マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

ほんとにあったひっちゃかめっちゃかな店 その4

一話目からはこちら
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前回のお話
もち三さんは職場から近い、提供の早さが売りの飲食店に ランチをしに来ていました。

13時から会議なので、それまでに会社に戻りたいのですが、その日は初めてみるパートのおばさんが焦りながら仕事をしている。

なかなか注文の品は出てこないは、注文の品を間違えるわで、ひっちゃかめっちゃからしい店内。

40分ほど待たされた時点でもち三さんは、店員さんに“注文の品まだですか“と伝えたところ、帰ってきた返答が“ああ、これ。あるある。分かってる“でした。

悪びれない対応に“すごいな“と思う一方さすがに、大事なランチの時間にこれだけ待たせて平気な人に対し、イラッとしました。


“注文票があったって仕方がない。ある、と分かっているなら品を出してください”
そう思ってしまいます。


忙しいだろうに40分じっと待っていたおじさん、待たされているのに店員に気を遣ってあげていた青年。


そしてまだ、この時間待たされている人はたくさんいる。


いつもだったらすぐ注文の品が出てくるお店に、いつも通りに入ったのであれば、こんなに待たされて戸惑っていることだろう。


みんなの代わりに文句を言えたら、スッキリするだろうな。


初めてみる店員さんだから、手間取っているのかもしれない。


それは仕方ない。


本当にひっちゃかめっちゃかで、パニクっていたんだろう。


でもそれとは別にサービス業であるなら、ランチの時間に大幅に待たせていることを、謝らなければいけないのではないだろうか。


それだけで客の心も落ち着くものなのでは、そんな風に思うのだけれど。




あの店員さんたちは私がじっと注文を待ち続け、一日中店内にいたらいずれ気がついてくれたのだろうか。


日が暮れても待っていたら、さすがに悪いと思うのだろうか。

終業時間

罪悪感を少しくらいは持って欲しいと思ったもち三さんは、文句を言う代わりに、そんなことを考えていました。


「いや、多分“なんで注文が出てこないって言ってくれなかったの?”そんなことを言い返されて終わるだろうな」


「店員さーん。私40分待っているんですけどぉ」


もやもやしていたもち三さんの頭の中に、そんなことを店員さんに言っている、可愛らしい声が聞こえてきました。



見ると店員さんに言っていたのは、後から入店した綺麗な女性でした。


“なんなのよ。40分たったら苦情言うシステム?“

「まずお客さんを待たせていること、今この店を任されている従業員として、謝った方がいいと思いますよ?」


“何よ。ちゃんと謝っているじゃない“


「“うちの間違いかもしれないけど、あの時ひっちゃかめっちゃかだったから!“

“これならすぐ出来るから“

“え?ああ、これね。あるある“

私がこのお店に入店してからは、待たせているお客さんに対しての謝罪の言葉、一度も聞いていませんけど」


彼女は驚いたことに配達員に対して、優しい青年に対して、そして私に対して言い放った店員の言葉を、一言一句間違えることなく、再現してみせました。


改めて女性を見たもち三さんは“どことなく誰かに似ている顔立ちだな“そんな風に感じていました。


失礼ながら空気も読まずに、女性の顔に見入ってしまう。


「誰だったかな?」


“謝ってない?そうだったかしら?“


「ここの親子丼、あたし好きなんです」


“そ、そうっ“


「美味しいですよね。でもあなたたちが経営しているお店ではない。お金もらって働いている以上、ちゃんと対応しなくちゃ。悪い評判が立って、お店が潰れても、あなたたちは就職し直せばいいけど、お店には多大な迷惑をかける。このお店のファンも悲しむ。それってあなたたちのせいになるんですよ」


“それは…“


「せめて、ごめんなさいはしましょうよ。ね?」


“……“


女性がそういったあと、すぐに彼女の元に注文の品が運ばれてくる。


“お待たせして申し訳ございません。親子丼の小です“


「ありがとうございます。でもあの方。私より先に注文されていたので」


女性はもち三さんの方を、指していました。

幸い、女性と同じ商品を注文していたようでした。


彼女は先ほどもち三さんが、店員さんに言っていたことを覚えていたようです。


もち三さんは、慌てて女性にペコリと頭を下げる。


彼女は満面の笑みを返してくれました。

「やっぱり誰かに似ている」

誰だっけ?

“誰かに似ている女性の方。ありがとうです。ギリギリ会議に間に合いそうです。感謝です“


そう思いながら、既に13時からの会議の10分前だったので、急いで食事を始めました。


“5分で食べて、走って戻ろう“


一方、女性の方も、もち三さんを見つめていました。


“てんまが住んでいるポ村の人。こんな所で働いているんだ。前に一瞬、ポ村で見かけたなぁ“


彼女はてんまさんの妹で、記憶力のいいしょうまさん。


“ポ村に住んでいる人っておっとりしている人多いよね。そういう雰囲気好き。ありがとうほっこりさせてくれて“


しょうまさんの方も、なぜだかもち三さんを見て感謝していたのでした。


しょうまさんについてはコチラ
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