もち三さんは職場から近い常連の飲食店に、ランチをしに来ていました。
13時から会議なので、それまでに会社に戻りたいのですが、その日は初めてみるパートのおばさんが焦りながら仕事をしている。
なかなか注文の品は出てこないは、注文の品を間違えるわで、ひっちゃかめっちゃからしい店内。
「もう30分待ってる。今日はお店選び間違えちゃったな」
いつもなら5分ほどで注文の品を提供してくれる早さが売りのお店で、30分の待ち時間。
現在12時35分。
13時から会議。
余裕を持って職場に戻りたい。
だから今日は、このお店にしたのです。
ここから5、6分で戻れるけれど、食事の時間を考えるとそろそろ注文の品が出てきてくれないと困ります。
「ちょっと!オレもう40分待ってんだけど!!」
もち三さんが、いよいよ焦り始めていた時、近くにいたおじさんがパートの店員さんに、クレームを入れていました。
「あんな風に、言っていいんだ」
忙しそうにしている人に文句を言っても、早く出てくることはない、文句を言うだけ無駄だと思っていたのです。
「よし!私も40分待った時点で店員さんたちに言おう」
10分で食べて早歩きで戻れば、ギリギリだけど会議には間に合う。
ほんとは、自分より20分ほど後から注文した人の品の方が、早く出ていることがすっごく気になっていたのです。
注文がなかなか来ない時は、そういう所によく気がつくもの。
“忘れられているのかも“そんなことも頭をよぎり始めます。
「忙しいなら、後で取りに来るからいいですよ」
焦って自分のことばかり考えている私の耳に、持ち帰りの注文をしているらしき優しい青年の声が聞こえてきました。
私と違って彼は、イライラすることなくそんなことを伝えている。
こういう時、人の本性が出てくるものなのだろう。
“ああ待って、これならすぐ出来るから“
店員は青年に対し、そんなことを言っている。
しかし結局、注文の品がすぐに出来ることはありませんでした。
“おばさん…😞“
優しく対応してくれている青年に対し、なぜだかこちらの方が気にしてしまう。
ようやく準備ができた時には、自分のことのように安心してしまうほどでした。
さて、もち三さんも注文をしてから40分が経過しました。
少しドキドキしながら、店員さんに声をかける。
「あっあの。私が注文している親子丼の小なんですけれど」
“え?ああ、これね。あるある。分かってる。“
驚くことに店員さんは“お待たせしてすいません“ではなくそんな返答をしてきました。
続きます。