前回のお話
薬の正しい服薬方法を説明するため、マメチュー先生は小学校にやって来ました。
本日は、先生や保護者向けの説明会です。
説明会の後、保護者の方から風邪の時に服用する、抗生物質についての質問がありました。
「うちの父は抗生物質が好きで、風邪の時はいつもお医者さまに、抗生物質を処方して貰うよう頼んでいるみたいで…
それって正しいことなのでしょうか?」
おそらく風邪の時、抗生物質ですぐに“治った”という経験があったためか、よく効く薬だと思ってしまったようです。
治ったのは単に、自分の免疫力のおかげかもしれないのに…
本来不必要なのにも関わらず、抗生物質を飲み続けてしまうと、副作用を起こしやすくなってしまいます。
【副作用】
胃腸症状、下痢、アナフィラキシーショック、めまいなど…
「うちの父は風邪には抗生物質だと、思い込んでしまっているんですよ。
そんなこと…ないですよね?
父ったら新型コロナウイルスにかかっても、抗生物質を飲めばいいと思っているのかしら?」
新型コロナウイルスに、抗生物質は効きません。
抗生物質は、風邪を退治してくれる万能薬でもありません。
抗生物質はウイルスではなく、細菌をやっつけてくれるお薬なのです。
このまま抗生物質を使用し続けて、ホントに細菌に感染してしまったら…
【細菌に感染してしまった体内】
“今度はこの前のウイルスとは違って、やっつけられそうだぞ。
“ホントだ。サイズが大きい”
“よし!簡単に捕まえられた”
“覚悟しろ、トドメだ!”
“あ、あれ?”
抗生物質で菌を攻撃しても、ビクともしません。
“抗生物質は、菌に有効なんじゃないのか?”
残念ながら不必要に抗生物質を飲み続けたせいで、薬が本当に必要なときに、効きづらくなってしまったようです。
“この抗生物質は、ワタシたち菌にはもう効かないの”
“キミはどんなに注意されても、抗生物質を飲み続けてしまったんだもの”
“そのため、耐性が出来てしまったのさ”
“たばこやお酒、甘い物をやめられないよりは、簡単にやめられると思ったんだけどね”
“まぁ、簡単かどうかなんて人によって異なることだからね。
こればっかりはね…”
言うことを聞かなかったため、抗生物質が効かなくなってしまい、病気が治りづらくなってしまう。
でも正しく服用して貰えるよう、服薬指導するのは薬剤師のお仕事です。
少しずつ患者さんの心を開いて、こちらの話を信用して理解して貰うというのがとても大切なのです。
抗生物質は“生物に抗う”と書きます。
なので生物である細菌に、効果を発揮する。
細菌は単細胞生物。
細胞分裂をして、子孫を作り増えていきます。
一方、ウイルスは非生物とされています。
細胞を持たず、代謝も行いません。
ウイルスの死は“死”と表現せず“失活”と表現します。
細菌より小さいウイルスは、人間だけでは無く“細菌”にまで感染することがあります。
「結局抗生物質は、ウイルスが原因の風邪には効かないということなんですよね?」
「風邪の場合、ほとんどウイルスが原因ですから…
でもきちんと風邪と診断されて良かったです」
熱や咳の症状は風邪以外にも、細菌が原因である場合があります。
自分で判断せずしっかり診断して貰い、処方された薬を正しく使用するのが大切なのです。
「やっぱりそうなんですね。
父に伝えておきます」
「はい、もしまた何かあったら何でも聞いて下さいね」
「マメチュー先生。今日はありがとうございました」