マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

夢森町 その2

お前回のお話

ねこ森町に、深夜開店するという“夜カフェ・夢森町“に立ち寄った若い女性。


どうやら女性は仕事で、モヤッとする出来事があった様子です。


そんな女性の前に、おもちゃを持ったねこさんが、ニコニコしながらやって来る。



そのねこさんと目が合った女性は、頭の中にあったもやもやが消えていくような感覚を覚えました。




「にゃこさんと一緒に遊ぶにゃ?」



「にゃこさん?」



「にゃこさんというのは、にゃこのお名前にゃ」




「ああ、名前ね。で、遊ぶの?…いいけど。ところで君のその格好はなに?コスプレ?」


「これはセラピーキャットさんが着る制服にゃ」

「セラピー?治療、療法ってやつのこと?」


「にゃむ?そんにゃことよりおもちゃ!」




女性はおもちゃをにゃこさんから手渡される。



「遊ぶのね。はいはい」



女性は気のない感じでにゃこさんに向け、おもちゃを振り回しています。


「にゃ!そんなん、違うにゃ。もっとちゃんと遊ぶにゃ」



「ちゃんと遊ぶ?」



「もっとぱっぱって、おもちゃを動かすんにゃ。まゆちゃんはとっても上手にゃ。お前下手くそにゃ」



ねこさんと遊んだことのない女性。



「おもちゃで遊ぶのに、上手とか下手とかあんの?」



“下手?“



再びもやもや感情が、頭の中にもぐり込んでくる。




おもちゃ遊びも上手くなきゃ、親や教師・上司の前でも上手く立ち回れないあたし。



でもわかる。



そりゃそうだ。



そういう人間の方が接しやすいもの。



あたしだって、上手く立ち回れないやつは苦手だ。



ねこという存在でさえ、そうだろう。



可愛らしく愛嬌のある子が、ペットショップでも人気なはずだ。



「ごはんできたにゃ」


「ありがと。…これなに?」


「気まぐれ料理にゃ」

「いやだからさ、なに系の料理なのかとか、食材はなにを使っているのかとか」



「にゃによ。レシピ…パクる気にゃのね?」



「レシピとかじゃなくて…まぁいいや、なんか食べるの怖いけど」



ねこたちの視線を感じながら“気まぐれ料理“とやらを一口食べてみる。



「うん。なんでだか美味しい」


「この店のシェフがお前のために、丁寧に作った料理にゃ」



「そっか、嬉しい」


どういう味とか、表現するのは難しい味だけど、食べるとほっこりする。



変なの。



食べている様子を、ニコニコと見つめてくるねこ。

美味しそうの食べれば食べるほど、ニコニコ見てくる。

「ねこって身近であまり接したことないけど…可愛いんだなぁ」



この子たちはどのお客に対しても、同じ接客なのかな?


可愛げのないあたしと、可愛らしい妹。



うちの親は一応、姉妹でひいきしないように…というかひいきがバレないようにしていたなぁ。



親戚は酷かったけどね。


あからさまに可愛げがあった、優秀な妹の方をひいきしていた。



小5・小6の時の担任だった、おじさん教師のひいきも酷かった。



自分になつく、可愛らしい子にはメロメロ。


テスト中、答えを教えている声が聞こえてくることもあった。



さすがにそれは問題になったらしく、あたしが卒業した後に異動させられたらしいけど。



「食後の運動にゃ」



「え?」



さっきから周りをうろちょろしているねこが、再びおもちゃを持って話しかけてくる。



「もっかい遊ぶにゃ」



「ねこって遊ぶの好きなんだね」



「そにゃよ。ねこさんは遊ぶのが大好きなのにゃよ」



「ふうん。仕方がないなぁ」


「にゃふっ」



「ほら」



「にゃにゃっ」



「えいっ」



「にゃふにゃふっ」



「あははっ」



女性はおもちゃに向かって一生懸命飛びついてくるねこの様子が、たんだん面白くなってきたようです。

「お前、遊ぶの上手になってきたにゃ」



「ほんと?」


「にゃこさん、楽しいにゃっ」


「そう?」



その時、人見知りなのか店の端っこの方から、黙ってじっとこちらを見ているねこの存在に気付く。



「きみ、こっちおいでよ」



「…」



無視?

まぁ。


あたしも上手く立ち回れる人間じゃなくて…


だから目上の人にも可愛がられにくいタイプ。



そんなあたしなのに、可愛げがある人を素直に可愛がる親戚・上司・教師の気持ちはわかる。



あたしだって、あたしに似たタイプなんて苦手だ。



上手く立ち回れないお前のために、なんでこっちが気を遣わなくちゃいけないんだよって思う。



話をなかなか聞いてもらえなくても、自分からどんどん行けよって思う。



ねこが好きな人ならさ…



あの人見知りのねこと、上手く関われるんだと思う。



そして人間好きな人がいればさ。


上手く人に馴染めないような人間とも、ちゃんと関われるんだろうさ。



でもあたしは…


あの新しく入った後輩。



上手く立ち回れないし、人の顔色ばかり窺っているあの後輩。

はぁ、どうしようか…


続きます。