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森の中に佇んでいるのは、まるで生クリームみたいなパティシエ・マルズさんが営むスイーツショップ。
ナッツやフルーツ、野菜等を使用したケーキを中心に扱っているお店です。
もうすぐ、営業終了の時間。
ケーキはもうあと一つで完売。
パティスリーマルズはポ村で人気のスイーツショップのため、閉店時間までケーキが残っていることは珍しいのです。
スタタタタタッ
マルズでお手伝いをしているこちらのちびっ子は、りーちゃん。
将来はお菓子屋さんになるのが夢なのだそうです。今日は一日、お店のお手伝いをして空腹状態みたい。
そんな二人にマルズさんは、優しく語りかけます。
「あと5分我慢してくださいね。そしたら余ったケーキ、食べて良いからね」
りーちゃんとどんぐりさんは、お仕事を手伝ったご褒美としてケーキが余った日は、そのケーキをごちそうになるのが楽しみ。
「はい!りーちゃんガマンします。どんぐりさん、半分こしようね」
既に同じケーキを食べていたきのこさん。
「ずんだモン(ずんだモンブラン)とっても美味しかった。なめらかなあんこの部分と、枝豆の食感が残っている部分があって、飽きのこないお味だったわ」
「うん、うん。です、です。ふふ、あと3分!」
短いようで長い3分。
ゲームをしている時の3分はあっという間なのに、運動している時の3分はやけに長い。二度寝した時の3分はあっという間なのに、よく知らない人と会話中の間が持たない3分は、とてつもなく長い。カップ麺の時も思うけれど、時間が過ぎるのを待っている時、人はとっても長く感じてしまうらしい。
「まだかな、まだかな。あと2分」
チリン、チリリリン
「USAちゃん爆速!ちょうど一個残ってるー!しかもずんだモンだー」
つねにタイミングが悪い場面に出くわす星の元に生まれた女、USAさん。
ケーキを購入するため、閉店時間ギリギリにダッシュでやってきました。
「えっ!?」
「いっ、いらっしゃ…ませっ。うぅ、うえぇんっ」
「りーちゃん、うれし泣き?じゃないよね。買っちゃダメだった?」
りーちゃんは大きく首を横に振り、一生懸命歯を食いしばって、涙を我慢します。どんぐりさんも悲しそう。
「そ、そんなこと…ないでつ。一個でも多くケーキを売るのが、ケーキ屋さんのおしごとでつ…」
「あ、う、うん。そうよね」
「お買い上げ…ありがと…」
りーちゃんとどんぐりさんがいる時の閉店時間ギリギリは、気持ち良くケーキを買う事が出来ない店、パティスリーマルズ。
「りーちゃん??」
「これって、てんまちゃんとこのハチミツ?」
「あっ、ううっ。そうでつ。てんまさんから貰って一回食べたやつでしゅ」
「りーちゃん、ホットケーキを作ったら食べますか?てんまさんのハチミツをのっけて」
「え?」
まだグズグズ泣いているりーちゃんの為に、ホットケーキを作ってくれるというマルズさん。
「うう、でもね。そのはちみつのビン…実は硬くて、開かなくなっちゃったのです」
続きます