マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

ナメ江さんの気がかり その1

グツグツグツ…


小料理屋三すくみの開店前。


ナメ江さんが好きなイカと里芋の煮っころがしを、お夕食用に作っていました。



「オ芋ガ、ホクホクデ、味ガ染ミテテ、美味シイワヨネ」



「ソウダネ」



ナメ江さん、フロ次さん、スネ文さんがお料理を作りながら、おしゃべりをしています。


「アタシ、オ芋ノ中デ、里芋ガ一番好キカモ、シレナイワ。

後ハおかずニ、なめこノ大根おろし和え。ホカホカご飯二、ピッタリヨネ」



「イイネェ」


「ぽのこ(ポ村のきのこ)ノ、おろしポン酢和えモ、イイワヨネ」



「残念。
今日、なめこモ、ぽのこモ、切ラシテルンダ」



「アラア」



「釜茹でしらすナラ、アルヨ」



「良イネ。しらすノおろし和えモ、お酒ノつまみ二、ピッタリ」



「…」



「オヤ?ナメ江サン?」



釜茹でしらすと聞いた瞬間、ナメ江さんは固まってしまいました。




その時のナメ江さんの、頭の中…




“絶賛ナメナメ会議実施中“



固まりながらも、何やら頭の中では、ぐるぐる考え事をしているようです。




“しらす、食ベラレルカシラ?味ハ、美味シイノヨネ。デモ最近、気ニナッチャッテ“



つぶつぶが怖いという“集合体恐怖症“の人の話を聞いたナメ江さん。



その人は数の子が苦手だと、言っていたそうです。




“卵の一つ一つが意識を持って、こちらを見ている気がする“

そんな話を聞いて“確かにそうかも“と、ナメ江さんも思ったようです。



それでその日以来、しらすを薄気味悪く感じるようになってしまいました。


一方フロ次さんとスネ文さんは、無表情で固まっているナメ江さんを見て、顔を見合わせています。





ナメ江さんは心配性で不安症。



何か一つ気にかかることがあると、昔からこうして固まってしまうのです。



無表情ではあるけれど、おそらく頭の中では一人会議が行われているのでしょう。



“苺・蓮の実・蛙の卵・蜂の巣…集合体恐怖症ノ人ハ、コウイウノガ、怖イッテ話ヨネ。

数の子ノ卵、一粒一粒ガ、全テ生命体。本当ヨネ。イズレ魚二、ナルノヨ。しらすミタイニ“



沢山のしらすが、こちらを見ている。


“数の子ヲ食ベルノハ、怖クハナッテ、イナイノダケレド…

しらすハ…ダッテ…本当二、コチラヲ見テイルノダモノ。


アア、ドウシマショウ。

私、しらす無理カモ。ダケド今更、しらすヲ食ベラレナイナンテ、言イヅライワ“



お互いを見るため三すくみの人々は、チラチラと目だけを動かしていました。


続きます。