前回のお話
まゆさん宅に入って、明るい光に体当たりをしたいコガネムシ。
見つかるとティッシュにくるまれて“コロン“と外に放り出されるけれど、殺されることはないから安心。
そんなこの家には“ねこ“というぽよっとした生物がいる。
あのねこ。
ねこがなんだか面白いから、つい見に来る。
地べたから空を見上げていた幼少時代を経た今、もう残り少ない生涯をより楽しむために生きる。
短い命を燃やし尽くすように生きる。
“ブルージャイアントみたい“そんな風にてんまちゃんに言われた。
よく分からないけれど、すっごく大きなもののことみたい。
あの木と同じくらいなのかな?
全力で生きて、天寿を全うするというブルージャイアント。
長く生きたくても、生きれなかった人の話…これもてんまちゃんから聞いた。
全力で生きて、最後は全力で死を望んだ人。
“死を望む“
それがどういうことなのか、よく分からなかったけれど。
赤ちゃんの頃から知り合いのてんまちゃん。
外の世界が見てみたくて、土の中から覗き込んでいたら「危ないよ」って、声をかけられたんだっけ?
大人になって、空を飛べるようになってから会いに行ったら
“立派になったね。かっこよくなったね“
って言われた。
嬉しかった。
もっともっと、長く生きれたらよかったのにな。
“死を望む“
考えてみたけれど、やっぱりちっとも分からない。
もっともっと長く生きれたら、あの“ねこ“と本格的に鬼ごっこするのにな。
他は何しよう。
どれだけ高く飛べるか、試してみようかな?
てんまちゃんのお話も、もっと聞きたかったな。
あの森の方にも、行ってみたかった。
川の近くの葉っぱに揺られて、くつろいでみたかった。
それから、色んな花の蜜も吸ってみたかった。
それで吸い比べをするんだ。
あとはね、それから…それから……
虫の声がやみ、夏が終わった。
涼しい風が、吹き抜けていく。
どうやらポ村にも、本格的な秋の気配が近づいて来たようです。