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ついつい夜更かししてしまう、学生時代の夏休み。
これはポいもが、高校生だった頃のお話。
夜更かしが好きなのは、ねこさんも同じ。
元々夜行性と言われているねこさん。
人間と暮らしていると、ある程度は人間のライフスタイルに合わせてくれるようになる。
だからなのか、いつもはすでに寝ている夜中も、夏はポいもが寝ないと我が家のねこさん、ぽんちゃんもねんねしません。
それぞれ、夏の夜を満喫中。
「にゃー」
ぽんちゃんになかれるたびに父は都度起きて、窓を開けてあげています。
ぽんちゃん、本当は自分で窓を開けられるのに…
人間やねこさんは元気に活動している夏の夜ですが、意外と夏の虫は夜、静かです。
ゴキ太郎さんのようにカサカサと活動していることはあっても、秋の虫のように夏の虫は、夜中にうるさく鳴くことはありません。
夜中はうるさくしないよう、人間に対して気をつかってくれているみたいです。
さて、ぽんちゃんが遊びに行って、しばらくたった深夜2時過ぎ。
「もうそろそろ寝ようかな?」
ぽんちゃんまだ夜遊び中みたいですが、ポいもは先に眠ることにしました。
ぽんちゃんが帰って来る時は、すでに再び就寝中の父に”にゃあ”とないて帰宅を知らせ。
ちゃんと窓を開けてもらっているので、後のことは父にお任せ。
“そろそろテレビ消そうかな”そんな風に思っていると突然、大きな声で蝉が鳴き始めました。
暗くて昼間より気温が低い夜中に、蝉は鳴かないはずなのですが。
蝉の鳴き方から察するに、どうやらぽんちゃんにいじめられている様子。
かわいそう。
うちのぽんちゃんの意地悪のせいで、蝉が助けを呼んでいる。
助けてあげたい。
でも……深夜に泣いて暴れている蝉、怖い。
”ミーミミミミミミミ!!!!”
うう、どうしよう、助けてあげられない。
とはいえ、凄まじいセミの断末魔を聞きながら眠ることも出来ない。
やっぱり、助けにいこうか…
寝ようと思っていたのに、蝉の苦しむ声を聞いていると目がさえてくる。
普段、人間に気をつかって夜中は静かにしてくれている蝉が、助けを呼んでいるというのに何もしてあげられない。
カラララ。
「ん?」
ポいもがウダウダ悩んでいたその時、父が起きだして蝉を助けに行くため、外に出ていく音が聞こえました。
蝉を放置していたせいで寝ていた父ちゃんを起こしちゃったな、と思いながらも有り難く思うポいも。
”にゃにゃにゃ!なんにゃお前は!これは、ぽんちゃんのにゃ”
ぽんちゃんのやつ、父ちゃんに文句言ってる。
”ぽんちゃん、はなしてあげなさい。もういいから”
”ジジジジッ”
”いやにゃ、ぽんちゃんがつかまえたんにゃ”
父とぽんちゃんの押し問答。
しかし、やがて蝉の苦しそうな喚き声が静かになりました。
どうやら父のおかげで蝉が助かったようです。
ぐしゃ!
・・・。
「にゃ、とうちゃん?」
「…」
「とうちゃん?」
どうしよう。
明日、庭を見れない予感。
そして蝉さん、父ちゃんがごめんなさい。
悪気はなかったのです。