マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

自己判断による服薬拒否 その7

⚫︎本物語を最初からご覧になりたい方はこちら

⚫︎物語の概要をご覧になりたい方はこちら

 

前回のお話

医療機関がすくないポ村。

ポ村の村長は、都会の薬局で働くイチイさんをポ村まで連れてきていました。

イチイさんと村長は、マメチュー先生が患者対応をしている姿を店外から眺めている。

一方薬局の休憩室で寛いでいたまゆさんUSAさんは、村長にばれたくないため、こたつの中に潜伏しているようです。

 

”あっつ。もう出たい。村長まだいる?”

”一体村長ったらあそこで何してるわけ?”

 

”USA、村長が誰と一緒にいるか見てみてよ”

”だめよ、これ以上覗いたらバレちゃう。でも声からすると若い男の人っぽいよね”

 

薬局では医師に処方された薬を指示通り飲んでいなかった患者、フェネさんがマメチュー先生と話し込んでいます。

「飲まない薬を貰ってももったいないだけだし。だけどこんなに長い間飲んでいなかったなんて、今更くまじろ先生には」

「くまじろ先生そんなこと言わないですよ」

「言うわよぉ。子供っぽいもの、あの先生。こないだだってトビーくんとケンカしてたわよ?オブラートに包まない言い方もするし」

「確かに。それはそうかも。ウフフ。でも心配はすると思います」

「心配、そうよね。先生が私のために、考えて出してくれたお薬ですものね」

「マメチュー先生この薬、本当に飲まなきゃいけない薬?本当は飲まなきゃいけない薬?」

「え?」

 

”ああ、そうか”

 

矛盾する二つの感情。

 

沢山の薬を飲む事で副作用が出るのではという心配。

飲まない事で症状が悪化するのではという心配。

 

その相反する気持ち。

それはおそらく誰にでもある感情。

 

「最終目的は血圧を下げることで心筋梗塞や、脳梗塞、脳出血等の重大な病気を予防することです。なので薬を飲まなくても目標の血圧をコントロール出来ているなら、そのリスクは減らせると思います」

せっかく薬局まで来た村長ですが、マメチュー先生にはあとで改めて挨拶することにしたようです。

 

ガタッゴトゴト。

 

「ん?」

 

薬局の休憩所の方から何やら物音がした気がします。

……。

 

”気のせいですかね。さて、あの方たちへの指導も次回にして貰いましょう。でも事前に伝えておくと、逃げられてしまいそうです”

……。

 

”いない?村長もういない?”

 

……。

 

こたつの中からヒョコヒョコ出てくる、まゆさんとUSAさん。

「しかしずい分、長話してたわね。何話してるのか聞こえなかったけど」

「その前に水分!のど乾いたっ」

 

「あら?でも…なんか最近現れたカゲのせいで、心がくさくさしてたんだけど、水分と一緒に嫌な感情が流れ出たみたい」
「いっつも無駄に元気なくせに、カゲにはすぐ影響されるよね、USAって」
 
 

カゲはポ村だけでなく、みんなの心の中にもいる気がします。
そして、カゲに心を操られ、自分を疑い人も疑ってしまう。

考え方が頑なになり、全てが億劫になり、人のアドバイスも聞かなくなる。
それでもそんな彼らの心を解きほぐして、治療のため薬を飲んでもらわなければならない。

 

なかなか難しいことだけれど…
 
続きます