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前回のお話
医療機関がすくないポ村。
ポ村の村長は、都会の薬局で働くイチイさんをポ村まで連れてきていました。
イチイさんと村長は、マメチュー先生が患者対応をしている姿を店外から眺めている。
一方薬局の休憩室で寛いでいたまゆさんUSAさんは、村長にばれたくないため、こたつの中に潜伏しているようです。
”あっつ。もう出たい。村長まだいる?”
”一体村長ったらあそこで何してるわけ?”
”USA、村長が誰と一緒にいるか見てみてよ”
”だめよ、これ以上覗いたらバレちゃう。でも声からすると若い男の人っぽいよね”
薬局では医師に処方された薬を指示通り飲んでいなかった患者、フェネさんがマメチュー先生と話し込んでいます。
「飲まない薬を貰ってももったいないだけだし。だけどこんなに長い間飲んでいなかったなんて、今更くまじろ先生には」

「くまじろ先生そんなこと言わないですよ」
「言うわよぉ。子供っぽいもの、あの先生。こないだだってトビーくんとケンカしてたわよ?オブラートに包まない言い方もするし」

「確かに。それはそうかも。ウフフ。でも心配はすると思います」
「心配、そうよね。先生が私のために、考えて出してくれたお薬ですものね」

「マメチュー先生この薬、本当に飲まなきゃいけない薬?本当は飲まなきゃいけない薬?」
「え?」
”ああ、そうか”
矛盾する二つの感情。
沢山の薬を飲む事で副作用が出るのではという心配。
飲まない事で症状が悪化するのではという心配。
その相反する気持ち。
それはおそらく誰にでもある感情。
「最終目的は血圧を下げることで心筋梗塞や、脳梗塞、脳出血等の重大な病気を予防することです。なので薬を飲まなくても目標の血圧をコントロール出来ているなら、そのリスクは減らせると思います」

せっかく薬局まで来た村長ですが、マメチュー先生にはあとで改めて挨拶することにしたようです。
ガタッゴトゴト。
「ん?」
薬局の休憩所の方から何やら物音がした気がします。

……。
”気のせいですかね。さて、あの方たちへの指導も次回にして貰いましょう。でも事前に伝えておくと、逃げられてしまいそうです”
……。
”いない?村長もういない?”
……。
こたつの中からヒョコヒョコ出てくる、まゆさんとUSAさん。

「しかしずい分、長話してたわね。何話してるのか聞こえなかったけど」
「その前に水分!のど乾いたっ」
「あら?でも…なんか最近現れたカゲのせいで、心がくさくさしてたんだけど、水分と一緒に嫌な感情が流れ出たみたい」
「いっつも無駄に元気なくせに、カゲにはすぐ影響されるよね、USAって」
カゲはポ村だけでなく、みんなの心の中にもいる気がします。
そして、カゲに心を操られ、自分を疑い人も疑ってしまう。
考え方が頑なになり、全てが億劫になり、人のアドバイスも聞かなくなる。
それでもそんな彼らの心を解きほぐして、治療のため薬を飲んでもらわなければならない。
なかなか難しいことだけれど…
続きます