梅雨の時期。
ケイヒさんには毎年抱える悩みがあります。
花粉が暴れ狂う季節が過ぎっ去ったかと思えば、雨が降り続く日々。
家の中で眺める雨は好きですが…
農家を営むケイヒさんは、やっぱり育てているお野菜の体が心配。
雨が気になり窓の外を見てみると、木の下で雨宿り中のにゃこさん発見。
しかも何だかウトウトと眠そうです。
「お~いっ、にゃこー」
ちょいちょいとケイヒさんに、手招きされたにゃこさんは大事そうにぬいぐるみを抱えながら、テコテコ素直に歩いて来ました。
タオルで体を拭いて貰っているにゃこさんは、まだ眠そう。
雨の日の猫さんは、いつもより眠くなるんだそうです。
もこもこと暖かいにゃこさんを抱えていたら、お腹が空いてきました。
「あれ、食パン置きっぱなし…いつのだ?」
安心しきって眠りこけていたにゃこさんは、その声に目が覚めてしまいます。
「腹減ったの?」
「んにゃ」
「じゃあ、ちゅ~るにしような。買ってあるから」
「んにゃ」
一方食パンを観察するケイヒさん。
「カビてる…」
もったいない。でも。
“カビの部分だけ取り除いても、食品全体に菌は既に浸食しています。”
マメチュー先生からそう聞いていたので、勿体なくて、心苦しいけれど、食パンは諦める事に…
「腹減ったなぁ」
まゆさんであれば、にゃこさんのちゅ~るを取り上げて自分で食べる所ですが、さすがにケイヒさん、そんな発想はありません。
だけど食べれない、そう思うと余計にお腹がすいてきます。
「今の季節は、そうだなぁ。豆とかがうまい時期だなぁ」
サヤエンドウの卵とじ
茹でたそら豆
「そう、そら豆!」
そら豆と聞くと、いつも思い出すのが昔読んだことがある不思議な童話。
藁と炭とそら豆が出てくるお話。
左から藁・炭・豆です。
シュール過ぎる旅のお仲間。
彼らは、おばあさんに食べられそうだった“そら豆”と、そら豆を茹でるために燃やされそうだった“藁”と“炭”です。
“あなたたちは何故旅を続けるのですか?”
“僕たちが暮らしていた家にいる婆さんから逃げるためさ”
もし旅の理由を聞かされたとしても、人間側からするといたって普通のおばあさん。
リアクションに困りそうです。
「へえ~、そうなんだぁ」
って言っちゃいそうです。
さて、おばあさんの元からから逃げる旅を続ける三人。
彼らの前に、旅にはつきものの試練が訪れます。
「見て、あれ!」
「あっ、あれはっ!」
「おっおっ、小川だー」
そうです。
行く手を阻むように、小さき彼らの前に川が…
川…というか小川が道をふさいでしまっていたのです。
「どうしよう」
「これではあの婆さんに追いつかれてしまう」
そこで1番背の高い藁が、みんなのために橋の代わりになることに。
炭はマメを押しのけ、我先に橋を渡ろうとします。
何しろおばあさんに捕まってしまっては大変ですから…
いや、実際おばあさんは、そら豆一粒と藁・炭の事なぞ、追ってはいないでしょうけど。
さてその炭ですが、炭にはまだ炎がくすぶっていたため、橋の代わりをしていた藁に火が燃え移ってしまいます。
燃えた藁は消えてなくなり、炭はそのまま小川に落下。
流されていきます。
その一部始終を見ていたマメさん、大爆笑。
その様子はもう
“え?どうしたの?”
と、こちらが心配になるくらいの笑い方。
そしてマメさん笑い過ぎて腹の皮が裂ける。
ここまでくると、心配を通り越してもう引きます。
その腹を通りすがりの人に縫ってもらい、それが原因でそら豆には黒いスジがあるんだとサ。
童話のラストには“そら豆さんは幸せに暮らしました”とありました。
悲しければ悲しいほど、泣けずに笑ってしまうタイプなのかもしれません。
しかし、藁と炭に関してはその後、一切記述がされていませんでした。
この話を思い出すたびに、そら豆の塩茹でを純粋に楽しめなくなる、繊細なケイヒさん。
「塩茹でなぁ。っつーか塩っ!湿気で固まってる!」
調べてみると他にも、片栗粉等も固まってしまっていました。
「あっ、粉薬は?」
固まっている…。
「にゃあ」
窓辺で何か言っているにゃこさん。
「なんだよにゃこ~」
外を見るとマメチュー先生とナメ江さんが、雨の中お散歩中。
「スジ、ない」
なんとなくお腹を確認してしまうケイヒさんでした。