前回のお話
にゃこさんはクリスマスの日に、ねこ森町のみんなにプレゼントをあげたくて、サンタさんを探しに行きました。
でもなかなか見つかりません。
寒いのが苦手なねこさん。
雪の中を歩き回り、さすがにちょっと寒くなってきてしまいました。
はじめて雪が積もった夜に、お散歩に出たのです。
しかも長時間歩いているので、無理もありません。
それに都会は賑やかなのでしょうが、ポ村のイブの夜はとても静か…
にゃこさんはひとりぼっちで、寂しくなってきてしまいました。
辺りを見回しても一面、雪があるのみ。
もうおうちに帰って暖かいお部屋で、まゆさんに抱っこして貰いたくなってきています。
「でもにゃこさんだって、プレゼント欲しいにゃ。
そんでみんなにプレゼントあげたいんにゃ」
にゃこさんは目的を遂行するため、頑張ってもう少しサンタさんを探してみることにします。
「はにゃ…?」
そんなひとり頑張るにゃこさんの前に、ポ村に住む雪の精でしょうか?
雪だるまや雪うさぎが、トントンと跳ねるように通り過ぎて行きます。
実はよく見ると、雪だるまたちは動いて等いません。
おそらく子どもたちが作ったものなのでしょう。
真っ白い景色が続いていた為、にゃこさん自身が動いているのに見間違えて、雪だるまたちの方が動いているように見えてしまったみたいです。
「雪にゃるまたち…
元気そうにゃ…」
思い違いをしているにゃこさんは、楽しそうな雪だるまたちを見て一層寂しくなり、寒さも増してきたような気さえしてしまいます。
「寒いにゃ…
暖かいおうちでねむりたいにゃ」
モスモスモス…
それでも雪を踏みしめて歩いて行きます。
夜は目が利くねこさんたち。
遠くに何か置いてあるのが見えます。
「おうち…
かまくらにゃ?
!!
ちがった、押し入れにゃ!」
不思議な所に押し入れがあります。
雪の上に段ボールで出来た、押し入れが置いてありした。
「この中なら少しはあったかいにゃろか」
にゃこさんは押し入れ段ボールの中で、休んで行くことにしました。
押し入れの中でしばらくジッとしていると、不思議な映像が見え始めました。
「??」
ねこ森町の映像のようです。
「この押し入れからも、ねこ森町に行けるにゃの?」
草原や水たまり、小川や丘を越えてねこ森町の中を行く。
「にゃ!ねこ森町のみんにゃがいるにゃ!!」
「おいで」とねこさんたちに手を招かれる。
辺りに漂うあまい香り。
「これ、なんにゃ?」
「ブッシュドノエルって言うお菓子なの」
「クリスマスにたべるんにゃ」
「ぶっしゅ…?」
その大きなケーキの上に乗っかって、みんなで遊びます。
ちょっぴりおめかしして、みんなでクリスマスパーティーです。
途中でお腹が減ったら、モコモコとケーキを食べます。
お腹がいっぱいになったら、ねこさんは寝ます。
幸せな夢を見ます。
「ぷぴぃ~」
「……」
「ぷぴぃじゃねえっての!」
まゆさんは段ボールの中で眠っている、ねこさんを
発見。
にゃこさんは押し入れ段ボールだと思い込んでいたようですが、実際はただの段ボール。
にゃこさんはまた寒い雪の中で、見間違えてしまったようです。
まゆさんはスヤスヤ眠っているにゃこさんを起こさないように、そっと抱き上げる。
落ちていた段ボールは、何かプレゼントが入っていたようです。
「こんなもん落として…
村長か?」
いつもサンタさん役をして、子どもたちにプレゼントを配っている村長が、置き忘れをしたのでしょうか。
それともサンタさん?
どちらにせよ、迷惑な話です。
「まさかのんきに寝ちゃってるとはね、こんな寒空の下…」
ねこさんという生物はこの世だろうが、あの世だろうが安らかに眠ってしまう生物。
雪が再びフワフワと落っこちてきました。
「あ!雪がやっと落っこってきたにゃ」
雪が顔に当たったせいで、目を覚ましてしまったにゃこさん。
「にゃこ、今日はもう帰るよ」
「まゆちゃん!
サンタさんは?
ねこ森町のみんなは?」
世の中のねこさんたちが、段ボールに入っては体験する不思議な夢を見ていたにゃこさん。
「なに?夢みた?
あっ、もうにゃこ!
ちょっと、しもやけ出来てるじゃん」
ふたりとも、しもやけが出来てしまっています。
「満足するまで探せなかったの?
サンタさん」
「みんにゃで遊んじゃってたにゃ。
お菓子のケーキの上で…
たのしかったにゃ」
「お菓子の上?」
お菓子の家に迷い込んだ兄妹が、お菓子を食べてコロコロ太るまで魔女にこき使われていた話と同じ?
それともりーちゃんのお菓子の家のことを、言っているのでしょうか?
「はい、にゃこさん手を出して」
しもやけになってしまっている、にゃこさんとまゆさん。
「お手々かゆいにゃ」
にゃこさんの肉球に温めたタオルを押し当てます。
そしてあっためる振りをして、こっそり肉球をプニプニします。
「これ新しい、モコモコのタオルにゃ」
「にゃこさんにクリスマスプレゼント」
「にゃ!まゆちゃん!」
「早速つかっちゃったけど」
ねこさんも気を付けないとこうして、しもやけを起こすことがあるようです。
まゆさんは自分の手足に軟膏を塗ります。
「それ、にゃこさんも!」
「えぇ?舐めない?」
「舐めちゃダメにゃ?」
軟膏は、にゃこさんの手が届かないところにしまいます。
「にゃこさん名義でさぁ…」
「にゃ?」
「クリスマスに届くように、ねこ森町のみんな宛にニャーバーイーツでちゅ~るとかを、届けて貰っているからね」
「にゃ!ほんとうにゃ?」
他にもおもちゃ等を、買ってくれていたようです。
「まゆちゃんがサンタさんにゃ?」
「誰が白髭ジジイだよ」
「ありがとにゃ~」
「おもちゃはさ、今度遊び行ったときにみんなで一緒に遊ぶといいよ」
「にゃしっ」
「そんで…にゃこはケーキ食べたんだっけ?
お腹いっぱい?」
「おなか…」
ペコペコです。
「ほら、じゃあチキン。
っていうかささみ」
「にゃ!」
「クリスマスなんて、一緒にやって無かったからね。
たまにはね」
「まゆちゃん!」
「でもこっちの甘いカクテルとフライドチキンとサラダは、全部あたしの」
「まゆちゃんっ!」
「うそうそ、ほら、もう一つプレゼント」
ちょっと豪華なねこ缶です。
「ゆっくり食べるんだよ」
「にゃこさん、幸せにゃあ」
相変わらず何も出来なかったにゃこさんですが、これからまゆさんとあったかいお部屋でクリスマスパーティーです。