マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

ケイヒさんの眠れない夜

「暑い…」


冬に比べて夏の夜は短いけれど、寝苦しくて夜中に目覚めてしまうことが多いため、体感的には冬より長く感じます。
 

夜間になっても気温が下がらないため、毎日のように寝付けません。 

眠りも浅いしですし…



夏の夜の独特な空気。

不思議なことが、起こりそうな雰囲気。


フラッと外に、出て行ってしまいそうになります。



夏の夜をテーマにした作品も多い…

なんとなく物語を書きたくなるのは、分かる気がします。


ポ村出身の画家だという人の絵も、確か夏の夜の絵が多かったイメージがあります。


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お盆になると死んだ人の霊も帰ってくる。


精霊馬・精霊牛であるキュウリやナスに乗って…


夏に収穫量が多いからこの二つの野菜に、ご先祖たちは乗ってくるそうです。


お盆は8月13日~8月16日の4日間。


ご先祖さまたちはその間ずっと、滞在しているんだろうか?


地方によって違うそうですが、行きは馬であるキュウリに乗って早く帰ってきてもらい、帰りは少しでもこの世にいて欲しいからゆっくりと牛であるナスに乗って帰ってもらう…



俺だったら行きも帰りもナスに乗って、のんびりしながら旅?をしたいけどなぁ。

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どうせこの世に帰って来ても、子孫とワイワイ楽しく話したりなんて出来ないだろうから…


ちょっとみんなの様子が、垣間見れればそれでもう満足です。




昔、寝苦しい夏の夜。
エレベーターで爆破されて、死ぬ夢を見ました。


唐突で一瞬の出来事だったので、痛くも怖くもありませんでした。


“死んだ!”とは思ったのですが、実感はあまり感じられず…


そして夢は、死んだ後もそのまま続いていきました。



気付くと実家のドアの前。


暑かったのか扉は開いていて、母親が台所で夕食の準備をしているみたいでした。


俺が家の前にいることに気付かず、おそらく死んだ事すら知らず、何やら楽しそうに料理を作っていました。


そんな母親に…
自分がそばにいることに気付いて欲しくて。
母親とまた話しがしたくなって、大きな声を出して母親を呼びました。


それはもう必死に…
何度も何度も…

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でも全然気付いてくれなかった。
いくら呼んでも振り向いてはくれなかった。


こんなにそばにいるのに…


その時になって
「ああ…死んだんだな俺」
と思いました。


母親とは二度と話せないんだな…と。
そんな夢。


その夢を見たからか、霊になって帰ったとしても
「アイツら元気かな?成長したかな?」
とりあえずそれを確認したら、帰りたくなってしまうんじゃないかと思うんです。


例え楽しそうにしていなくても、霊になった俺には、彼らを幸せにしてあげるチカラはない…




昔から怪談を夏によくやる理由、というのがあるそうです。


当時の一流役者は土用休み。

残った二流の役者さんが怪談ものを多く演じ、それが根付いて夏の風物詩になったのだという。


夏の夜のもっさりとした空気を吸うと、ひんやりとした白い着物の幽霊が出るというよりは、妖怪とかおばけ的なもの達が、森の中で祭りでもしているようなイメージが浮かびます。



やっぱり夏の夜はお祭りです。


人間も夜通し祭りをやっていてくれたら良いのに…



“夜中目覚めてしまった時に、まだお囃子が聞こえてくる。
再び眠れそうにないから祭りをのぞきに行くと、近所の人たちが楽しそうに祭りに参加している。
暑くて眠れないし、眠気が訪れるまでボンヤリここで、みんなの盆踊りでも見ていようかな…
かき氷でも食べながら”

…なんていうのが、お祭りが理想です。



ただ問題は夏の朝は早いこと。
「あ~あ、2~3時間寝ればすっかり疲れがとれる“薬”出来ないかなぁ。
日中だるくて夏バテみたいになるからなー」


マメチュー先生がおっしゃっていた事。

“睡眠不足になると体力が回復せず、疲労が蓄積していきます。
そして寝汗をかくことによって、夜間に軽い脱水症状を起こすこともあり、それが夏バテの原因にもなります。
水分補給をする事が大切ですが、同時にしっかり塩分も補給して下さい。
体内の水分・塩分が不足すると血流が悪くなり必要な栄養素が、行き届かなくなってしまいますよ”



夜中に目覚めてしまってから、頭の中で色々と考え事をしてしまい、再び眠れずにいるケイヒさん。


さっきまで暑苦しい空気が部屋の中に充満していたのに、涼しい風が窓から“スーッ”と吹き込んできました。


フラフラと窓辺の方へ近づくと、驚くことにポ村が水に浸かっているのが見えました。

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雨なんて降ってなかったよな。多分…
何で?なんの水!?

「!!!」


そうだ、野菜たち!大丈夫かな…
こんなに水に浸かって!


本来怖がりのケイヒさんのですが、農産物が心配のため様子を見に行く事にしました。


恐る恐る外に出てみると、深夜なのに周囲は明るく、まぶしいくらいの月明かりが村を照らしていました。


「ホントに水だ。ひんやりしている」


濁りのない透明な水。

魚も泳いでいる。


でもお囃子は当然聞こえず、人の気配はどこにもありません。

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静かな夜。

自分が水の中を歩く“パシャパシャ”という音だけが聞こえます。


人とすれ違う事もなく、畑の方へ向かって行きました。

「………」


人がいる。


小さな丘の上のようなところに、見知らぬ誰かが座っていました。


この世のもの…だよな?

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ゾッとするような気配は何も感じない。


俺と同じで寝苦しくて、寝付けない人なのかもしれない。


この村の人?


とはいえ知らない人に用も無く、深夜に突然声をかけたりしたら、俺が変な人になる。


ちょっと変わった夜だけど、ただ“水がある”っていうだけで大騒ぎしている人になってしまう。


それ位あの人はこのような状況でも、落ち着いているように見えた。


俺が寝ていた時に降った大雨に、気付かなかっただけかもしれないし…



ケイヒさんは見知らぬ人物のことはそのままに、再び畑の方に向かいます。

シャパシャパシャパ…
少しずつ水が引いていってました。

そして月明かりは、徐々に明るさを失っているようでした。


いま何時だろう。
この時期、4時頃には明るくなり始めるから、夜明けはまだなんだろうな…


畑に着いた頃には、水はすっかり引いてしまっていました。


心配していた作物も大丈夫そうです。

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作物たちはケイヒさんの目には、いつもよりむしろイキイキしているように見えました。


大切な農産物の無事を確認したら、急速に眠気がケイヒさんを襲ってきました。


「まぶたへの“ピンポイント重力”が凄まじい」


さすがにこんなにところでは眠れないため、フラフラしながらも帰宅する。


村を歩き回った時についた草を拭き取ってから、すぐさまベッドに潜り込みます。


薄れゆく意識の中
“先ほど見かけた人物は家に帰ったのだろうか。
眠れただろうか”
とケイヒさんは一瞬だけ考えました。



翌朝、仕事が終わってからマメチュー先生に、睡眠にいいものが無いか聞きに行きました。

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まず“悩むくらい眠れないようなら、お医者さまの受診をオススメします”という前置きをしてから、お話をして下さいました。


「お薬では無く、ハーブやサプリメントなら、ご提供出来るものがありますよ」


「眠れるサプリですか?」


「これは天然アミノ酸の一種です。
脳の興奮を抑え、催眠作用があるそうですよ」


ハーブに関してはミント・カモミールなど、不眠に効果があるものが沢山あります。


「他にも鎮静作用があり、昔から不眠治療の際に、使われてきた“セントジョンズワート”というハーブもあります。
少し苦味がありますけど大丈夫ですか?」


「ええと、すこぅしなら…」


「ノンカフェインなので、眠る一時間前くらい前に飲むといいと思います。
睡眠の質を上げると疲労も取れ、気持ち良く目覚められますよ。」
 

「じゃあまずは、ハーブから試してみます」




もし昨夜の人にまた会ったら…

もしあの人が、眠れずに悩んでいるんだったら…


いやいや、すすめられないよ。

知らない人に
「このハーブどうぞ、不眠に悩んでいる人にオススメですよ」なんて。

 

普通に考えても、そんな事を言って来る奴は変だし…

口に入れる物なんて尚更怪しいし…


っていうか俺。
知らない人なのに、何で気にしているんだろう…?