憎くて憎くて仕方がない人がいる。
目の前から消えていなくなって欲しい。
そういう時って、一体どうしたらいいんだろう。
マメチュー先生の薬局の、鉢の中で暮らす木じじい。
木のじじいであるため、鉢の中から出て移動するのは一苦労。
そのため、ほとんどの時間を同じ場所でジッとして過ごしています。
まゆさんには、ハンガーラック扱いをされることもありますが、それでも静かに佇み患者さんを見守っています。
自ら動くことが少ない木じじいですが、たまに日向ぼっこをしていたりすると、木じじいの元に虫や動物たちが癒されに来ます。
そして、ごくたまに観光客も木じじいに会いに来ます。
「USAさん、木じじいさんって人気なのですね」
休憩中に薬剤師のパゴロウさんと、調剤事務のUSAさんがお話をしています。
「なんだか一部の人たちの間で”木じじいを待ち受けにすると運気が上がるー”なんて噂されてるんだって」
「そうなんですか。初めて知りました。すぐ近くで働いているのに」
「運気がどうの以前に、植物ってみんな好きだよね。癒されるしね。桜とかほとんどの人、好きだもんね」
「そういえば以前、彼岸花を見に行ったんですけど、最寄り駅のホームから落ちるんじゃないかと思うくらい混雑してましたよ」
「あたしも藤の花を見に行った時、すごい人でさ。藤の花は美しくて癒されたけど、さすがに疲れも感じちゃった」
「分かります」
「あのさ、ポ村の占い師・ソヨウ君って知ってる?当たるって有名らしいけど」
「えっと、名前だけは」
「その占い師がさ、ポ村の外の人から相談を受けたんだって」
「わざわざ村の外から?」
「占い師には守秘義務があるから、詳しくは知らないんだけど。憎くて恨んでる人がいる、って人からの相談だったかな」
「恨み」
「恋や仕事の相談も多いらしいけど、けっこう縁切りの相談も多いみたい」
「恨んでいる人と、自分の好きな人の縁切り?」
「そんでね。その人に丑の刻参りを勧めたんだって」
有名な呪いの儀式。
神社の御神木に、藁人形を釘で打ち込み、憎い相手に呪術をかけるというもの。
「ってことは、その悩んでいる人は女性?」
「ああ、そうかもね。丑の刻参りって男の人、やらないっぽいよね。おしろい塗って、紅をさしたりするもんね?」
「男の人は呪いをかけるより、力で実行する人の方が多そうですからね。でもなぜ、丑の刻参りなんかを」
続きます