前回、目と鼻が効かなくなってしまった、悲しい両親の話しをしました。
今回は、舌が効かなくなってしまった母の悲しい話です。
美味しそうにお餅を見つめながら、頬張る母。
母は、シソとごまの違いが分からない様子。
味に関しても、見た目に関しても。
シソが餅に細かく刻まれて入ってたので、見た目は少しごまに似ていました。
間違えても仕方ないのです。
ヨモギ餅のように餅の部分を緑色にしてくれていたら、うちの母だって
“ごまではない”
それぐらいは分かったかもしれない…
でも多少毒が混入されている餅を食べても、気付かずに美味しく食べているかもしれない…
そういえば、賞味期限がとっくに切れているヤクルトを飲んだ結果、食中毒になり一週間ほど苦しんでいた事があったかもしれない。
そんな母が作るほうれん草の炒め物。
採れたてのほうれん草をそのままフライパンに、放り込んだみたいな味がします。
「何よ、食べないの」
「だってこのほうれん草、土の味がする」
「えぇ?しないわよぉ?」
母は見えていないので、土をしっかり落とせていないことにも気付かないし、味オンチなので土の味も分からない。
そしてさらにそんな母が、まな板で柿を切って出してくれました。
「何よぉ、食べないの?」
「うん」
魚を切った後、まな板をしっかり洗えていないのか、柿に生魚の味がしっかりうつってしまっていました。
母の代わりにポいもがご飯を作ることもあるのですが、基本気に入ってもらえません。
味の好みが違うようです。
何故なのか…………
母は、出汁の味が嫌い。
なので出汁を料理に入れてくれません。
カボチャの煮物も、いつも醤油でびちゃびちゃになったものが食卓に出てくる。
子供の頃
“失敗ばっかりしてんなぁ”
と思っていたのですが、どうやらわざと、醤油びちゃびちゃにしていたようです。
なんと、その味が好きなんだということです。
さらに
“また失敗?!”
と思っていたマル焦げのハムも成功なんだそうです。
実家では冬になるとおでんがよく、食卓にのぼります。
もちろんNO出汁!
でも美味しくなると聞いたポいもは、おでんに昆布茶を入れた事がありました。
母、怒りました。
味オンチのクセに昆布茶の事は気付く母。
“お父やんも美味しいって言ってたのにな”
それでもポいもめげずに……
やっぱり昆布茶混入バレました。
なんなのでしょう。
急に舌、敏感…
味オンチなの?
それとも
単なる好みの違い?
聞こうと思わなかったので、聞いていませんが
“土味のほうれん草”と
“生魚味の柿”は、
母の好みの味だったのかもしれません。