「あら、あなた初めましてね」
お仕事中のパゴロウさんに話しかけてきたのは本日の患者、メイ子さんの義母メンメさんでした。
「マメチュー先生お久しぶりです」
メンメさんとメイ子さんは、数ヶ月ぶりの来局。
そのためお二人が前回来局した時は、まだパゴロウさんはマメクスリカフェでは、働いていなかったのです。
患者であるメイ子さんは、義母であるメンメさんの様子をチラチラと伺っています。
いつもメイ子さんが来局する時は、メンメさんが付き添っているそうです。
パゴロウさんは薬歴を入力中。
その時感じた気配。
見上げるとメンメさんが、ニコニコとこちらを見ていました。
「今日の朝は何を食べたの?」
メンメさんからの突然の質問。
「えっと…ジャムトーストです」
メンメさんはすでに他の患者さんに、話しかけています。
「うちの孫ね、この間おねしょしちゃってね」
「そうなんですか…」
「そうなのよ。
それでね、うちのメイ子さんはね、おせんべいが好きじゃないのよ」
「そうなんですか…」
「おいしいのにね~」
メイ子さんは、少し俯いて座っています。
他の患者さんとのお喋りに満足したのか、メンメさんは再びパゴロウさんの元にやって来ました。
「ええと、パゴロウさん?
あなた何月生まれ?」
「6月です」
「6月?あなたの今日の占いの結果はね」
メンメさんは好奇心旺盛で、かつお喋り好きのようです。
「ねぇ、どうして薬剤師になろうと思ったの?」
「どうして…ですか?そうですね。
薬の専門家として患者さんの治療のサポートをしたい、そう思いまして」
「ふうん、そうなの」
“薬剤師になった理由”
色々あるけれど、簡潔に伝える。
仕事中なので長々とは話せませんが、さすがに無視はしたくありませんし、出来ません。
パゴロウさんはふと…
まゆさんが言っていたことを思い出します。
“好奇心旺盛で、色々聞きたがる人っているでしょ?
他人の病名を聞きたがる人。
人に言いたくない、デリカシーのない質問をしてくる人。
そういう人には、そんなに真面目に返事しなくても大丈夫だと思うよ。
君は真面目だから言いたくないことも、しっかりと受け答えしているけど。
大抵さ、そういう人はホントの答えになんか興味ないから。
もちろん人によるけどね。
でももっともらしい事を言っておけば、それで満足する人も多い。
ある程度、適当にあしらうすべを持っておくと、生きるの楽だよ”
(聞きたがる人、いる)
マメチュー先生は、メイ子さんに服薬指導中。
メイ子さんの病名を言わないように、説明しているようでした。
メンメさんを見ると、マメチュー先生とメイ子さんの話しに聞き耳を立てている。
メイ子さんの薬歴を確認してみました。
すると…
“病名は言わない”
そのような記載がありました。
おそらくメンメさんに、知られたくないのでしょう。
確かにあのメンメさんに病名を知られてしまったら、村中に知れ渡ってしまいそうです。
ただ“病名を知られたくない”という患者さんは多いです。
服薬指導等を行う薬剤師としても、他人に聞こえるような声で行わないよう“デリカシー”が必要です。