前回のお話
ポ村の彼岸花を見に来た、死への憧れを抱く男。
彼岸花には毒があると聞いた。
思わず調べたけれど、ありえないほど大量に摂取しなければ死ぬことはできないらしい。
それでもこの赤い花の色を見ると、鮮やかな血の色に見えてくる。
きっと土の中に埋まっている人間の血の色が、混ざっているんだろう。
彼岸花の赤い色は”血を吸い取った色”そんな迷信があるという。
生首のように花茎だけが伸びている彼岸花。
別名は、死人花、地獄花、幽霊花、毒花等。
不吉なものばかりだ。
人間が勝手なイメージを植え付けたのだ。
人から勝手なことを言われている、そんなとこに親近感を覚えた。
この村に来たホントの目的は”楽に死ねる薬がある”そんな話を聞いたからだった。
それは噂なのか本当なのか。
ネット上に情報が載っているらしいのに、俺には詳しく調べられなかった。
楽に死ねる薬の研究。
都合がいいことに、遺体から摂取したその薬も検出されないという。
”俺にも希望がある”そう思った。
”楽に死ねる薬”最高じゃないか。
他人のために、そんな研究をしている人がポ村にいる、憧れを持った。
今まで、人間に期待したことはない。
自分も人の期待に応えられる人間じゃないし、期待に応えてもらったこともない。
でもなぜか、楽に死ねる薬の研究をしている人には期待をしている。
その人に会いたい。
俺に薬をくれるだろうか。
彼岸花が咲く季節以外は、のんきな空気が漂うこの村にはあまり来たくはなかったのだが、これからはその人を探すためにたびたび訪れることになりそうだ。
そんな俺の前に、白い彼岸花が一輪落ちてきた。
先ほど空を舞っていたカラスが落としたようだ。
白い彼岸花もあるのか。
楽に死ねる薬がもらえる、そんな予兆なのかもしれない。
なぜかこの白い彼岸花のことがすごく気になって、家に帰ってから花ことばを調べてみた。
シロバナマンジュシャゲの花言葉
また会う日まで/思うはあなた一人
「思うは…あなた一人」
思わず目に入った、他の彼岸花の情報を読んでみる。
【由来】
彼岸の時期に開花する・毒があるため食べた後に彼岸にいくことになるから。
しかし、曼殊沙華は古代インドのサンスクリット語で天に咲く花といういいことが起こる兆しなのだという。
球根をすりおろすと貼り薬になるし、アルツハイマーの薬にもなる。
黄色い彼岸花、ショウキズイセンの花言葉
追想/深い思いやり/陽気/元気な心
俺はスマホを見るのをやめ、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
そしてカラスが舞うなか咲いていた、赤い彼岸花を思い出していた。