「まゆ元気?仕事どう?
なんか面白い話ない?」
「ん?なんだ、ペリコ。
まだ生きてんじゃんよ」
「もぅ、なによう。
その言い方。
あんたって、相変わらず口悪いわねぇ」
まゆさんの家に、月1ペースで遊びに来る独身の母方の伯母・ペリコ。
ペリコは自慢話や愚痴・文句が多いタイプなので、まゆさんに鬱陶しがられ、冷たくあしらわれているのですが、それでもチョコチョコ姪の顔を見に来ます。
そして遊びに来るたび…
ここ10年位ですが、同じ話を繰り返しまゆさんに聞かせ続けています。
「あのね、あたしまた心臓がね…」
毎月毎月、心臓の調子が悪いと言い続けるペリコ。
「夜になるとね、心臓がね、ドキドキしちゃって。
あたしホントどうなるのかしらと思って」
「だからさ、10年以上それ言ってるけど、全然悪化しないじゃん。
“心臓が、心臓が”
って言いながらどうせ人より長く生きるんだろ?」
「何よ!もうちょっと心配して、親身に話聞いてくれても良いんじゃない?」
とはいえ10年程、心臓の様子を聞かされ続けていますが、“夜のドキドキ”以外に実際症状は無さそうで、悪化もしていない様子。
食欲も年齢的の割には、あるようです。
お医者さまにも“異常はなにもない”と言われているのに…
まゆさんに心臓の話をし続けても素っ気なくされるのに…
「だってツラいんだもの。
あたしはただ、健康で元気に暮らしたいだけなのよ」
「相変わらず声は、でけぇしよく喋る」
普段
“長生きしなくって良いわ”
などと言っているペリコですが、長生きしたいオーラが出てしまっています。
「それでねサワ先生ときたらね、こないだもまた話聞かずに“異常無し”って言うのよ」
「病気じゃねえって言ってんのに、何度も同じ話しにいくからだよ」
「それで最後にサワ先生ったらなんて言ったと思う?
“他の病院行ってもいいけど、異常無いって言われるだけだよ”
ですって。
何も調べてくれないクセに何が分かるって言うのよ。
ホント失礼しちゃうわ」
ペリコは心配症・不安症な所があるようです。
心臓の違和感も、もしかしたらストレス等が原因なのかもしれません。
そもそもサワ先生とやらに言われる前からペリコは、色々な病院を巡り既に “心臓に異常無し” と言われているのです。
おそらくこれからもペリコを大げさに心配し、優しく話を聞いてくれるお医者さまが現れるまで、ドクターショッピングを続けるのでしょう…
もしペリコが望むような、親身に話を聞いてくれるお医者さまに出会えたとしたら…
そのお医者さまの事を信じ、自分が満足するまで通院するのでしょう。
そしてその人が話を聞くだけのやぶ医者でも、きっとその医者の言うことを全て聞いてしまうでしょう。
たとえ適当な治療方法をすすめられ、高額な治療費を請求されたとしても…
「はぁ…
危うい奴だよ…」
次回へ続く