朝、目を覚ましたパゴロウさんは、勢いよく起き上がる。
彼は最近、ぼんやりと寝ぼけながら起きることが無くなっていました。
なぜなら…
起きてすぐに、シフォンの存在を確認するようになったから…
「シフォンっ」
「お」
シフォンもパゴロウさんが起きたことに気づいたのか、こちらを見ています。
「あぁ、いた!」
よかった。
パゴロウさんは、マメチュー先生から“密猟者“の話を聞いてから、シフォンに対し過保護になってしまったようです。
ポ村にたくさんいたという、シフォンの一族が姿を現さなくなった理由の一つ。
あくまでも仮説ではあるけれど、シフォンのふわ毛を狙った密猟者がいるかもしれない…
それが本当だったら、とても心配です。
シフォンは好奇心が旺盛だから…
知らない人にも、ちょこちょこ付いていってしまうかもしれない。
っていうか、その前にさ。
「シフォン、また部屋散らかした?」
シフォンの存在を確認後、すぐに気がついたこと。
部屋の中が、とっても散らかっています。
ねこさんとかもお部屋を、散らかすことがあるというけれど。
「いたずらしちゃったの?」
「や」
シフォンはこちらを見ることもなく、一生懸命何かを行っている様子。
「何しているの?」
「か」
よく見るとシフォンは、調味料の蓋を開けようとしていました。
「こらこら、だめだよ」
「まー」
「まーじゃないの」
よく食べてくれるため、シフォンには生野菜を与えていますが、調味料は他の動物同様、体に悪そうなので与えていません。
そしてそんなシフォンは、包丁にも触りたい。
「だめだめ、それは本当にだめ!」
「まっ」
家に置いてあるお薬にも、興味を持ってしまいます。
「それもだめだって」
人間には効く薬も、身体が小さいシフォンには危険です。
夜は、パゴロウさんと一緒のお布団で寝たいシフォン。
「ね」
「あのねシフォン。
ボクも一緒に寝たいけれど、潰しちゃうかもしれないからだめなんだ」
「ね!」
「シフォンはこっちで寝ようね」
クッションの上にタオルを敷いてある場所を、お布団代わりとしてシフォンに使ってもらっています。
「いー!」
注意ばかりしていたせいか、シフォンは拗ねてしまいました。
部屋の隅で分かりやすく、丸まっています。
「シフォン…」
「い…」
「ごめん、嫌な思いさせちゃったね」
シフォンのことをよく見ているから、本当はわかっている。
シフォンは色んなことに、挑戦してみたいんだ。
いたずらをしたいんじゃなくて、ボクがやっているようなことを、シフォン自身もやってみたいんだ。
「い…」
でもなぁ、困ったなぁ。
ボクが使っている包丁とかそういうのは、シフォンに使わせるわけにはいかないし。
シフォンに色々、興味を持たれて困った末…
シフォンのために、お人形さん向けのグッズを購入。
パゴロウさんはこの日以降、ネットでお人形さんグッズを見るようになってしまいました。
夜な夜なネットで、お人形さんグッズを買い漁る男。
「う〜ん、食器棚はいらないか、高いし」
「ほ」
「シフォン、そんなに何でもは、買ってあげられないからね?」
「ま?」
などといっていたパゴロウさんですが…
気がついたらお給料日に、何を買うよりも先にシフォングッズを購入していました。
どうやら彼は、貢ぐタイプの男みたいです。