マメチュー先生の調剤薬局

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ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

ナメ江さんの気がかり その2

前回のお話

釜茹でしらすの話を聞いたことがきっかけで、脳内会議を始めてしまったナメ江さん。

“数の子の卵、一粒一粒には意識があるように感じる“


そんな話を聞いたナメ江さんは、しらすにそのイメージを重ねてしまうようになりました。


“しらすガ、コチラヲ、見テイル“


しらすに対し、薄気味悪さのようなものを感じてしまったようです。




“急二食ベナイ何テ言ッタラ、悪ク思ワレルカシラ?親切デ、言ッテクレテイルノニ“



一人会議に没頭しているナメ江さんを、フロ次さんとスネ文さんは静かに見つめていました。



優しいフロ次さんは、ナメ江さんが何に思い悩んでいるのか一生懸命考えています。



一方笑い上戸気味のスネ文さんは、ナメ江さんとフロ次さんの様子を見るとなんだかおかしくなるようです。
この雰囲気が少しツボみたい。



「ウププ、ナメ江サン、膨ランデキテイル」




実はナメ江さんは、この脳内トークを放置しておくと頭がパンパンになって、しまいには身体が膨らんできてしまうのです。


ナメ江さんには本当に申し訳ないのですが、膨らんでいる姿を見ると、つい笑いそうになってしまう。


笑い上戸のスネ文さんは、笑うのを我慢するため懸命に口を“パッパッ“とさせています。



女性がリップを塗る時のように、下唇をキュッと上唇で噛み締め“パッ“として笑わないようにしているようです。




「ナメ江サン、ドウシタノ?ホラしらすダヨ。
なめこガ無クテ、ガッカリシタ?」



フロ次さんは、優しくナメ江さんに声をかけています。


しかしすでに唇が青ざめているナメ江さんは、フロ次さんの言葉が聞こえていないのか、ぷくぷくと身体を膨らませ続けていました。



「ナメ江サン?」

心配するフロ次さん。



「パッ」


そして笑いを必死で我慢するスネ文さん。




“しらすノ話ヲシテカラ、コウナッタンダロウカ?

しらすハ、嫌イジャ無カッタ筈ダケド“



「パッパッ」



“私、ヤッパリしらす…駄目カモ…“


ぷくうっ。


ナメ江さんは少しずつ、膨らみ続けています。



「パッ、パパッ」



「大丈夫カイ?ナメ江サン」

“ナメ江サンガ、コノママデハ、爆発シテシマウッ“



「パパッ、パパパパパパッ!」


ぷっくうぅぅ…



「フロ次サン、コノママ“ビックバン“ミタイニ爆発シテ、宇宙ガ出来テ、シマウカモネ。
新シイ生命ガ、生マレルカモネ」

スネ文さんは、急に不思議な事を言いだしました。




ビッグバン。




ぷくぷく、どんどん、ナメ江さんは膨らんでいきます。



「大変、本当二、大爆発スルカモ」




「パパッ」


スネ文さんにとっては、風船ドッキリみたいなドキドキ感があるようです。




「宇宙、生命…生命?」



フロ次さんは何かを思いついたように、ハッとしていました。




ガラガラガラ。



その時、扉が開く音がし、元気な声が店内にこだましました。




「にゃーこ、来ーたにゃー」



「にゃこチャン!」



三すくみのお店にやってきた、にゃこさんは一生懸命ぽのこを握りしめていました。


「これ!」


「アラ、何?にゃこチャン」



さっきまで膨らみ続けていたナメ江さんが、にゃこさんの声に反応をしました。



「まゆちゃんに、持っていくように頼まれたんにゃ」



「マァ、ぽのこネ。有リ難ウ」


ナメ江さんの身体が、スーッとしぼんでいきました。



原因を知ることの出来なかったフロ次さんたちですが、解決はにゃこさんがしてくれました。




早速、ぽのこのおろしポン酢和えを作って食べることに…


「ヤッパリ、美味シイワネェ」




そんなナメ江さんを見ながらスネ文さんは、フロ次さんに声をかけます。



「今日ノ膨ランデイタ原因ハ、結局何ダッタンダロウネ?」


「ソウダネ。何ダッタンダロウ」



フロ次さんが推察するに、おそらく原因は“しらす“


ただ、理由までは分かりません。




そしてその理由を、伝えられていないナメ江さん。



彼女は、本音がうまく言えないのです。




それでも何となく気づいた、フロ次さんはしらすを食卓から遠ざけるようにしました。




「サァテ、開店準備、始メヨウカネ」


「ソウネ。美味シイ御飯モ食ベタシ。
頑張ラナクッチャ!」


これからも、こんな感じで仲良くやっていく三人でした。