マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

薬学生だった頃 その1

まゆさん、今日は朝からお仕事。



山に生薬を採取しに行きます。


「あ~眠い。
何時間寝ても朝は眠い」



「きゃ~まゆちゃんだぁ~~!!」



「!!?」


「にゃ~~~!!」


ぼんやり歩いていたまゆさんを、目覚めさせるくらい元気な声で近付いて来る人が…

そしてその後を小さき者が同じように、競うようにこちらに近付いて来る…





てんまさんとにゃこさんでした。



「あー!またにゃこちゃん出たっ」



「なんにゃよっ!」

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朝から遊びに出ていたにゃこさんと、てんまさんがまたケンカごっこをしています。


「やめろっ。
朝からそのくだり…」



「へへへ。おはよう、まゆちゃん」



相変わらず笑顔だけは、知り合った当時から変わらないてんまさん。


昔は、すごい人見知りだったけど…



「ほんとにポ村に来て良かったなぁ。

あたしの喘息、ここにいると治った気になっちゃう」




嬉しそうにこちらを見つめるてんまさんは、ようやく懐いた可愛らしいねこのようです。





まゆさんが薬科大生だった頃ー。



「あ、あのねこ…」

(なんでねこって“こちらを振り向いて欲しい”と思う何かがあるんだろう)

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「もう、まゆはねこちゃんに近付かないの」



同じ生物サークルの友人が、忠告してきました。

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ねこちゃんとは大学に棲み着いている、警戒心の強いねこの事です。



「なんでだ?」


「ねこちゃんはね。
ガサツな人が苦手なの」



「……」



「あの子はさ。
アタシが、懐かせてみせるから」



まゆさんやてんまさんが入っていた生物サークルのメンバーは、生物が好きなだけあって、懐かないこのねこに興味津々。



誰もがいち早くそのねこさんと、仲良くなろうとしていました。




“生物が好き!だから生物の方からも好かれているはず。

そして好かれているって、皆にも思われたい”



そんな承認欲求を持つ人が、多いようです。



そのため大学に棲み着いている、懐かないねこさんの回りを、生物サークルのメンバーが入れ替わり立ち替わりあらわれる。

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しかしそのねこの心を…

しかも一瞬で開かせたのはてんまさんでした。



「小さな声でモソモソねこと喋っとる」

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てんまさんはねこさんだけでなく、虫とも植物とも気を許した感じで、遊んでいる…
そんな風に見えました。



「やば!蝶だ!粉かけてくんなっ」



まゆさんはねこさんではなく、チョウチョに懐かれてしまう。


「何してんの?まゆ」



「チョウチョに追われてるんだ!

知ってるか?
あの鱗粉が身体にかかると、溶けて死ぬんだぞ」



「なにそれ?
塩をかけられたナメクジ?

っていうか、まゆが走るから気流に乗って、くっついて来るんじゃない?」



「ぬ?」


ピタッと止まるまゆさん。



「所でまゆ、あの人って…」


あの人とは、てんまさんの事のようです。



「ん?」



「ねこには懐くんだね」



てんまさんが注目されたのは…

“懐かないねこさんの心を開いた”
という事だけで無く、てんまさんがねこに懐き、見たことのない顔で楽しそうにしていた所でした。



「まゆはあの人と話したことある?
どういう人?」



「話したことないよ。
同じ学年にいる“しょうま”ってのの姉だって話は聞いたけど。

ってかまず、お前がどういう人間かを分かってない」



「何でよ」




どういう人かは知らないけど、動植物が好きで人間と接するのは苦手なのは分かる。




そういうタイプは薬剤師に向かないと思うけど、何故か薬剤師には人が苦手なタイプが多い気がする。



薬剤師に向かないという点では、人のことは言えないけど…



ただあの“てんま”という人は愛想笑いが上手い。



人が苦手なのにその愛想笑いのせいで、逆に人を寄せ付けている。





そのてんまさんは、生物サークルの人々には懐かなかったねこさんをスケッチ。



警戒心が強いと思っていたねこさんは、てんまさんの前ではお腹を出して熟睡しているようです。



「めずらし…腹だして」


まゆさんは警戒心の強いねこさんの腹出し爆睡シーンを、気付かれないように写真におさめようとしました。


「こっそりこっそり…あ…」



(オナモミつけとる…)



ねこさんといえば、オナモミ。



(とってあげようかな?
起こしちゃうかな?
あ、“てんま”も居眠りしてる)





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「ぎゃっ!」


ちょっかい出されると思ったねこさんに気付かれ、引っ掻かれる。



ねこってホントこう…


続きます