
「いやな予感がしますね…」
ポ村に漂う、不穏な空気を感じ取る占い師ソヨウ。
「でもこの空気…
嫌いじゃ無いですね。
しばらく静観してみますか…」
ソヨウはニンマリとしながら、割れた水晶を見つめていた。

安楽死が許可されている国がある。
条件をつければ、自ら死の薬を投与してもいいらしい。
“明日になんの用も無い”
望むのであれば…
明日以降なんの用事も無い人間皆に“死ねる薬”を渡してもいいのでは無いだろうか。
“人を殺す薬”
人のためにならないなんて、誰が決めた?
“人を殺す薬”を“人を救うため”に使う。
ポ村で一人、誰にも気付かれないように死の薬の研究をしているカシュウ。
この村には村民を守るため、障子にあるようなたくさんの目に見張られている事には、気付いていた。
そのため目立たないよう、夜が更けてから活動を始める。
死を望む人間のために…
そんな彼らのために…
眠るように死ねる薬を作り出す。
“いつでも死ねる”
そういうものを持っていたら
「いつでも死ねるんだ」
そう思って安心し、ツラくてもとりあえず明日も生きてみようと思うかもしれない。
そんな中、目の前に現れた少女。
「毎日ホントにつまんないんです。
つまらない勉強、つまらない友だち。
あの人たちと一緒にいて、笑ったことがないんです、あたし。
そしてつまんない人生を送っている母親。
老い衰えてあんな風になるだけだったら、今のうちに死んでおきたいんです」
“分からないかもしれないけど、あたしにとってはホントにツラいんです”
いつまでも長々と説明する少女。
この村には“死者の像”という苦しみを与えられながら死んでいける、そんな像が存在するという。
その像を紹介したくなった。
ビルからでも飛び降りて、即死できずに徐々に死んでいけば良いと思った。
まだホントの苦しみを知らない、世間知らずの少女。
最後にホントの苦しみを感じながら、死んでいけばいい。
ただ…
まだ世間を知らない幼子に、ホントに死を与えるのはおとな気なさ過ぎる。
死の薬を手渡す際には、しっかりと選別をしなければならない…
死を許可する条件。
それはしっかりと、決めておかなければならないのだ。