マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

自己判断による服薬拒否 その1 

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ポ村が冷たい空気に覆われた、寒い寒い冬のお話。

「マメチュー先生、この間シジミチョウの話を、都会に住む孫にしてたらね”シジミチョウってなに?”って聞かれちゃって。シジミチョウは、都会でもあちこちで飛んでいるのよ。なのになんで知らないのかしら?きっと今どきの子は、虫になんて興味ないのね。虫を見かけると季節を感じることだって出来るのに」

「そうですね。昆虫をはじめ鳥や植物は、季節の変化を感じられていいですよね。まだ暑かったり寒かったりしても、もうすぐ季節が変わるんだと気づかせてくれる存在ですから」

 

「そうよねぇ。最初、シジミチョウの言い方が今風に変わったのかしらって思っちゃったもの。みんな当たり前に知っているものだと思ったから」

 

「ふふ、そうなんですね。シジミチョウの話、私も人としたことがないかもしれません。当たり前すぎてしたことのない話題って、たくさんあるんでしょうね。身近な昆虫、植物には危険な場合もありますから、お孫さんもある程度は知っておいた方がいいでしょう。今度お話してあげてください」

 

「そうね、私が教えてあげればいいのよね。おばあちゃんの知恵袋ってやつよね。あ!やだ!マメチュー先生、今からお仕事じゃない?ごめんなさい。引き止めちゃって」

 

「いいえ、大丈夫ですよ。気にして頂いてありがとうございます。では、失礼いたします」

 

 

”マメチュー先生はいつも親切にお話を聞いてくれるわ。だから信頼して甘えて、つい何でも話しちゃう。優しくて素敵な先生…このあいだカゲが現れたばかりだったから、ついお話して癒されたくなっちゃうのよね”

 

 

ポ村入り口。

村長はポ村の外から来たお客さまを、案内していました。

 

「それでですね、ポ村には医療機関が内科と調剤薬局しかないんですよ。日本には医療機関自体がない地域もありますので、まだいい方だと思いますけれど」

「なるほど」

 

「医療機関がない場所、少ない場所では、自身で健康管理をしっかりしないといけない、そう思っています」

「そうですね。医療機関の有無に関わらず、自身の健康に関しては気を付けて欲しいですけど」

「本当ですね。では、これからポ村のくまじろ先生とマメチュー先生の所をご案内します」

 

ポ村には内科と薬局しかないため、病気をしないようセルフメディケーションを推進している村長。

他の医療機関に行くには、ポ村から出ているバスに乗る必要があるのです。

 

長く生きていると、健康の大切さは身に染みて感じるもののようです。

「空気がきれいで、自然もたくさんあって…ここで暮らしていたら、病も近づかなさそうですね」

「はい。自慢の村です」

 

そんな二人のことを井戸端会議をしていたポ村の高齢者たちは、興味深げに眺めている。

「村長、お客さま?」

「みなさん、こんにちは。こちらは都会からお越しいただいた、薬剤師のイチイさんです。薬剤師会の方に紹介して頂きまして…」

「こんにちは」

「まぁこんな遠いところまで」

 

村長が連れている客人は、都会で調剤薬局を複数経営する社長の息子”イチイ”さん。

これはそんなイチイさんが初めて、ポ村を訪れた時のお話です。

続きます