けてんのか」
まゆさんも出掛けるため、自宅の扉を開けました。
「………」
その時。
まゆさんの頭に不吉なイメージがよぎり、動作が一瞬止まってしまう。
急に頭に飛び込んできたイメージ。
それはまゆさんとにゃこさんが、離れ離れになるというものでした。
「…何?」
(今ひょっとして、ポ村をカゲが通った?)
普段カゲの存在に左右されることが無いまゆさん。
なのにカゲの影響を受け、嫌なイメージを見せられたの?
“世界的危機の影響でカゲが勢力を増してくる”
「占い的中?」
嫌な予感がしながらも、ソヨウさんのアドバイスに従うため、足早にカゲが苦手とする御神木の近くに置いてある十字架の元へと向かって行きました。
(にゃこと離れ離れになる…
そんなくだらない妄想、取り越し苦労だろうけど…
でもなんか気になる)
にゃんにゃかにゃ~ん♪
気持のいい朝。
ご機嫌さんのにゃこさん。
今日も色んなヒトに会って
色んなヒトに優しくして
色んなヒトに優しくされるんにゃ。
にゃふふふふ~ん♪
嬉しそうにポ村をお散歩している、にゃこさんを見つめる何者かの目。
「にゃ?
あれは誰にゃ?」
「オイデ…
コチラヘオイデ………」
少し様子がおかしいように見える人物が、にゃこさんに向け手招きしている。
「にゃっ♪」
いつものように優しくして貰えると思ったにゃこさんは、にこにことその人物について行ってしまいました。
「いいお天気にゃね」
「………」
「何して遊ぶにゃ?」
「………」
まゆさんの嫌な予感は的中していました。
にゃこさんと一緒にいる謎の人物は、まゆさんの予想通りカゲでした。
なぜにゃこさんに…?
ポ村でセラピーキャットとして、お仕事を始めたにゃこさん。
そのせいで村人に対するカゲの悪影響が弱まった…
そう思ったのでしょうか。
カゲにとっては村人に元気を与えている元凶として、にゃこさんは目を付けられてしまったようです。
まゆさんは十字架の元に向かいながらも、意識的ににゃこさんの姿を探していました。
「にゃこが家にいないなんて、珍しいことじゃないのに…
このモヤモヤした感覚は何っ!」
その頃にゃこさんはカゲに、小さな空き家に連れてこられていました。
「ここはどこにゃの?」
「………」
先程から話しかけても、ずっと無視されているにゃこさん。
「もう、にゃこさん帰るにゃ」
「………」
「にゃこさんおうちに帰るにゃっ」
にゃこさんは空き家から出て行こうとしますが、にゃこさんのお手々では扉を開けることが出来ませんでした。
「にゃこ帰りたい」
「………」
「扉を開けて下たい」
「………」
「にゃむぅ…」
何だかとっても、悲しくなってきてしまったにゃこさん。
可哀相ににゃこさんはとうとう、泣き出してしまいました。
涙でにゃこさんの視界が歪んだ瞬間、ボンヤリとまゆさんの姿が見えた気がした…
「まゆちゃんにゃっ!」
「………
やっぱりちがうにゃ…」
にゃこさんの目の前いるのは大好きなまゆさんではなく、相変わらず不気味で奇妙なカゲでした。
すっかり心を閉ざしてしまったにゃこさんは、部屋の隅で固まったまま動かなくなっていました。
「やっぱり今日は、にゃこちゃんのことを見かけた人はいないみたい……」
「そう…」
どうにもにゃこさんのことが気がかりなまゆさんは、USAさんに電話でにゃこさんのことをたずねていました。
「どうしたの?
にゃこちゃんになんかあったの?」
「いや…
何も。
何も無いんだけどさ」
「………。
ねぇ、にゃこちゃんのことが気になるんならあの人に聞いてみたら」
「あの人?」
「まゆさん、昨日の今日でまたアポ無しですか?」
まゆさんは占い師・ソヨウさんの所に来ていました。
ソヨウさんは人気の占い師なので、本来予約無しでの対応は受け付けていません。
「それに個人的な占いはいらないって…」
「困ったら相談しに来いって言ってたじゃん」
「何かお困りなのですか?」
「今にゃこ…うちのねこがどこにいるのか知りたい」
「………」
「いいから早く喋って!
後で、てんまの髪の毛持ってくるから」
「それはとても惹かれるお話ですね。
でも僕は占い師であって、迷い猫専門の探偵ではないので今現在どこにいるかは分かりません」
「そういうのは見えないって事?」
「………。
ただやはり“カゲ”が色濃く関係している。
そのように出ています」
「カゲ……
やっぱりか。
今日カゲって、ポ村のどの辺通って行った?」
リリリリリーン
まゆさんの携帯に、USAさんから連絡がきました。
「まゆちゃんっ!
にゃこちゃんのお帽子が落ちてたんだけどっ」
「!!
どこに?」
「さんかく公園の近く」
「ありがとっ」
「あたしも一緒ににゃこちゃん探そうか?」
ブチッ
「切れちゃった…
ずいぶんあわててる」
カゲはにゃこさんが固まって動かなくなっている様子を、嬉しそうに見つめていました。
まゆさんは素早く部屋の中を見回し、にゃこさんの存在を確認しました。
「前にてんまから、カゲがポ村の住民になりすましてウロついているって聞いてたけど…」
まゆさんがカゲが苦手な十字架をかざそうとする前に、カゲは霧のように消えていってしまいました。
「なんなんだよ、クソっ。
十字架早く元の場所に返さなきゃ…
マジでまた村長に睨まれるじゃん」
一方にゃこさんはまゆさんが迎えに来てくれたことに気付かず、部屋の隅で丸くなったまま小刻みに震えています。
「にゃこ、にゃこっ」
「まゆちゃんの声がするにゃ」
にゃこさんは丸まったまま、呟きます。
「まゆちゃん…にゃの…?」
「そうだよ、迎えに来たよ」
「………
にゃこさん、にゃこさんだまされないにゃ。
また目の前からまゆちゃん、消えちゃうんにゃ。
また悲しい思いをするのはいやにゃ」
「そんなこと言わないでこっち見て」
まゆさんはいつものように、優しくにゃこさんに触れる。
(よかった…)
まゆさんはにゃこさんを撫でながら、ケガがないことを確認。
まゆさんはにゃこさんが安心するまで、優しく撫で続けます。
(まゆちゃんの撫で方にゃ…)
「ホントにまゆちゃんにゃ?」
「うん」
「でも、でも…」
「早くこっち見てくれないと帰っちゃうよ?」
「嫌にゃっ!
まゆちゃん意地悪にゃっ」
「ほら、おいで」
カゲなんかに二人の仲を裂くことは、簡単には出来なかったようです。