マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

セラピーキャットはじめました…のお知らせ

ポ村の中の、ひと気のない場所。


動かないので気付きにくいかもしれませんが、そのような場所には、画家のトウキさんが眠っている場合があります。


今日も横になっているトウキさん。



やっぱり今日も寝ている?


しかし眠っているとはいえ、ピクリとも動いていません。


よく見ると顔色が悪く、表情もつらそうに歪めています。

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トウキさんは病院に行かないため、原因は不明ですが頭痛持ち。

どうやらその頭痛が発症しているようです。



そんな時、トウキさんのまぶたがかすかに動く。


“また…きこえる…”






今日も今日とて、ポ村の中をてくてく歩くにゃこさん。 



ポ村の人はにゃこさんだけでは無く、皆お散歩が大好きです。


でもにゃこさんは、ただお散歩をしているわけではない様子。



「今日はあいつ、どの辺で寝ているにゃろか?」



“寝ているあいつ”

どうやらにゃこさんは、トウキさんを探しているようです。



トウキさんはいつも、たった一人で過ごしている。



「あいつはにゃこさんがセラピーキャットににゃった事を知らないにゃろうから、教えに行ってあげるのにゃ」
 

情報を持っていないトウキさんに、にゃこさんは自慢をしたいみたいです。





一方、相変わらず横になったまま、動く気配のないトウキさん。


少しでも動くと、頭に痛みが響き渡ってしまう。


頭が痛すぎて、何も考えられないといった様子です。


なのに体に染み渡るように聞こえてくる声。


“歌…?”


それは、たまに聞こえてくる歌。



いつもそうだが頭痛の時は匂いも光も、音も受け付けない。


“でもこの歌は…

聞いていても苦痛じゃない。

だれ?…だれなんだ?”

 



てこてこてこ



トウキさんを探して、ポ村を彷徨うにゃこさん。


いつも静かなトウキさんを探すには、ねこさんのお鼻が頼りです。


「あいつの匂い…」


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一生懸命鼻をピクピクさせて、トウキさんの匂いをキャッチしようとしています。


「近くにいると思うんにゃけど」


にゃこさんはトウキさんの匂いを、感じ始めている。

ぷんぷんぷん

ぷんぷこぷん


ピタリと立ち止まる。


“匂い…”


「いたにゃっ!

あいついる…
………。

けど、てんまちゃんの歌声も聞こえるにゃ」


どうやらてんまさんも、この近くにいる様子。


歌うのが大好きなてんまさん。



春になると鳥や虫たちと共に、てんまさんが歌っている姿をよく見かけるようになる。


「てんまちゃんにゃ。
てんまちゃんにゃ」

 

にゃこさんの足はいつの間にやら、てんまさんの方に向かっていました。



「今日こそはあそんでもらうんにゃっ。

…………。

じゃなきゃった」



トウキさんの方を振り返る。



そうです。



今日はセラピーキャットのお仕事を始めたことを、トウキさんに知らせに行くのです。



「あいつときたらまた寝てるにゃし」


プースカ、プースカ

プープープー♪


にゃこさんはてんまさんの歌声を少し遠くに聞きながら、つられるように歌っています。

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「毎日ねてばかりいて、いい気なもんにゃ。

にゃこさんはおしごとで忙しいにゃのに」




プースカプ~
プッププ、プ~♪


「にゃ?」



トウキさんに近付いてきたにゃこさんには、気付いたことがあります。



いつもより更にトウキさんが、身動きをしない。



「にゃも…?」


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トウキさんの様子を伺うにゃこさんは、肉球をおでこに当ててみる。



「暑いにゃか?

汗かいてるにゃ」


にゃこさんの気配を感じたトウキさんは、重そうにまぶたを持ち上げる。



そして体の中にいる悪いものを外に追い出すように、ゆっくりと息を吐く。



「うた…」



「何にゃ?

うた?お歌聞きたいにゃか?」


「うん…」


にゃんままま~

プースカプ~♪


トウキさんは、一生懸命お歌を歌っているにゃこさんをボンヤリと眺めています。



にゃっこすっこ、プー♪


「元気ににゃったか?」


「……」


「どうにゃ?」


「…ぷっ」


「にゃ??」




「あははっ」


トウキさん、突然の大爆笑。

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元気にはなったみたいです。



「何にゃよ。

何がおかしいんにゃよ?」


一生懸命歌ってあげていたにゃこさんは、大笑いされてご機嫌を損ねてしまいました。



にゃこさんは忘れています。


セラピーキャットになったと、トウキさんに伝えに来たという事を…


そしてその事を知らないトウキさんは、にゃこさんの格好がツボらしいです。


頭痛の事など忘れてしまっているみたい。



トウキさんが楽しげに笑えば笑うほど、ぷんとしてしまうにゃこさん。



「何にゃさ」


小さなお帽子を落っことしながら、にゃこさんは歩き去ってしまいます。



「もう、てんまちゃんとこ行ったんにゃ」



「にゃこさん」



「お前にゃんか、知らないにゃ」



「にゃこさん」


「…何にゃよ」


トウキさんはにゃこさんが落とした帽子を拾って、頭にのっけてあげます。


「にゃ?」


帽子をのっけたにゃこさんの姿を、改めて眺める。



「ぷっ」


再び大爆笑のトウキさん。



どうやらにゃこさん自体がトウキさんにとっては、ツボらしいです。
 

「もう、お前にゃんかプンにゃっ!」

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でもセラピーキャットのことはトウキさんに知らせられたし、更にトウキさんを癒してあげることも出来たみたいなのでよかったです。