マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

フィトンチッド その2

前回のお話

仕事の休憩中、パゴロウさんとUSAさんは、ポ村の占い師・ソヨウさんの話をしていました。
「憎い人がいて悩んでいる人に、丑の刻参りをすすめたんだって」
「なぜ丑の刻参りを?」


「ソヨウ君が勧めた丑の刻参りは、ポ村の御神木限定」
「ポ村の御神木?」

「もしかしてフィトンチッドの話ですか?」

「あっ。マメチュー先生、知ってます?」


樹木が発散する化学物質”フィトンチッド”
癒しの効果があるそうです。


フィトンチッドは植物が傷ついた時に自ら発生させるのですが、この化学物質が人間にも健康効果があるといわれているのです。


「詳しくは知りませんでしたけど、多分それ」
「釘を打ち付けられたポ村の御神木からは、特別に大量のフィトンチッドが出るそうですよ」


釘によって傷つけられた部分から、フィトンチッドが発生。
その癒し効果により、人を不幸にしようとは思わなくなると、ポ村では言われています。


「村の御神木に、釘なんか打ち付けても良いのですか?」
「もちろん、村長にも許可を取ってるらしいわよ。御神木も大切だけど、人の命も大切だから」

「釘を打ち付けられた後は、きちんと御神木にソヨウさんが傷口を保護する薬を塗ってくれているみたいです」

「呪術なんて自分に跳ね返ってくるっていうし、やらない方がいいのよ」
「でも…一瞬癒されても、根本的な解決にはならなくないですか?」


例えば、呪いたい相手が配偶者などの場合だと、簡単には離れられません。


憎しみは続きます。

「確かにね。でも自分が呪いをかけたことによって、自分自身がより不幸になる、なんてことは防げるじゃない?フィトンチッドによって、心をいったん整理出来たのなら、違う発想が出てくることも、あるかもしれない」
「そうか、そうですね」

「多分、ソヨウくんがその後も相談にはのってると思うし。人に話すって大事な事じゃない?占い師もさ、人の心にいやしを与える存在だと思うのよ。心の薬になるのよ」
「そういう人って身近に相談できず、一人で思い悩みがちだと言いますものね」


そんな彼らを静かに見守っている木じじい。

「あ、木じじい。そろそろお水飲む?」
「ふ」

癒しを与えると言われる植物ですが、実際出来ることと言えば、こうして静かに見守るくらいです。
そうやって長い間、ポ村を見守ってきていた木じじい。


木じじい以外の植物たちも同様。
楽しい時も辛い時も、ずっと静かに…


樹木たちは、賑やかなお祭りのちょうちんをくくられることもあれば、死を求めに来た人により紐をくくられてることもある。


それでも…この先もずっと、ただただ、静かに見守っていく。

何かしてあげる力などない
木じじいはそう思っています。

木じじいたちの力で変わるのではなく、結局自分たちが自分の力で変わっていくのです。


その様子を彼らより長生きの木じじいは、ただ見ている。
それだけの存在。

そんな木じじいに、マメチュー先生は声をかけます。

「ただいるだけでありがたい。そう思う人もいますよ」
「ふ」

そこへ休憩室にいたまゆさんがやってきました。

「なに?フィトンチッド?木じじいを傷つけたら大量に発生する?」


木じじいに向かって、フォークを振り上げているまゆさん。

「ふ!?」

木じじい、唯一の天敵であるまゆさん。

木じじいも臨戦体勢です。

バッシャン

「もー、水こぼしてー。ホースで水をくれてやろう」
「まゆさんたら」


そんな二人を嗜めるマメチュー先生。


どうやら木じじいは、思ったよりは静かにしていなさそうです。