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「私は一生ポ村を愛す!」

突然ですが、ポ村を愛する村長のオススメは、村特産品の梅。中でも最近誕生した新品種の長太郎青梅は、青いダイヤと呼ばれる最高級品に勝つべく改良された、生食可能な逸品。
梅は元々、中国から薬として伝わったもの。朝夕一個食べれば医者いらずと言われるほど、栄養豊富です。

その長太郎青梅を携え、村長は都会へと飛び立っていきました。ポ村の活性化、そして長太郎青梅を全国に広めるために。
その背中を見送ったのは、ポ村の薬剤師・まゆさんと、USAさん。村長の留守に、二人は異常なまでに喜んでいます。
「マジで?村長、都会に行ってる?」
「やったぁ!」
しかし、喜びは束の間。急に辺りを見回し、互いに顔を見合わせる。
「なんか、嫌な気配を感じなかった?」
「うん…でも大丈夫、夕方までは帰ってこないはずよ」
村長は悪意ある噂話一つで舞い戻ってきそうなほど、村の規律に厳しい人物。観光客に「感じのいい村」と思われたい一心で、村の風紀委員と化している。代々ポ村の村長として貢献してきた一族の現当主もまた、村の活性化と発展に情熱を燃やしています。

「今日にゃこちゃんは?」
「隣町」
「あら、またねこ森町?だけどどうにかしてあたしたちも、ねこ森町に行けないかしら」
「それねー。にゃこに連れてけってお願いしてるのに、連れてってくれないんだよね」
二人の視線の先には、ねこさんだけが入れる秘密の通路。
村長の厳しい監視から逃れ、わずかな自由を謳歌するための、彼女たちなりの小さな反抗でした。

「あーもー!かわいいねこちゃんに囲まれたーい!」
「ついでに一匹誘拐したい!」
「いいわね、いいわね。二匹くらいいけるんじゃない?バレないわよ」
「こんな冗談もさー。村長がいたら迂闊に言えないよね」
「冗談自体好きじゃないお人だものね」
続きます