マメチュー先生の調剤薬局

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ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

小料理屋三すくみ その2

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前回のお話

クリスマスの2次会をするため、小料理屋三すくみにおとずれたまゆさんとUSAさん。体調を崩していたUSAさんのためにハブ酒を用意していた、三すくみの皆さんですが、気味悪がられてしまいました。

 

結局選ばれたお酒はまゆさんはヤマモモ酒、USAさんは純米酒。

二人はお酒を飲みながら、会話を楽しんでいます。

 

 

「USAはさ、最後の晩餐何にする?食べなれたものにする?それとも大枚はたいて贅を極める?」

「最後に食べるもの?食べ放題じゃダメ?色々食べたいもの」

「話をつまんなくするなよ」

 

「ねぇ。それって地球が最後の日なの?それともあたしだけが最後を迎えるの?大枚はたくってことは、お店やってるんでしょ?ビュッフェ行ってもいいじゃん」

「そういう話をしてんじゃないんだけど」

 

「設定が気になるの~!何で最後なの?病気だったら食欲ないだろうからさ、話変わってくるもの」

「あのさ、病死の間際に何を食べたいかなんて、聞くわけないじゃん。もう死ぬってのに飯がどうとか、食い意地張り過ぎでしょーよ」

 

「じゃあさ、あたしの命を捧げることで、世界が救えるっていう設定なら、あたしだけが最後の晩餐を迎えるわけでしょ?そしたらやっぱりビュッフェに行っちゃうと思うんだけどなぁ」

「病死だろうが何だろうが食い意地がすごい。命を捧げる直前なら、少しはナーバスになれよ。沢山食おうとすな。今まで経験してきた出来事に浸りながら、ゆっくり思い出の品を食べるんじゃないの?ふつうは」

 

「でもさぁ地球が滅亡する日とかだったら、働いている人もさすがにいないわよね。意味ないものね。その時にお腹が空いたらさ。虫とか野草とかしか食べるものなさそうじゃない?切羽詰まった時ならゲテモノ系も食べちゃうのかしら?」

「いや世界がそんな状況なら、最後に無理して腹を膨らまさなくてもいいじゃん。大人しく死を待ってればいい。ってか何でゲテモノを食う話になってるわけ?」

 

「だけど地球滅亡とかじゃなくて無人島で遭難したとかなら、生きる希望があるだろうから、ゲテモノも食べる気になるかもね」

「無人島?最後の晩餐の話はどこ行った…そもそもUSAは、虫でも魚でも殺生なんてできるの?活き造りとか、見んのも苦手でしょ?」

 

「問題はそこよね。とはいえ想像でしかないけど、究極の状態になったら生きるために本能が暴走して、なんでもしてしまいそうな気もする」

「そりゃね、殺すのがかわいそうだから食べないなんて言っている生物は、一部の人間くらいだろうよ。全ての生命体が同じ思想を持ったら、みんな”かわいそうだー”って言って何にも食べることが出来ずに、餓死してサクっと全滅だよ」

 

「そういえばお腹を空かせた、貧しい老人の姿に化けた帝釈天のためにさ。ごはんをとってきてあげることが出来なかったウサギの話、あるじゃない?」

「あるね」

 

「それでそのウサギは無力な自分を嘆いて、自ら火の中に飛び込んで自分を食べさせようとするっていう」

「そんな慈悲深いウサギの行動を後世に伝えるために、ウサギを月へと昇らせたってやつね」

 

「あたし、あれこわくてさー。自分を犠牲にしてでも人のために尽くすって、すごく大切なことだと思うわよ?だけど他にいい例え話なかったものなのかしら?アンパンマンくらいに留めてほしいわ。世界を救うためならまだしも…いや、一人の老人の命を軽く見てるわけじゃなくてね。けどさぁ、お腹を空かせた老人を助けるためにつって、命投げ出されちゃってもねぇ?」

「結局老人が帝釈天だったからよかったものの、もしそうじゃなかったらあいつ激ヤバウサギだよ。やりすぎ行為、めっちゃ引く。だいたいあの身投げウサギを、食べられる神経の人っているのかね?無駄死ににさせないためにもっつって、泣きながら食べなきゃいけないのも結構地獄だし。それにそこまでウサギにさせた解消なしの老人も悪いよ。飯くらい自分でなんとかしなくちゃ」
 
「それ!そうよね。今のうちにゲテモノと呼ばれるジャンルの食材にも、あたしたちだって慣れておかなくっちゃ!いざという時のために!」
「はぁ?USAって考え方が柔軟だよね。まぁ育った環境次第で食への印象は変わるのは確か。日本人だって海外の人が敬遠する、海苔とかタコとか食べるしね」
 

 

「よし!何事も挑戦よ!フロ次さん、ハブ酒持ってきてー!」
「え?ハ、ハイ!」

 

「ハブ酒かぁ」
「飲む時はまぁ、ニョロっとした本体が入ってないから、そこまで躊躇しなくていいかも」

 

「じゃあ、いただきまーす」
「お味はドウデスカ?」

 

コクリ…

 

「ん!これおいしいっ。はちみつが入ってて飲みやすくなってるのね」
「そうなんだ。…うげっ。アルコール強っ」

 

「そうかしら?だいぶまろやかよ、これ」
「じゃあ、USAにあげる。よしっ次の酒が今年ラストっ、何飲もうかなー」

 

「あ、最後の晩餐は、ぬか漬けね。そんで合わせるお酒は日本酒♪」
「USAは人類滅亡の日が近づいても、ちゃっかり生き残ってそう」

 

「まゆちゃんって、案外一番に死んじゃいそうよね」
「うん、そう思う」

 

こうしてくだらない会話をしながら、今年のクリスマスもしれっと終わっていきました。