お天気のいい午後、おさんぽがてらねこ森町に遊びに来たにゃこさん。
ねこ森町とはポ村の隣にある、のどかな町。
そこにはにゃこさんのお友だちのねこさんが、にゃんにゃん言いながら暮らしています。
「あっダイちゃんにゃ」
にゃこさんはさっそく、大好きなお友だちを見つけて駆け寄ります。
お友だちのダイちゃん、一生懸命辺りをウロウロしています。
「どしたんにゃ?何してるんにゃ?」
どうやら誰かを探しているみたいです。
「おねにゃんを、探してあげているの」
「おねにゃん?」
「ポにゃさんの、お姉さんなの」
「ポにゃさん?」
なんと、ねこ森町に遊びに来ていたポにゃさんというねこのお姉さんが、迷子になってしまったらしく、探してあげているようです。
この町ではポにゃさん、元気そうです。
「おねにゃんが、迷子にゃ?」
当のポにゃさんは、座り込んでうずくまっています。
だいぶ大人のポにゃさんですが、ずっと一緒に暮らしてきたお姉さんがいないと、不安なのでしょう。
「ポにゃさん…おねにゃんとここで、3時に遊ぶ約束をしていたんにゃ。なのにまだいないんにゃ。ポにゃさん…とっても楽しみにしていたにゃのに」
「3時にゃ?」
3時まであと15分。
絶対、3時から遊びたい様子のポにゃさん。
楽しみすぎて、早く遊びたくなったようです。
あと15分あるため、やってくる可能性はあるけれど。
「ポにゃさん、きっともうすぐおねにゃん、ここ来るよ」
ねこさんたちがポにゃさんに声をかけますが、そんな気休めの言葉はきかないようです。
「じゃあ、みんなで3時までにおねにゃんを探してあげよう」
「そうにゃ、探したんにゃ」
「どこを探したらいいのかな?」
ねこさんたちは、手分けしてお姉さんを探すことにしました。
女の子たちは“ふかふか草むら“の方に探しに行きます。
「急ぎましょ」「そうね」
ねこさんたちはお姉さんがいそうな場所ではなく、ねこさんがいそうな場所を探しているようです。
そのため、男の子たちは涼しくて景色のいい“ねこ森樹の上“を探しに…
そしてにゃこさんは狭くって居心地のいい“ねこ箪笥“の中を覗き込む。
ねこさんたちはあちこち探し回りましたが、お姉さんはなかなか見つかりません。
「ポスター作る?迷子ポスター」
「でも作る時間がないよ」
3時まで残り10分。
「ああ、3時になっちゃう」
ポにゃさんはおねにゃんを思い、とうとう泣き出してしまいました。
「ポにゃさん…」
その時ポにゃさんの心配をしたO様が、おふれを出されました。
“3時までの10分間でポにゃさんのおねにゃんを、ねこ森町住民全員で探す“
そして早くポにゃさんの笑顔をとり戻してあげる、というのがおふれの内容でした。
【町内放送迷子のお知らせ】
“迷子のお知らせをいたします。ポにゃさんのお姉さんが迷子です。ポにゃさんのお姉さんが迷子です。見かけた方はねこ森城までお知らせください“
すると放送直後。
プルプルプルプル…
ポにゃさんの携帯に、お姉さんから連絡が入りました。
「おねにゃんにゃ!」
「えっ?」
「ポにゃさんのおねにゃんが、今日はもう帰ってきなさいって」
「迷子のお姉さん、見つかったの?」
「いたにゃ!
おねにゃんいたにゃ」
ホッとしているポにゃさん。
ポにゃさんのお姉さんは、ねこ森町の珍しいグッズを購入するため、お店をまわっていたようです。
「あらあら」
「なぁんだ、よかったよかった」
「みにゃさん、ありがとにゃ。
うちのおねにゃんときたら、ねこ騒がせにゃ」
「わかるにゃ。
うちにおねえちゃんも、そういうとこあるにゃ」
「それ言ったら、うちのおねえちゃんにゃんかね…」
ねこさんたちはおうちのおねえちゃんの愚痴…に見せかけた自慢大会をはじめてしまいました。
自分の大好きなお姉さんのことを、みんなに聞いてもらいたい。
ねこさんたちのお話に花が咲き、時刻はもう夕方。
さすがにお姉さんの方が、心配してしまいます。
「ポにゃさん、早く帰らにゃいと。
行ってお姉さんと、遊んでおいで」
「にゃっ、そうにゃった」
「バイバイ、またね」
「お世話になったにゃ」
ポにゃさんは慌てながら、でもどこか嬉しそうに、そそくさとお姉さんの元に帰って行きました。
そんなポにゃさんから、後から聞いたお話。
お姉さんは“町内放送の迷子のお知らせ“を聞いてとても困惑していたそうです。
ちょうど待ち合わせ場所に向かおうとしていたのに、約束をすっぽかしてしまうくらい、困惑をしていたという…
「なんででしょうね」
「そにゃね、なんでにゃろね」
せっかくねこ森町のみんなが、協力してくれたのに…
「ポにゃさんが迷子のおねにゃんを、早く見つけてあげなかったからにゃ…」
「そうかもにゃね。
次はもっと早く、O様に迷子放送してもらうにゃ」