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前回のお話
ポ村唯一の内科医くまじろ先生。
彼はどうやら食べ過ぎが原因で、コレステロール値を下げるお薬を服用しているようです。
そのため生活習慣を改善するよう指導されているのですが、積極的に行う様子がないみたい。
突然の異変、そして小さな一歩
ポ村唯一の医師、くまじろ先生はどうやら食べ過ぎが原因で、コレステロール値を下げるお薬を服用しているようです。そのため生活習慣を改善するよう指導されているのですが、積極的に行う様子がないみたい。
「休みの日に体操クラブ?だめだめ、無理無理!」
「なんで無理なんですか?」
USAさんの問いに、くまじろ先生はため息をついています。
「休みの日はゴロゴロして過ごすのが楽しみなのに、体操しに行くなんて…。今度はストレスで病気になっちゃうよ。僕の唯一の楽しみとる気?」
「唯一って、もっとまともな楽しみ増やしましょうよ!あ、今度エド・シーランのライブ一緒に行きます?」
「行かないよ。休みの日は朝から肉食べて、揚げ物食べて、ラーメン食べて、それからドーナツ食べて日本酒飲むんだから」
「あたしも日本酒好き!じゃないんですよ!なんですか、その食生活は!?お野菜は?にんじん美味しいですよ!」
「野菜?肉と一緒だったらまぁ、食べることもあるけど。そもそもにんじんってさ、生の食感とか変じゃない?枝みたいでさ」
「枝!?食べたことないから、知りませんよ。食感いいじゃないですか。サラダ美味しいですよ。バーニャカウダなんて最高じゃないですか!」
「休みの日はね、他にテレビ見て、マンガ読んで、歴史小説読んで、アプリゲームやるから、けっこう忙しいんだ」
「何だかなまけた学生の、春休みみたい」 USAさんの言葉に、くまじろ先生は少しだけ顔を赤らめています。
「大人になったって、春休みは欲しいのさ。好きな物ばっかり食べたいのさ。なんで食べちゃダメなのさ!」
「医師とは思えぬ物言い…」
「はぁ、いつもは患者さんに言う側なんだけどね。人にはさ“甘えるな”って思うのに、自分は出来ないんだよ。困ったよね。これで死んだら笑われちゃうよね…」
その時、くまじろ先生が突然、小さく呻き、胸のあたりをそっと押さえる。
「え?くまじろ先生!?」USAさんが慌てて駆け寄りました。
そしてマメチュー先生は静かにくまじろ先生の脈を測る。

「ごめんごめん大丈夫」
「くまじろ先生が病気になっても笑ったりなんてしません。みんな心配していますし、死んだら悲しいですよ」
マメチュー先生の優しい言葉が、くまじろ先生の心に染み渡っているようです。
「そうですよ。ポ村のみんなが頼りにしているお医者さまですもの」
「そうか。そうなのかなぁ…」 くまじろ先生は少し顔色を戻したが、まだどこか虚ろな目をしています。
「いきなり食生活は変えられないから、今の状態をキープってことでもいいかな?」
「だめですっ」 USAさんが食い気味に言い放つ。
「そうだ!あたしが美味しいにんじん料理を作ってあげますよ!くまじろ先生、好みの味なら食べられますよね?」
その言葉に、くまじろ先生は戸惑いつつも、少しだけ目を見開く。
「ありがとう。でもどうやっても食べられなかったら…ごめんね」
「頑張ります!」
「お肉がお好きなら、人参と豚肉の甘辛炒めなどはいかがですか?生でボリボリ食べるのもいいですが、実は生だとほとんど栄養が吸収できないのですよ」

マメチュー先生がそんなことを言っています。
「えーそうだったんですか!?おいしいのに!」
「油で調理するとβ-カロテンの吸収率もアップするんです」
「USAさん、勉強になったね。生より油だよ」
「いや、くまじろ先生が勉強するんです!」
「一応知ってたけどね…」
「ええ?ほんとですか?」 USAさんが疑いの目を向ける。
「でも、マメチュー先生、USAさん、色々ありがとうです。改善の兆しが見えてきた気がするよ。でも…ちょっとさ。神さまに願うことがあるんだよね」
「え?なんです?」
「ううん、なんでもない。笑われちゃうから…」 くまじろ先生は、USAさんから顔をそむけ、小さく呟く。
「だから笑いませんって」
「神さまお願いします」

「炭水化物や甘いもの・揚げ物が一番身体に良いものになりますように。運動しなくても不健康な身体になりませんように…ってね」
「笑うどころがそれすっごく分かります!」
「でしょ?」
USAさんの作る人参料理。
くまじろ先生の人生に小さな変化をもたらすかもしれませんね。不摂生医師の、長い改善への道が、始まろうとしています。