パゴロウさんの特殊能力発動。
“ハッ”
マメクスリカフェにお電話です。
いつものように、事前に電話が鳴る事に気付き、慌てず受話器を取ります。
“ガチャ”
こちらが声を発する前に、食い込み気味で喋り出す叔父さん。
“何だ。
パゴロウかぁ。
しっかり仕事してるのかい?
悪いけど暇じゃないんで、マメチュー先生に早く代わっておくれよ。
薬の事で相談があるから」
「はい…
お待ちください」
ふぅー
仕事中に身内と話すと、集中力が途切れてしまいます。
(早くこの環境にも、なれないといけないなぁ)
その様子を見つめていたキノコさん。
感心したように、パゴロウさんに声をかけます。
「ホントに電話が1回なっただけで、受話器を取れるのね。
すごわねぇ~」
「え?あ、いやぁ」
ウフフ
パゴロウさんは、思わず口元を抑えて喜びます。
どうやらマメクスリカフェの患者さんの間で、パゴロウさんの特殊能力が噂になっているようです。
「私からの電話かどうかも、出る前に分かるのかしら?」
「そこまでは…
近しい人なら、事前に分かる時もありますが」
「そうなのね。
いつか私がこちらにお電話した時に、分かってくれたら嬉しく思うわ」
「はい。
私も分かるようになりたいです」
午後もお仕事を張り切るパゴロウさん。
先ほど褒められたので、より頑張っちゃっています。
現在はお薬のピッキング中です。
再び電話がなる気配を感じます。
もはやお馴染みとなりつつある
“パゴロウさん・スマートに受話器を取る”
くまじろ叔父さんです。
「まぁいいや。
マメチュー先生早く呼んでっ。
早く、早くっ」
「はい…」
叔父のくまじろは、医師としてはそこそこ優秀らしいのですが、思ったことをすぐ口にしてしまう所が、玉に瑕です。
マメチュー先生のお電話終了。
そろそろ閉店時間がきました。
「パゴロウさん。
今日もお疲れ様でした」
「お疲れ様です。
マメチュー先生」
ようやく本日のお仕事が終わったその時、今度はパゴロウさんの携帯の方に電話が鳴る予感。
「はい」
くまじろ叔父さんでした。
今回はさすがに、事前に“叔父さん”からだと察知出来ちゃいました。
「気持ち悪っ…
パゴロウお前、ホントに間髪を入れずに電話に出るなぁ。
暇なのか?
ずっと携帯触ってんだろう」
“仕事はもう終わったのか?
どうだ?
仕事は楽しいか?
まだ楽しむ余裕は無いかぁ”
「…」
叔父さんの方こそ、ホントは暇なの?
パゴロウさんは帰宅後、お水を飲んで気持ちをリセット。
「はぁ~」
少し落ち着いたその時、頭をよぎった事がありました。
もしかしたら叔父さんがボクに、ホントに言いたかった事って…
“一回目で電話に出るのって、実は相手にとって迷惑?”
もし相手が電話をかけることに対し、緊張していた場合…
電話が鳴っている間に、心の準備をしたいのかもしれません。
それなのに一回目ですぐ、受話器を取られてしまう。
よかれと思った事が、迷惑になっている可能性があるかも知れない…
「そっか…そうだよね…」
叔父さんのお陰でちょっと、勉強になった一日でした。