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前回のお話
毎日けっこうな仕事量をこなすミツバチたち。姉妹や赤ちゃんたちに囲まれ楽しいけれど、それなりに苦労もあるようです。そんな時、ミツバチは自由を満喫する美しい蝶々の存在を思い出す。
昼間見かけた花の蜜を吸っていた蝶々。羨ましいなって、ちょっぴり思った。
みんないると安心するし楽しいんだけど、一人にもなってみたい。
一人で過ごすって、どういうものなんだろう?ちょっとした好奇心。そういうことを考えるお年頃なのかな?
ひとり、おうちを抜け出して、何も考えずにぼーっと過ごす。みんなが起きる前の刹那。ひとりぼっちでいることへの不安、孤独を味わってみる。
これは…結局家族と一緒にいるのが一番なんだって、再確認するための儀式。むくっと湧いてしまった“ひとりを満喫したい”という好奇心を満足させるためのもの。
ただそれだけ。
「ママ、おはよう」
「おはよう、今日はあいにくのお天気ね」
「うん。お空、曇ってるね」
そう、曇っている。
ひとりで過ごすことへの興味が、またすぐに湧いてしまう。
あたしたちはお日様が出ている時は、お外で活発にお仕事をするけれど、こんな曇りの日は少し活動がにぶくなる。外で一人でいても、おねえちゃんたちに気付かれることはなさそう。だから一人でこそっと、おうちから抜け出す。
すぐ帰るから…ちょっとだけ。
曇りの日は他の虫も心なしか、少ない気がする。
「あ、あそこはアタシとてんまちゃんが見つけた蜜源」
蝶々ってお日様の光を当たっていなくても、いつでも美しいのね。憧れるけど、なんか気に入らない。
「ねぇ、おねえちゃん!見て!あの蝶々ったら…」
やだ、アタシったらいつものくせで。
今、外出したばっかりなのにね。
気を紛らわすために、てんまちゃんがたまに歌っている歌を、頭の中で思い浮かべてみる。
蝶々の歌はお花たちに”とまれよ、遊べよ♪”なんて。美しい花ってやっぱり、美しい蝶々が好きなのよね。
アタシたち蜂の歌は”池の周りにお花が咲いたよ”ってお知らせしてもらうだけ。蝶々の歌の中では、お花たちが蝶々を奪い合うようにしていたけれど…蜂の歌は、単にアタシたちに受粉してもらいだけって気がしてしまう。
失礼しちゃうわよね。
ビッグママはほっそりして綺麗だけど、娘のアタシたちはずんぐりむっくりしてるから、仕方がないのかなって思うこともある。
「ん?やだ、このあたり、変な匂いが…」
なんの匂いだろう。
「あ!」
悪しきものは土壌を汚染させて、アタシたちの大事な植物を枯らしていくから大嫌い。
大嫌いだけど。
アタシにはあの子に、何もしてあげることができない。一人じゃ何もしてあげられない。
みんながいてくれれば、オオスズメバチだって倒せるくらい強いのに。
でも一人じゃ。
きゃっ。
こわい!どうしよう。こっちに来た!
おねえちゃん!
ママ!
続きます