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ここはポ村。
現在、冬を迎えています。
トビーくんと、お友だちのペンネくん。
冬の早朝から、お外で元気に遊んでいます。
朝いちばん、まだ誰も歩いていない場所の霜柱を踏んであるくのが、冬の楽しみ。
「あらあら、おはよう」
まだ眠っていたところに、突然声を掛けられてびっくりしつつも、きちんと挨拶を返してくれました。
ハイエ美容室。
「あっ、やだ。ハイエさん、こっち来る」
人見知りの妖精の少女、シルプさんは今日も片思い中の彼、美容師のハイエさんを見つめていたようです。
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好きな人のことは、何度も何度も出来る限りずっと見つめていたい。
でも家に帰って一人になるとあんなに見つめていたのに、なぜだか好きな人の顔がぼんやりとしてはっきりと思い出せなくなってしまう。
これってなぜなのでしょう。
「ハイエさん観察はもう満足したの?」
「えへへ、また行く」
「こんなに美容院の近くにいたら、ばったり会っちゃうかもよ?緊張しちゃうから会うのは嫌なんじゃないの?」
「大丈夫。お仕事前だもん。いつも通りたばこ吸ってた」
「ハイエさんのこと、詳しいね。私もハイエ通になっちゃう」
「ちょっと、ハイエさんのこと好きにならないでね。お願いね」
「…もっとちゃんとお話しすればいいのに。誰かにとられちゃっても知らないよ?」
「むぅ」
「トビーくん、ペンネ君。おはよう」
「お仕事今日お休み?」
「ううん。これから仕事」
「えー、つまんないー。一緒に遊びたかったのに」
「いっつも仕事してるじゃんっ」
「そっか、そうだね。じゃあ、少しだけ遊ぼっか?」
「うん」
ハイエさんは久しぶりに、みんなで楽しくおさんぽです。
「冬の朝ってさ、寒いけどとっても気持ちがいいよね?」
「ああ…そういえばそうだよね」
子どもたちに言われて、改めて実感するハイエさん。
それほど彼は普段、お仕事ばかりの毎日なのでしょう。
「ねぇねぇ」
「うん。トロッとしていておいしいよね。温泉卵と言いシルプちゃんは、トロっとした食べ物好きなんだね」
冬の冷えた体を温めてくれる葛湯。
葛の根は、風邪薬等の漢方薬にもなります。
葛根湯が有名ですね。
「この間、マメチューに貰ってね。あ四角いさ、シャリシャリっとしたゼリーみたいなのがおいしかった」
「シルプちゃん、マメチュー先生と仲良くなったんだね。いい傾向だ」
「なってないよ。まだ壁作ってるんだ」
「なんで?」
「うふふっ」
どうやら妖精の少女は、優しいマメチュー先生を弄んでいるようです。
自分のことをどこまで本当に心配してくれているのか…
優しくしてくれる大人の本心を試したいのかもしれません。
続きます