前回のお話
処方箋の有効期限が切れそうなため、慌てて出先で見つけた初めての薬局に立ち寄ったナメ江さん。
そこはイチイさんの調剤薬局でした。
ナメ江さんから血圧上昇の相談を受け、イチイさんはお薬手帳を確認します。
すると甘草を多く含む、2種類の漢方を服用していました。
「血圧の上昇やむくみの原因が、漢方薬の副作用かもしれないので、先生にお伝えてもよろしいですか?」
「副作用?漢方薬二?」
先生に伝える?漢方薬に副作用なんてあるのかしら?
「あ、こちらの医療機関はポ村のくまじろ先生ですね?」
「御存知ナノ?」
「ええ、ポ村で村長に紹介されたことがあります」
「マァ、ポ村ニ、イラシタ事ガ、アルノ?村長トモ、オ知リ合イ、ナノネ?」
「ええ」
ナメ江さんはその話を聞いて、なんとなく親近感が湧いて来たようです。
「アノ…薬剤師サン、先生ニ、連絡、オ願イシマス」
「はい」
ナメ江さんに許可を得たイチイさんは、くまじろ先生に連絡を入れました。
“くまじろ先生。お久しぶりです“
“イチイさんじゃないか、どうかしたかい?“
“ポ村のナメ江さんのことなんですが“
“ああ、ナメ江さんね“
“甘草が多く含まれている漢方薬を別の医療機関でも処方されていて、むくみがみられるため低カリウム血症の可能性があります。あと、血圧も上昇しているとのことです“
“なるほど、そうだったか。ではうちで処方した小青龍湯は中止してもらおう“
「…と、先生はおっしゃっていました。むくみがひどくなったり、血圧がさらに上がるようなら、また連絡を下さいとのことです」
「漢方薬ニモ、副作用ガ、アルノカシラ?」
「はい漢方薬にも副作用はあります」
「知ラナカッタワ。ソウナノネ」
「なので今回は漢方薬の代わりに、食材で症状を緩和していきましょう」
「食ベ物デ?何ガ良イノカシラ?」
「そうですね」
生姜:血行を促進する
蜂蜜:殺菌作用があるので、喉の痛みを緩和する
大根:抗炎症作用がある
「ソレナラ蜂蜜ト、生姜デ煮タ、大根ノ煮物ヲ、作ロウカシラ?」
「それは良いですね」
「私、オ料理、得意ナノヨ」
「小料理屋をやっているとか。今度伺わせていただきますね」
「エエ、イラシテ」
「それと体内の水分がなくなると喉の乾燥につながるので、水をできるだけゆっくりとこまめに補給してください」
漢方薬は少しずつ効くため、長く飲まないと効かないと思っている人が多いようです。
でも実は、すぐに効果を発揮する漢方薬も中にはあるのです。
漢方薬の中でも有名な、葛根湯などがそうです。
“甘草“も寝る前などに飲めば、すぐに効果があらわれます。
筋肉痛・肩こりにも効果がある。
以前USAさんが悩まされていた「こむら返り」にも効きます。
しかし副作用の方も、出てしまう場合がある。
ナメ江さんは再受診の結果、カリウムの値が悪かったため、漢方薬はしばらく中止することになりました。
やはり低カリウム血漿の、副作用が出てしまったようです。
低カリウム血漿の初期症状:手足の痺れ、筋肉痛、脱力感、不整脈
ただ早めに漢方薬を中止したため、大事には至らなかったとのこと。
「良カッタワ。
漢方薬ノ副作用ヲ、知ラナイママ、飲ミ続ケナイデ。
今度、薬局二行キソビレテ、急二、オ薬ヲ貰ウ必要ガアル時ハ、マタココニ来マショウ」
「プレアボイドか…」
「なんかつぶやいたか?」
もそもそと言っているオウギさんに、イチイさんは声をかけます。
「いいえ、別に」
プレアボイド:薬物療法に対して、患者さんの副作用を未然に回避・防止する
漢方薬には副作用がないと思っている人も多いので、本人が不調である原因に思い当たらないことも多い。
“血圧が上がっていたの“
今回は患者さんが、我々に教えてくれていた。
「効果の感じ方、副作用の出方には個人差が大きいからさ。伝えてくれて良かったよ」
イチイさんはそんなことを言っている。
(ちゃんと俺も患者さんの話に、耳を傾けないといけないな)
患者さんが伝えてくれる話の重要さに、改めて気が付いたオウギさん、そしてロクジョウさんでした。