「パゴはさ、緩衝材つぶすの好き?」
「え?」
「好き?」
「そうだねぇ。パチンて思い切りつぶせたら、気持ちいいよね」
「わかる。まぁ、めんどくさいからあんまりやんないけど」
「ねぇ、フリゼちゃん。そんなことより早く行った方がいいよ。歯医者さん」
「ん~」
「ひょっとしてまた、めんどくさがってる?」
さっきから歯医者行きを勧めてくるのは、同い年のいとこ、パゴロウ。
内弁慶で外ではおどおどおとなしいくせに、あたしにはちょっぴり口うるさい。
上手く聞いているふりを身に着けなければならないんだけど、どうしても全く聞いていない感が出てしまう。
「歯茎が腫れてるんでしょう?」
「まぁね」
たまに腫れる歯茎。
いつも勝手に治る。
だから医者にはいちいち行かない。
行かないって決めてるんだけど、今回はちょっとだけ痛みがひどい。
「昔12歳くらいだったかな?初めて歯茎が腫れてその時はさ”なに?急に歯茎っ!”ってイライラしちゃった。だってわけもわからず腫れて痛かったから。そのころ腫れるなんて言ったら、転んで暴れてぶつけて、たんこぶ作った時くらいだったし」
「12歳か。細菌が入り込んだのかな。親知らずとかは、早くても10代後半から生えるっていうし」
「細菌。悪趣味な所に出没するよね。そん時さ、こんもりと山のようになって腫れちゃって」
「山…」
「でもその時は細菌が原因じゃなかったんだよね」
「え?なんだったの?」
「腫れすぎちゃって口を閉じれ無くなってさ。ごはん何も食べられなかった」
「で、原因は?」
「…本人の自覚がないまま進行する病気があるじゃない?痛み・違和感を感じないから悪化していっちゃう病気」
「うん?」
「一方で”もういいよ”ってくらい必要以上に身体に痛みを与えてくるの場合があるのはなんで?」
「それは…身体を守るための防衛本能だっていわれてるけど」
「じゃあなんで、気付くのが手遅れになっちゃう病気があるの?防衛本能っていうけどさ、痛すぎてご飯が食べられないのも体に良くないよね?なんでそんな痛み与えるんだろう。それに痛いとあたしなんかは、気になってさ。いじり倒したくなって、悪化させちゃうし。猫とかなんてそうじゃない?あの子たち、爪で傷を引っ掻いて悪化させてるでしょ?」
「ええ?それは…よくわからないけど」
続きます