マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

きのこ狩り その3

秋のきのこ狩りに来ているまゆさんと、てんまさん。


お夕飯にきのこ料理を食べる気でいるのに、なかなかきのこが生えているポイントが見つかりません。


そんな時二人の前に、不思議な生物が現れました。


スッと一度いなくなったのに、再び現れた不思議生物は、きのこを握りしめてこちらを見ています。


「何なの、あれ?」


「あの子、さっきからずっといるみたい」


「なにそれ、お前のストーカー?」


「あたしたちの持っているきのこを見てたよ」


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「きのこ?きのこのストーカー?

よし、名を授けてやろう。
妖怪きのこ食い」


妖怪というのは、見たままの名前を名付けられる事が多いのです。


「にゃこっ!にゃこあいつ、知ってるにゃ!」



「そうなの?にゃこちゃん」


「ほう、あの生物は元々ポ村にいたのか…」


「きのこが好きなら美味しいきのこが生えているところを、知っているかもしれないね」


てんまさんは妖怪きのこ食いが何者かというよりは、きのこを要領よく探すため“利用してやろう”という発想が先に浮かんだようです。


「じゃあ、あいつのいないところを探そうぜ」


「きのこ、自分たちで探す?」


「あいつのきのことったら悪いじゃん。

どうせきのこを食うくらいしか、楽しみなんてないだろうから」


「うん」


「じゃあ、次は東側の湿っ気があるところ行くぞ!」



「ついでに小川の近くによってクレソンもとろうよ!

ポ村の秋クレソン。

そんでお鍋に入れよ」


「きのことれなかった時の保険か?」


2人は不思議生物をそのままにし、その場を離れる事にしました。



ポ村に住む人々は少しくらい不思議な事があっても、動じない人が多いみたいです。


“いや、でもちょっとは気になるけど…”



「わー見て、まゆちゃん!

秋クレソンいっぱいあるよー」


「しめじもあるじゃん。しめじ」

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「しめじが入ってたら、一気にきのこ鍋っぽくなるね」


「危うくクレソン鍋になるところだったからな」



「この辺りを探せばもっと、いっぱいきのこあるかも!」



「にゃこも探すっ」


「にゃこちゃん、任せたっ」


三人で仲良くきのこ探し。

てんまさんも必死になって探しています。




「ぬ~~…
あるっ、あった!あそこっ」



「さすがてんまっ!

食いもん探しだけは得意だな」


「うんっ」


てんまさんがきのこの元に駆け寄ろうとしたとたん、再び先ほどの不思議生物が現れきのこをかすめ取られてしまいました。



「ねぇまゆちゃん、またあの子でたよ~」


「きのこのストーカーめ!

付いて来ていやがったか」



「すごーいっ

つけられてるの気付かなかったね」



そしてかごの中に置いておいたきのこまで、素早く不思議生物に盗られてしまう。



「ああ…しめじ…」


「やりやがったな」

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不思議生物を追い払うためにポコッとした苔を脅しで当たらないよう投げつけると、不思議生物もそれを拾ってこちらに当たらないように投げ返してくる。



「キャッチボールか…

もう、とっ捕まえて売りさばいてやろうか」


「やったんにゃー」


てんまさんはまゆさんとにゃこさんのことを、ツンツンする。


「何にゃさ」


「今日はやめとこ。

売れないと思うし…

きのこ狩りに来たんだもん、今日は。」 



「きのこ…?

どんな環境でもいつも通りだな、てんまは。

それとも食い意地が張ってるだけか?」


不思議生物はせっせと1人で、手当たり次第きのこをむしり取っています。



「それ…毒ぽのこだよ~?」


不思議生物は毒ぽのこまでむしっています。



「あいつは毒食っても平気なのかな?」



「お腹すっごく減ってるのかも…」


「仕方がねぇなぁ」


不思議生物のために、今までとっていたきのこを全部おいていく事にしました。


「お食べ」


「ったく…とっとと帰んぞ、てんま」


すると不思議生物もおなじように、自分が持っていたきのこを置いていく。

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「は?」


そしてそのまま姿を消してしまう…



「干してから食う気なの?

グルメなの?」


「よく分かんない子だね、あの子」


てんまさん、楽しそう。

不思議生物に、興味を持ったようです。


「いつも、どこにいるのかな?
どんな風に暮らしているのかな?」


「にゃしゃー」



にゃこさんはひっそりとこちらを見ている不思議生物に、威嚇をしていました。



「もういいっ、ご飯!

帰って早くご飯」



「でも…きのこ無くなっちゃったね」



「いいよ、クレソン鍋で」



「あのね、クレソンもとられちゃってるの」



「マジかよ、あいつっ」



「お肉食べよ。肉肉っ」


「にゃしにゃしっ」


「三すくみのところ行って、薬味貰おうか?」



「どうせなら作って貰おう!肉鍋」



「そうだね。

具材もたっぷり入れてくれるよね」


「ナメ江、気が利くからな」





「今日会ったさ、あの子さ…」


「にゃ…」



「何だったんだろうね」 

「ああ…」


「また、会えるかな?」


「…」



「村長に報告した方がいいと思う?」



「もう知ってるかも。

にゃこが知ってたくらいだし。

村長の前にさ、マメチュー先生に聞いてみようよ」


まゆさんは、村長が苦手です。


「マメ先生?」


「あたしたちより、ポ村に長く暮らしてるから何か知ってるかもしれない」


「そうか、そうだね」


「とりあえず何者か分かるまでは、そっとしておこう」


「うん。

知らない生物にむやみに近付くと、お互い病原菌をうつしちゃうかもしれないからね」


「まぁ、知ってる生物でも人獣共通感染症(ズーノーシス:動物と人の間でうつる病気のこと)はあるからね」



不思議生物のことは正体が分かるまではそっとしておく…

ということに決まりましたが、不思議生物は一体何しに現れたのでしょう。



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「ナメ江ー!」


「アラ、まゆサントてんまサン。

にゃこサンモ」


「ナメ江!肉!きのこ!クレソンっ!!」


「ハイ?」


「ナメちゃん、お鍋食べたいですー」


「アラマア、ハイハイ!」


「あれ?ナメちゃん、このペーストなに?」


「ソレハレモンバームノ、ペーストデス」


【レモンバームペースト】
レモンバームとにんにく、ナッツ、オリーブオイルをミキサーに入れてペースト状にしたもの。


たくさんレモンバームをマメチュー先生から頂いたので、バジルの代わりにジェノベーゼ風のスパゲッティをまかないで作ろうと思ったようです。


「キノコヲ入レタ、パスタデス」



「きのこっ!!」


「え~それもちょっと食べたいなぁ」


「食べた~い」


「ハイハイ」


モリモリ食事中のお二人。




この日以降、二人は不思議生物を見かけることはありませんでした。


なのに時がたつにつれ、どんどん気になってしまう…


困った片思いです。