辺り一面に咲く彼岸花を見てみたい。
この時期、この村は自分にとっては不気味で心地よい村となる。
”彼岸花が見たい”
そんな時は、このポ村という場所に来ることにしている。
ここは、穴場なのだ。
彼岸花を見ていたら、カラスがやってきた。
気味の悪い雰囲気が増してくる。
まるで”死”が近くに存在するようだった。
カラスの黒と、彼岸花の赤のコントラストはとても美しく見えた。
可憐な花は好きじゃない。
可憐な花は、学校の廊下を思い出す。
学校の廊下にいつも活けられていた可憐な花。
その日、なぜか学校に来ていた母親。
なんで来ていたかは知らない。
聞いていないし、向こうも話さなかった。
俺のことについて呼び出されたのだろうか。
可憐な花が見える廊下の片隅で、同級生に馬乗りになって殴られている時、母親と目が合った。
ようはその時、いじめられていたのだ。
殴られている俺は、確実に母親と目が合った。
けれど、母親に見て見ぬふりをされた。
感情を読み取れない目をしていた。
ひょっとしたらあいつもショックだったろうけど、こっちもショック、というかがっかりした。
そのあと、家に帰っても殴られていた時の話を聞かれることもない。
だからこっちも何も話さない。
”見て見ぬふり”
そういう対応をした人間は母親だけじゃなかった。
親も教師も同級生も、みな殴られていることは知っていたけど、誰も何もしなかった。
苦労してまで、人は人を助けることはしない。
彼岸花の下には死体が埋まっている
俺は桜より、彼岸花の方がそんなイメージを持つ。
埋まっている死体への憧れ。
そいつは…
ちゃんと死ねたんだな。
“キャー、キャキャキャ“
子供が楽しそうに村の中を走っていく。
さきほどのカラスを追いかけているようだった。
まだ傷を知らずにのんきに生きている子どもたち。
子どもはまだいい。
これから色々経験するだろう。
だけどいい大人なのに、毎日楽しくて仕方がないという人間をみると自分とは関係ないのにイライラする。
どういう運を身に付ければ、楽しいだけの人生をおくれるのだろうか。
”死を望む人”
それを手助けする人間がいるという。
ネットで調べるとそういうありがたい人間がちょこちょこと存在する。
ただ、手助けしてくれた人間が罰せられてしまう可能性がある。
自分が死ぬ際に、人に迷惑はかけたくない。
彼岸花がそよそよと風に揺れている。
彼岸花の揺れる様は”鮮血が辺りに飛び散っている”そんな風に見えた。
続きます