一話目からはこちら
www.mamechu.com
前回のお話
もち三さんは職場から近い、提供の早さが売りの飲食店に ランチをしに来ていました。
13時から会議なので、それまでに会社に戻りたいのですが、その日は初めてみるパートのおばさんが焦りながら仕事をしている。
なかなか注文の品は出てこないは、注文の品を間違えるわで、ひっちゃかめっちゃからしい店内。
40分ほど待たされた時点でもち三さんは、店員さんに“注文の品まだですか“と伝えたところ、帰ってきた返答が“ああ、これ。あるある。分かってる“でした。
悪びれない対応に“すごいな“と思う一方さすがに、大事なランチの時間にこれだけ待たせて平気な人に対し、イラッとしました。
“注文票があったって仕方がない。ある、と分かっているなら品を出してください”
そう思ってしまいます。
忙しいだろうに40分じっと待っていたおじさん、待たされているのに店員に気を遣ってあげていた青年。
そしてまだ、この時間待たされている人はたくさんいる。
いつもだったらすぐ注文の品が出てくるお店に、いつも通りに入ったのであれば、こんなに待たされて戸惑っていることだろう。
みんなの代わりに文句を言えたら、スッキリするだろうな。
初めてみる店員さんだから、手間取っているのかもしれない。
それは仕方ない。
本当にひっちゃかめっちゃかで、パニクっていたんだろう。
でもそれとは別にサービス業であるなら、ランチの時間に大幅に待たせていることを、謝らなければいけないのではないだろうか。
それだけで客の心も落ち着くものなのでは、そんな風に思うのだけれど。
あの店員さんたちは私がじっと注文を待ち続け、一日中店内にいたらいずれ気がついてくれたのだろうか。
日が暮れても待っていたら、さすがに悪いと思うのだろうか。
罪悪感を少しくらいは持って欲しいと思ったもち三さんは、文句を言う代わりに、そんなことを考えていました。
「いや、多分“なんで注文が出てこないって言ってくれなかったの?”そんなことを言い返されて終わるだろうな」
「店員さーん。私40分待っているんですけどぉ」
もやもやしていたもち三さんの頭の中に、そんなことを店員さんに言っている、可愛らしい声が聞こえてきました。
見ると店員さんに言っていたのは、後から入店した綺麗な女性でした。
“なんなのよ。40分たったら苦情言うシステム?“
「まずお客さんを待たせていること、今この店を任されている従業員として、謝った方がいいと思いますよ?」
“何よ。ちゃんと謝っているじゃない“
「“うちの間違いかもしれないけど、あの時ひっちゃかめっちゃかだったから!“
“これならすぐ出来るから“
“え?ああ、これね。あるある“
私がこのお店に入店してからは、待たせているお客さんに対しての謝罪の言葉、一度も聞いていませんけど」
彼女は驚いたことに配達員に対して、優しい青年に対して、そして私に対して言い放った店員の言葉を、一言一句間違えることなく、再現してみせました。
改めて女性を見たもち三さんは“どことなく誰かに似ている顔立ちだな“そんな風に感じていました。
失礼ながら空気も読まずに、女性の顔に見入ってしまう。
「誰だったかな?」
“謝ってない?そうだったかしら?“
「ここの親子丼、あたし好きなんです」
“そ、そうっ“
「美味しいですよね。でもあなたたちが経営しているお店ではない。お金もらって働いている以上、ちゃんと対応しなくちゃ。悪い評判が立って、お店が潰れても、あなたたちは就職し直せばいいけど、お店には多大な迷惑をかける。このお店のファンも悲しむ。それってあなたたちのせいになるんですよ」
“それは…“
「せめて、ごめんなさいはしましょうよ。ね?」
“……“
女性がそういったあと、すぐに彼女の元に注文の品が運ばれてくる。
“お待たせして申し訳ございません。親子丼の小です“
「ありがとうございます。でもあの方。私より先に注文されていたので」
女性はもち三さんの方を、指していました。
幸い、女性と同じ商品を注文していたようでした。
彼女は先ほどもち三さんが、店員さんに言っていたことを覚えていたようです。
もち三さんは、慌てて女性にペコリと頭を下げる。
彼女は満面の笑みを返してくれました。
「やっぱり誰かに似ている」
“誰かに似ている女性の方。ありがとうです。ギリギリ会議に間に合いそうです。感謝です“
そう思いながら、既に13時からの会議の10分前だったので、急いで食事を始めました。
“5分で食べて、走って戻ろう“
一方、女性の方も、もち三さんを見つめていました。
“てんまが住んでいるポ村の人。こんな所で働いているんだ。前に一瞬、ポ村で見かけたなぁ“
彼女はてんまさんの妹で、記憶力のいいしょうまさん。
“ポ村に住んでいる人っておっとりしている人多いよね。そういう雰囲気好き。ありがとうほっこりさせてくれて“
しょうまさんの方も、なぜだかもち三さんを見て感謝していたのでした。
しょうまさんについてはコチラ
www.mamechu.com