村長と共に、ポ村の医療機関の見学をしに来ているイチイさん。
イチイさんはマメチュー先生のストイックさに、驚嘆していました。
(すげぇ!)
一方パゴロウさんは村長とマメクスリカフェにやって来たイチイさんを見て、驚愕していました。
(ええっ!?この人って…)
ポ村の村長は、いつもセルフメディケーションに熱心に取り組んでいます。
“元気で長生き”をポ村の売りにしたいみたいです。
そのためイチイさんに
「この村の薬剤師の教育にご協力下さい」
との依頼をしています。
とはいえイチイさんの方は、教育をするためというよりは、他の薬局の薬剤師たちの仕事ぶりが見たくて来ているようです。
“イチイさんの薬局では、薬剤師の教育が行き届いているというお話を伺っております”
教育…?俺…?
(教えなくてもうちの薬局のスタッフは、ちゃんと自分で勉強している)
イチイさんがしている事と言えば、せいぜい相手が“アメとムチ”のどちらを与えた方がやる気になるのかを見極めているくらい。
【イチイさんの部下オウギさんのつぶやき】
(自力で勉強しなかったら無言の圧力が凄いじゃないか、最後は教えてくれるけど…)
そんなイチイさんが常々当惑している事。
それは向上心がなく、仕事をきちんと全うしようとしない同業者を見かけた時の対処。
教育…か…
勉強もせず、薬剤師としての機能を果たしていない奴らを知っている。
いるんだ、そういう奴が…
【再び部下、オウギさんのつぶやき】
(イチイさんが苦手な薬剤師がどんなタイプか知っている以上、上を目指さないではいられない)
それに仕事熱心ではない同業者が嫌なのは、やはりオウギさんも同じです。
(そういう薬剤師と関わる医者や患者は、迷惑に思ったり不快に思うだろう。
医療は進化を続けるから、これからも頭に入れておかなければならないものがたくさんある。
もちろん覚えたことだって勉強を続けていかなければ、忘れてしまう事もある。
なのに何もしないで平気な様子の同業者。
そういう人間の存在は、同僚としては邪魔でしか無い)
そのためイチイさんは患者さんには笑顔を絶やしませんが、同業者にはとても厳しい面があります。
【またもつぶやくオウギくん】
(本当は海外の薬剤師のように、患者さんに信頼される立場になりたい。
でも今のままでは、患者さんに信頼して貰える資格は無いのかもしれない。
日本の薬学部も6年制になったというのに…
自分も含めてだけど、改めて教育が必要な薬剤師はある程度いると思う)
海外とは文化の違いや医療費の違いもありますが、薬剤師の立場に関してはかなり違いがあります。
任されている仕事内容にも違いがある。
海外の薬剤師が任されているような仕事を、日本の全ての薬剤師がこなせるのか…
そんなオウギさんさんと同じような事を、イチイさんも考えていました。
「このひとみたいな薬剤師ばかりだったら…」
初めてマメチュー先生に会ったときに思ったこと。
むやみに薬をすすめるのではなく、薬に頼らない生活も推奨している。
そして食生活の改善をすすめたり、その他の癒しの提供もする。
音楽や絵画・植物・動物・アロマなどによる癒し。
「心が落ちつきますよ」
そう言って患者さんにあったセラピーを、すすめてみたりしている。
そして仕事に役立ちそうな、色々な資格も保有しているという。
薬剤師としては他に処方箋から医師の処方意図を読み取り、同じような処方内容でも患者ごとに説明の仕方を変えている。
あの人なら一人で十分、薬剤師の教育は出来ると思う。
あの人といたら共に上を目指したくなる。
じゃあ俺の役目は?
マメチュー先生は厳しめの指導は、出来なさそうです。
俺はムチを振るう役?
そう言えばマメクスリカフェには、前に来たときにはいなかったちびっこい新人の薬剤師がいた。
子犬のようにプルプル震えていた。
まだ何の教育もしていないのに…
あんな子犬にムチなんぞ振るったら、虐待になっちゃうじゃねえか…
その噂の当人、パゴロウさんはイチイさんの顔を見て思い出していました。
次回へ続きます