マメチュー先生の調剤薬局

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ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

ミツバチの暮らし その2

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前回のお話

毎日けっこうな仕事量をこなすミツバチたち。姉妹や赤ちゃんたちに囲まれ楽しいけれど、それなりに苦労もあるようです。そんな時、ミツバチは自由を満喫する美しい蝶々の存在を思い出す。

 

昼間見かけた花の蜜を吸っていた蝶々。羨ましいなって、ちょっぴり思った。

 

みんないると安心するし楽しいんだけど、一人にもなってみたい。

 

一人で過ごすって、どういうものなんだろう?ちょっとした好奇心。そういうことを考えるお年頃なのかな?

ひとり、おうちを抜け出して、何も考えずにぼーっと過ごす。みんなが起きる前の刹那。ひとりぼっちでいることへの不安、孤独を味わってみる。

 

これは…結局家族と一緒にいるのが一番なんだって、再確認するための儀式。むくっと湧いてしまった“ひとりを満喫したい”という好奇心を満足させるためのもの。

 

ただそれだけ。

 

「ママ、おはよう」

「おはよう、今日はあいにくのお天気ね」

「うん。お空、曇ってるね」

 

そう、曇っている。

 

ひとりで過ごすことへの興味が、またすぐに湧いてしまう。

 

あたしたちはお日様が出ている時は、お外で活発にお仕事をするけれど、こんな曇りの日は少し活動がにぶくなる。外で一人でいても、おねえちゃんたちに気付かれることはなさそう。だから一人でこそっと、おうちから抜け出す。

 

すぐ帰るから…ちょっとだけ。

 

 

曇りの日は他の虫も心なしか、少ない気がする。

 

「あ、あそこはアタシとてんまちゃんが見つけた蜜源」

蝶々ってお日様の光を当たっていなくても、いつでも美しいのね。憧れるけど、なんか気に入らない。

 

「ねぇ、おねえちゃん!見て!あの蝶々ったら…」

やだ、アタシったらいつものくせで。

 

今、外出したばっかりなのにね。

気を紛らわすために、てんまちゃんがたまに歌っている歌を、頭の中で思い浮かべてみる。

 

蝶々の歌はお花たちに”とまれよ、遊べよ♪”なんて。美しい花ってやっぱり、美しい蝶々が好きなのよね。

 

アタシたち蜂の歌は”池の周りにお花が咲いたよ”ってお知らせしてもらうだけ。蝶々の歌の中では、お花たちが蝶々を奪い合うようにしていたけれど…蜂の歌は、単にアタシたちに受粉してもらいだけって気がしてしまう。

 

失礼しちゃうわよね。

 

ビッグママはほっそりして綺麗だけど、娘のアタシたちはずんぐりむっくりしてるから、仕方がないのかなって思うこともある。

 

「ん?やだ、このあたり、変な匂いが…」

 

なんの匂いだろう。

 

「あ!」

悪しきものは土壌を汚染させて、アタシたちの大事な植物を枯らしていくから大嫌い。

 

大嫌いだけど。

アタシにはあの子に、何もしてあげることができない。一人じゃ何もしてあげられない。

 

みんながいてくれれば、オオスズメバチだって倒せるくらい強いのに。

 

でも一人じゃ。

きゃっ。

 

こわい!どうしよう。こっちに来た!

 

おねえちゃん!

 

ママ!

 

続きます