仕事で失敗したなって日。
そのまま落ち込んで帰宅する。
でも家の中に入ると、そこには誰かが…

月並みな感想だけど、誰かがいることで心が温かくなるのを改めて知った。
「ごめんね。長いこと待ってたよね」
「ま」
こんなに小さな存在でも、そばにいてくれるとすごく心強い。
ポ村に住む不思議な生物、シフォンと暮らすパゴロウさん。
ねこさん等が苦手で家族以外、誰かと暮らすのはシフォンが初めて。
シフォンとの暮らしは色々な発見があるみたいです。
話しかけると言葉の意味はあまり分かっていないみたいだけど、シフォンはいつも何か反応してくれるんだよね。
ヘマをして帰ったって、シフォンの存在がどん底まで落ち込むのを、防いでくれている気がしている。
今まではそんな時。
体調を崩し、熱を出し
たりしていたのに、今はそれもなくなった。
仕事中。
つい出来ない自分と、マメチュー先生やてんまさんと比べてしまう。
だからか、自分って本当に仕事が出来ないダメ人間だと思ってしまっていた。
シフォンに出会ってから、人を癒してくれる薬って僕たちが扱う処方薬だけではないってことを知った気がする。
薬局では処方薬を渡す側だけど、家だとシフォンが僕に薬を与えてくれている。

何をするにも両親に囲まれて、守られていた頃をちょっとだけ思い出す。
「な?」
シフォンはぼんやりと物思いにふけっているパゴロウさんを心配しているようです。
「ごめんね。シフォン。ほったらかしにして。そうだ紅茶飲む?」
「の!」
仕事で失敗してしまった僕を気にして、マメチュー先生がくれた、ジャムと紅茶。
「今から作るから、ジャムを入れて一緒に飲もう」
「ま」
シフォンとのこんなちょっとした時間が癒される。
初めて食べるローズジャム。
いい香り。
リラックスできて、心を落ち着けてくれる効果があるっていってたな。
「ち」
「あつい?ゆっくりのんで。ふーふーできる?」
「ふ?」
「そう。ふーふーして」
「て」
「あ、手をいれちゃだめだよ。やけどしちゃうよ」
「ち」
「そう”ち”だよ」
「こ」
「これ?ジャムのこと?もっといれる?甘酸っぱくて美味しいよね」
「う」
「あ、触ったらダメだって、べたべたになるから」
「べ」
「ああ、フワ毛もさわっちゃだめ」
手やフワ毛を拭いてあげている間、シフォンは鏡を見ている。
鏡をみて、ジャムがついた自分のフワ毛を直している。
てんまさんから聞いた話だけど、鏡像を認識できる生物は知能が高いらしい。
だから毎日、いろんなものを見て知識を身につけているのかもしれない。
翌日、シフォンと朝から散歩に行くことにした。
「シフォンお散歩いこう。
ポ村と言ったらお散歩だよ」
「ま」
シフォンといるとお散歩だっていつもより楽しい。
ポ村では車もあまり走っていないし、人と会うこともあまりないので安心してお散歩できる。
「ぶ、ぶぶ」
「シフォンなんか言った?」
「な?」
気のせいかな。なんか聞こえた気がしたけど。
続きます