前回のお話
スギ花粉やダニアレルギーに、悩まされているケイヒさん。
そんなケイヒさんの元に、友人の美容師ハイエさんから電話がありました。
「ケイヒ、いつも鼻炎が酷いだろ?」
「え?うん」
アレルギーを改善させるには、お客さんから聞いたという“舌下免疫療法”がいいと、教えてくれました。
その事をケイヒさんに紹介するため、わざわざ電話をくれたようです。
「うちのお客さんが言うにはさ。
スギ花粉とダニアレルギーに効くんだって。
ケイヒしょっちゅう大変そうにしてるからさ」
「舌下免疫療法?
何となくだけど、聞いたことあるかも」
「根治する可能性もあるらしいよ」
「根治する?
いいじゃんそれ!
すっかり治るなら、早くやりたいくらいだ」
「詳しいことはさ、くまじろ先生とかマメチュー先生に聞いた方がいいとおもうけど」
「うん」
「ただ、デメリットがあるらしい」
「デメリットってどんな?」
「えっと、ちょっと待って」
ハイエさんは友人のケイヒさんの為に、メモをしてくれていたみたいです。
「約2~3割ほどの人には、効果があまり感じられない事もあるって」
「やってみなきゃ分からないってことか…」
「それから最低三年は、投与を続ける必要があるらしい」
即効性はないので、治療を継続する必要があります。
アレルギー体質を変えて、根本的な改善を目的とした治療です。
「三年かぁ。大変だな。
でも毎日何回も鼻水を、かみ続けるよりはマシかも」
「じゃあいいじゃん。やってみれば?
アレルゲンである、ダニエキスを投与をするんだって」
「…え…」
「シダキュアって薬がスギで、ミティキュアがダニアレルギーの薬らしいよ」
「ちょ、ちょっと待って!何?」
「だからダニエキスを…」
「ダニエキスを舌に垂らす?
ダニを?」
ケイヒさんが大嫌いなダニ。
「おえぇぇぇぇ」
「?どうした?ケイヒ…」
「気持ち悪い…」
青ざめ、鳥肌を立てているケイヒさん。
「あれ?
ケイヒのデメリットってそっち?」
「だって、ダニだろ?
潔癖症の人とか、他にも無理な人いるだろ、それ」
「どうだろ…」
「しかも毎日ダニ?」
「でもさ、それで治ったら?」
「な、治ったら?うぅ~ん…」
改めてメリットとデメリットを考えてみる。
毎日薬を投与する必要がある。
“毎日薬”
それは他の慢性的な、病気の治療でも同じです。
病気を治療するというのは、メリットだけがあるわけではありません。
手術にだって、放射線治療にだって、デメリットはある。
“とはいえダニ…でも鼻水…この鼻水のせいで…”
ラーメン好きだけど、鼻水が大量に出て大変だから、なかなか食べに行けない。
いや、ラーメンによる鼻水は、アレルギー関係無いですが…
しかし掃除中に出る鼻水は、アレルギーが原因。
おそらくダニが飛び散っているのでしょう。
鼻をかみながら掃除をするため、はかどりません。
でもそんな苦しい日々も、治療すれば解放される。
長年の悩みが無くなる…かもしれない。
しかしさらに他のデメリット。
薬なので、副作用があります。
口内炎、舌や唇の腫れ、口の中の痒み、不快感。
アナフィラキシーショックを起こす可能性もある。
費用も初回は5000円ほどで、以降は毎月2000円位は掛かってしまいます。
「やっぱり一回、よく考えることにするよ」
「そうか。それが良いかもね。
無理に今日、決めることもないし」
「わざわざ教えてくれたのに…」
「それは気にするなよ。
ただスギ花粉の飛散時期には、治療を始められないらしいから…」
「ん?」
治療は6月~12月から開始します。
ダニによるアレルギー性鼻炎の人は一年中、いつでも治療開始OK。
一方スギ花粉症を併せ持っている人は、飛散期が終了してからでないと、治療は開始出来ません。
なのでケイヒさんの場合、治療を始めるならそろそろ開始時期。
「そうか…
治療をするなら、今のうちに決断しないといけないのか」
「まぁ、とりあえずゆっくり考えてみなよ」
「わざわざのありがと」
ハイエさんとの電話を切った後、少し考えた末、今度はナメ江さんに電話で相談することにしました。
その結果…
“改めて、もう一度よく考える”
ことにしました。
ケイヒさんと似たタイプの人に相談したため、当然こういう結果になる。
新しいステージに行くためにも、交友関係を広げられると良いのですけどね。
舌下免疫治療に使用される薬は、あらかじめ登録された医師・薬剤師がいる登録医療機関・薬局のみで投与、販売を行えます。
薬の成分にはヤケヒョウダニやヒョウダニ等から、抽出されたエキスが入っています。
舌下錠は舌の下に入れて服用。
これを毎日続けていくと、体が次第に慣れていき、アレルギー症状が出なくなっていくのです。
数年かけて完治、または寛解が期待出来ます。
しかし長い期間治療が必要なので“効果が出ない”と、自己判断で薬の服用をやめたりは、しないようにして下さい。
注意として気管支喘息のある人は、使用出来ないことがあります。
初回は医師の指導のもと、治療を行います。
30分ほど病院で安静にし、体調の変化を確認します。
2回目以降は自宅で服用可能。
ただ副作用を考慮する必要があるため、家族がいる・日中に服用する等の配慮が必要。
その後、徐々にアレルゲンを増量していきます。
服用後は運動、飲酒は避けるようにしましょう。