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前回のお話
最近心臓に違和感を感じているナメ江さんは、カエルの長”ガマさま”にガマの油を出してもらうことにしました。ガマの油”センソ”には、心臓の疾患にも効果があるのだそうです。
恐怖の「冷や汗リフト」と、ガマ様の献身
四六のガマは、美しいと思っていた自分の姿があまりにも醜悪なことに驚き、脂汗を流したと言われていますが、ガマ様は…
「ガマ様、脂汗を出すにはどうすれば…?」
「スリル動画を見せてもらっていいですか?」
「動画?」
フロ次さんがスマホを操作すると、画面には逃げる人と追う人が映し出されました。
「ヤダ、怖いワ!」
「?でも…なんか変?」
逃げる人も追う人も、なぜかずっとリフトに乗っている。この状態では、永遠に距離が縮まらない。

「何これ、ずっと逃げられないし、ずっと捕まらない…」
”うう、ああぁっ”
焦りながらも逃げきれない、映像の中の人物の苦しみや嫌な感情が、ガマ様に伝わっていくのが分かります。
その“終わらない焦り”に、ガマ様の額から脂汗がポタリ。
「出た!冷や汗じゃなくて、これは本物の脂汗!」

「わぁ、すごいガマさま!」
クロ太さんは、面白そうに観察しています。
「ナメ江さん!良く効きそうなやつがとれましたヨ」
フロ次さんが、大切そうにセンソの液を受け取ります。
「有難うゴザイマシタ。でも脂汗…ちょっとだけ塩も入っていそうデスネ」
塩の有無が気になりつつも、ナメ江さんはさっそく口にしてみました。

「よかったネ。ナメ江さん」
「ガマさま、本当に有難うゴザイマシタ!」
心臓の違和感が、嘘のように消えていきました。
「ふふ、イエイエ」
ガマ様は優しく微笑みます。
「妖怪の大蝦蟇さまといい、ガマ様といい、ガマガエルってすごいんだなぁ。憧れちゃうな」
ガマ様は、そんなはしゃぐクロ太さんの頭をナデナデ。そして弟のタマちゃんのこともナデナデ。
「元気そうで良かった。今日は来て良かったヨ。ポ村はいい村ダネ」
「ガマ様…」
クロ太さんは池の中で暮らしていたころ、空を見上げては大空を駆け回るパイロットになりたいと思っていました。
でも今は。
「お医者さまや、薬剤師さんになるのもいいかもしれない」
ガマ様の献身的な姿、そしてナメ江さんの不調が改善した瞬間の喜びを見て、クロ太さんは新たな憧れを抱きました。様々なものに憧れるお年頃のクロ太さん。たくさんのものを見て経験するのはなんにせよ、とってもいいことです。
彼にはぜひ、素敵な大人になって欲しいものです。いつかクロ太さんが、誰かの心臓を救うような、そんな立派な大人になる日が来るのかもしれませんね。