「今日もおしごとにゃ~!」
セラピーキャットの研修生として、頑張っているにゃこさん。
ですがなかなか研修期間を、終えることが出来ません。
「いっつもいい子して貰って、嬉しいにゃあ」
「そう?
わたしもにゃこちゃんに来て貰えて、嬉しいわ」
「ふふ…にゃふふぅ」
にゃこさんはきのこさんのひざの上で、幸せそうにシッポを立てています。
所が…
突然にゃこさんはイライラしたように、シッポをフリフリしています。
「うにゃにゃにゃにゃっ!」
珍しく唸っているようです。
「あいつ…あいつがいるにゃ」
「どうしたの?」
きのこさんの問いかけに答えないにゃこさんは、目線の先に動く何かを捉えていました。
「あら?どろちゃんだわ」
にゃこさんはすっくと立ち上がる。
「おばあにゃんっ!」
「なぁに?」
「にゃこ、ちょっと用事ができちゃったにゃ。
今から出掛けて来るにゃから」
「まぁ…そうなの。
忙しいのね。行ってらっしゃい」
「にゃっ!」
セラピーキャットのにゃこさんは、お仕事の途中でどこかへ向かって行きます。
「にゃたたたたたたたっ」
制服を着たまま、とてとてと走って行く。
「にゃたー!」
にゃこさんが体当たりをした、まるまるっとしているねこさん、通称どろちゃん。
「こにょっ!どろぼうねこっ」
にゃこさんは、どろちゃんに対し何やら怒っているようです。
「なんにゃよ、お前は。失礼にゃ」
どろちゃんは手におもちゃを握りしめて、地団駄を踏みながら、文句を言っています。
「それっ!そのおもちゃ、にゃこのっ!
まゆちゃんから貰った大切なやつにゃ」
にゃこさんは身体を大きくして、怒っていました。
そんなにゃこさんの様子には意にも介さず、どろちゃんはおもちゃをジッと眺めています。
その隙ににゃこさんは、再びどろちゃんに向かって突進。
すんでの所でどろちゃんは、藪の中に隠れてしまいました。
「にゃこのおもちゃ、かえせっ」
どろちゃんのシッポが、プイプイと藪の中から見え隠れ。
にゃこさんはそのシッポ目がけて、藪の中に突っ込んでいきます。
まんまるどろちゃんは、見た目通り鈍くさいです。
でもにゃこさんも負けじと鈍くさい。
どちらも同じようなスピードなので、距離が縮まらず、なかなか捕まりません。
「なんにゃよも~。
にゃこのおもちゃ~」
にゃこさん“イ~”ってなってます。
どろちゃんはそんなにゃこさんをよそに、再びおもちゃをジッと眺めています。
熱心にクンクンと、匂い嗅いで確認しています。
一方にゃこさんは、いつまでも返して貰えないでいるおもちゃを見つめている。
「にゃむぅ…
それにゃこのなのに…にゃこの…」
にゃこさんはおもちゃを盗られたことをまゆさんに、秘密にしていました。
まゆさんをガッカリさせちゃうかもしれない、そう思ったのです。
「にゃから盗られたことを、知られる前に早くどろぼうねこから取り返して…
そしてあのおもちゃでまゆちゃんと…」
おもちゃを返して貰えたにゃこさん。
にゃこさんはどろちゃんを、いつもどろぼうねこ扱いしていました。
他の人にもどろちゃんが悪さをしていないか、いつも心配。
どろちゃんは泥棒をしている…
というよりは、ただ見馴れないものを確認せずにはいられないタイプなだけでした。
「おかえり」
「まゆちゃん、ただいまにゃー」
にゃこさん、おもちゃが手元に返ってきてごきげん。
「お仕事どうだった?」
「にゃ?おしごと?」
にゃこさん、手にはおもちゃを握りしめています。
「…遊んでたの?」
「お洗濯しなきゃね」
「にゃむ…」
おもちゃの事に気をとられ、お仕事の事をすっかり忘れてしまっていた、セラピーキャットのにゃこさん。
我に返ったにゃこさんは、少ししょんぼり…
「お洗濯したらさ…
おもちゃで一緒に遊ぼっか?」
「まゆちゃんっ!」
落ちこんでいたことも忘れ、にゃこさんはすぐに嬉しくなってしまいます。
こんな風なので、本物のセラピーキャットへの道はまだまだ遠いい、にゃこさんなのでした。
「あしたもおしごと、がんばるにゃー!」