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前回のお話
クリスマスの2次会をするため、小料理屋三すくみにおとずれたまゆさんとUSAさん。体調を崩していたUSAさんのためにハブ酒を用意していた、三すくみの皆さんですが、気味悪がられてしまいました。
結局選ばれたお酒はまゆさんはヤマモモ酒、USAさんは純米酒。
二人はお酒を飲みながら、会話を楽しんでいます。
「USAはさ、最後の晩餐何にする?食べなれたものにする?それとも大枚はたいて贅を極める?」
「最後に食べるもの?食べ放題じゃダメ?色々食べたいもの」
「話をつまんなくするなよ」
「ねぇ。それって地球が最後の日なの?それともあたしだけが最後を迎えるの?大枚はたくってことは、お店やってるんでしょ?ビュッフェ行ってもいいじゃん」
「そういう話をしてんじゃないんだけど」
「設定が気になるの~!何で最後なの?病気だったら食欲ないだろうからさ、話変わってくるもの」
「あのさ、病死の間際に何を食べたいかなんて、聞くわけないじゃん。もう死ぬってのに飯がどうとか、食い意地張り過ぎでしょーよ」
「じゃあさ、あたしの命を捧げることで、世界が救えるっていう設定なら、あたしだけが最後の晩餐を迎えるわけでしょ?そしたらやっぱりビュッフェに行っちゃうと思うんだけどなぁ」
「病死だろうが何だろうが食い意地がすごい。命を捧げる直前なら、少しはナーバスになれよ。沢山食おうとすな。今まで経験してきた出来事に浸りながら、ゆっくり思い出の品を食べるんじゃないの?ふつうは」
「でもさぁ地球が滅亡する日とかだったら、働いている人もさすがにいないわよね。意味ないものね。その時にお腹が空いたらさ。虫とか野草とかしか食べるものなさそうじゃない?切羽詰まった時ならゲテモノ系も食べちゃうのかしら?」
「いや世界がそんな状況なら、最後に無理して腹を膨らまさなくてもいいじゃん。大人しく死を待ってればいい。ってか何でゲテモノを食う話になってるわけ?」
「だけど地球滅亡とかじゃなくて無人島で遭難したとかなら、生きる希望があるだろうから、ゲテモノも食べる気になるかもね」
「無人島?最後の晩餐の話はどこ行った…そもそもUSAは、虫でも魚でも殺生なんてできるの?活き造りとか、見んのも苦手でしょ?」
「問題はそこよね。とはいえ想像でしかないけど、究極の状態になったら生きるために本能が暴走して、なんでもしてしまいそうな気もする」
「そりゃね、殺すのがかわいそうだから食べないなんて言っている生物は、一部の人間くらいだろうよ。全ての生命体が同じ思想を持ったら、みんな”かわいそうだー”って言って何にも食べることが出来ずに、餓死してサクっと全滅だよ」
「そういえばお腹を空かせた、貧しい老人の姿に化けた帝釈天のためにさ。ごはんをとってきてあげることが出来なかったウサギの話、あるじゃない?」
「あるね」
「それでそのウサギは無力な自分を嘆いて、自ら火の中に飛び込んで自分を食べさせようとするっていう」
「そんな慈悲深いウサギの行動を後世に伝えるために、ウサギを月へと昇らせたってやつね」
「あたし、あれこわくてさー。自分を犠牲にしてでも人のために尽くすって、すごく大切なことだと思うわよ?だけど他にいい例え話なかったものなのかしら?アンパンマンくらいに留めてほしいわ。世界を救うためならまだしも…いや、一人の老人の命を軽く見てるわけじゃなくてね。けどさぁ、お腹を空かせた老人を助けるためにつって、命投げ出されちゃってもねぇ?」
「結局老人が帝釈天だったからよかったものの、もしそうじゃなかったらあいつ激ヤバウサギだよ。やりすぎ行為、めっちゃ引く。だいたいあの身投げウサギを、食べられる神経の人っているのかね?無駄死ににさせないためにもっつって、泣きながら食べなきゃいけないのも結構地獄だし。それにそこまでウサギにさせた解消なしの老人も悪いよ。飯くらい自分でなんとかしなくちゃ」
「それ!そうよね。今のうちにゲテモノと呼ばれるジャンルの食材にも、あたしたちだって慣れておかなくっちゃ!いざという時のために!」
「はぁ?USAって考え方が柔軟だよね。まぁ育った環境次第で食への印象は変わるのは確か。日本人だって海外の人が敬遠する、海苔とかタコとか食べるしね」
「よし!何事も挑戦よ!フロ次さん、ハブ酒持ってきてー!」
「え?ハ、ハイ!」
「ハブ酒かぁ」
「飲む時はまぁ、ニョロっとした本体が入ってないから、そこまで躊躇しなくていいかも」
「じゃあ、いただきまーす」
「お味はドウデスカ?」
コクリ…
「ん!これおいしいっ。はちみつが入ってて飲みやすくなってるのね」
「そうなんだ。…うげっ。アルコール強っ」
「そうかしら?だいぶまろやかよ、これ」
「じゃあ、USAにあげる。よしっ次の酒が今年ラストっ、何飲もうかなー」
「あ、最後の晩餐は、ぬか漬けね。そんで合わせるお酒は日本酒♪」
「USAは人類滅亡の日が近づいても、ちゃっかり生き残ってそう」
「まゆちゃんって、案外一番に死んじゃいそうよね」
「うん、そう思う」
こうしてくだらない会話をしながら、今年のクリスマスもしれっと終わっていきました。