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前回のお話
三すくみの皆さんは午前中、陽射しを浴びて体温を上げないと活動しにくい性質を持っています。そのため、お三方は日向ぼっこをしていたのですが、陽射しが徐々に弱まり、風も出てきてしまいました。乾燥・寒さで身体が動かなくなっていたナメ江さんは、飛んできた布団の下敷きとなり、固まってしまう。
「ナメ江さん、大丈夫かい?」
布団が背中に乗っかっただけなのですが、ナメ江さんは背中を痛がっている様子。
肌が乾燥し、背中の皮膚に炎症が出来ているようです。
「待ってて下サイ、ナメ江さん。ガマの油塗りまショウ」
「ウウ、お願い。ガマの…油…」
フロ次さんが、肌身離さず置いておいたガマの油。
「アララ?ココに置イテあったガマの油が無クナッテル?」
「エ!?」
そんなことを聞いてしまったナメ江さん。一気に元気が無くなっていきます。
「フウウ…」
ナメ江さんの背中は赤くなり、痛痒そう。
「困ったな。マメチュー先生の所に、行ッタ方がいいのでしょうか。ナメ江さん、待てマスカ?」
「ウウ、ウウウウ」
「背中が炎症している?酒を吹きかけておけば治るさ。むくっと皮膚も膨らんで元通りじゃ」
パカじいは、アルコールを身体に吹きかけようとしています。
「おや?この匂い」
パカじいは壺を覗き込もうとしています。
「パカじい、ソレハ」
「良く見たら油って書いてあるな。なんだ、酒じゃないのか。申し訳ない。これが”ガマの油”ってやつじゃな。黒っぽい壺を見るとつい、酒が入っていると思い込んでしまうみたいだ。酒好きもほどほどにせんとな」
パカじいが、お酒だと思っていたのがガマの油が入っている壺でした。
「ナメ江さん、ガマの油がありまシタヨ」
「フフ、安心シタワ」
ほっとした様子のナメ江さん。ガマの油、見つかって良かったです。
“フロ次さん解説”
ナメ江さんに塗っていたガマの油。
これは落語にもありますよね。
四六のガマという、前足が四本指、後ろ足が六本指ある蛙。自分を美形だと思っていた四六のガマは、鏡を見てあまりにも醜悪な自分の姿に驚き脂汗を流す。その脂汗を採取し、数日間煮詰めたもの、それがガマの油と言われています。
そんな四六のガマですが、顔や背中ならまだしも、手足の指は鏡を見なくても目に入ると思うんですけど、気付かなかったのでしょうか。
足がやけに多い生物を見るのは、確かに厳しいものがあります。けど指が1~2本、他の生物と違うのってそんなに怖いですかね?
気にしなくてもいいのにと思う所ですが、感じ方は人それぞれ。
自分の外見にショックを受けた四六のガマのおかげで、貴重な薬がとれました。
筑波山の名物にもガマの油というものが実際にあります。
その成分はもちろん四六のガマの脂汗ではなく、主な成分はワセリンで、あかぎれ・しもやけ・切り傷等に効くとのこと。
凍えるような時期、寒さや乾燥にはお気をつけください。