“夏は白い雲を見て、冬は雪を見て思うんだ“
「さっきまで粉砂糖みたいな雪だったけど、今はグラニュー糖みたいな雪が降ってる」
パティスリーマルズでお手伝いをしているりーちゃんは、雪が舞い散る冬の空を見上げていました。
「雲とか雪とか白いものを見ると、皆あまいものを想像するよね。そうだ…サンタさんって、雪をお砂糖にすることは、できたりするのかな。今ね、いっぱいお砂糖必要なんだ」
今年も冬の大イベント“クリスマス“が近づいてきました。
「雪をお砂糖にするのは、無理かな?じゃあ、サンタさんへのプレゼント、何お願いしようかなぁ」
パティスリーマルズでもクリスマスが一番、ケーキが売れる時期です。
今年もマルズにはいっぱい注文が入っているみたい。
パティスリーマルズは甘さ控えめのスイーツが多いけれど、やっぱりお砂糖はそれなりに使います。
甘いものが大好きなりーちゃんは、毎年雪を見るとつい“お砂糖みたいに甘くならないかな“なんてことを想像してしまうのです。
「さむーい」
今日はりーちゃん、マルズのスイーツを配達しています。
「寒い、寒いっ」
雪の中、注文の品を抱えながらせっせと歩いているりーちゃん。
「雪もお砂糖も“熱“では溶けてくれるんだけどなぁ」
どんどん降り積もる雪を見つめながら呟いています。
そして空に向かい、口を大きく開けて雪を味見してみる。
「う〜ん。甘くないや。冷たいだけだ。
サンタさん、ほんのりでもいいから、雪を甘くしてくれたらいいのにな。こういうのってサンタさんじゃなくて、神様にお願いした方がいいのかな?あれ?サンタさんって神様?七福神に真っ白なお髭の、似ている神様がいたような気もするけど」
雪には甘さがないことを確認しつつ大雪の中、埋もれそうになりながら進んでいきます。
モスモスモスモスッ
モスモスモスッ
「あー!りーちゃんいた。今日、雪すごいね」
「てんまちゃん!」
スイーツの注文をしてくれていたてんまさんが、雪の中やってきました。
「ご注文の品です」
「あ、どうもありがとうございます。
配達それで最後?じゃあさ、雪すごいから少しうちで休んでいく?」
てんまさんはりーちゃんの真っ赤な鼻やほっぺを見つめながら、そんなことを言ってくれています。
養蜂業をやっているてんまさんのご注文の品は、みつばちたちの冬のご飯、お花の砂糖漬けでした。
「みつばちたちって、ここで身体を温めあってるんだー。
寒いもんね。
虫さんも僕と一緒で、甘いもの好きなのかな?ありさんとかも、お砂糖好きなイメージあるけど」
「そうだね。みつばちたちもお砂糖よく食べるんだよ」
「虫さんたちも、マルズに買い物しにきてくれたらいいのに」
てんまさんは例年、みつばちたちには栄養たっぷりの蜂蜜を食べさせています。
でも今年は蜂蜜の収穫が少なかったようで、マルズにお花の砂糖漬けを注文し、みつばちたちに食べてもらうことにしたようです。
「冬のみつばちのご飯は注意しないと、病気になってゲリになったりしちゃうんだ」
「ええ?みつばちもゲリするんだ」
「うん」
「でも甘いものばっかり食べてていいなぁ。太って飛べなくなったりしないのかな?」
野生ではなく飼われている鳥なんかは、太りすぎて飛べなくなる子もいるようですが…
「昆虫たちはね、外骨格っていうのがあるから、太れないみたいだよ。それに太って体が動かしにくくなったり、飛べなくなったりすると、命に関わっちゃうから、太らないようにしてると思う」
「じゃあお客様が虫さんばかりだと、心配になっちゃうなぁ」
“命に関わる“
食べると幸せになるスイーツですが、昆虫も人間も食べ過ぎは厳禁です。
スイーツは彼らを見習って、節度ある食べ方が大事。
「迷ってたけど、今年のサンタさんへのお願い決めた」
「プレゼント?何にするの?」
「泡立て器にする」
「りーちゃんらしいね」
「そんでね、それを使って、スイーツ作りいっぱい練習するんだ」
「うん」
「そんで、マルズさんみたいにナッツやフルーツ、お野菜を使った体にも優しくて美味しいスイーツを作れる人になるんだっ」
「うん、楽しみ」
クリスマスを前にりーちゃんは、将来の夢を改めて明確なものにしたようです。