マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

虫の生涯 その1

不法侵入しただけで、殺されることがある存在。


それが僕たち。



場合によっては、僕たちを殺す薬をかけられることもあるという。




そういう噂話は、赤ちゃんの頃に聞いた。

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子供の頃は、みんなで大人になってからの話を仕切りにしていた。



“殺す薬“



なんでそんなものが存在するんだろう。


なんで作るんだろう。



しばらく子供たちの間でその話題が、持ちきりだったことがあった。



“にんげんという奴の中には、背後からひっそりと忍び寄って、殺そうとしてくる奴もいるらしい“




“そうなんだ。気をつけなきゃね“



“僕たちコガネムシは『害虫』なんだって。だから注意して暮らさなきゃならないんだって“


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病気になっても、怪我をしても、治療してくれる人もいなければ、治療薬もないんだから…




あるのは殺す専門の薬ー




でも自分が不幸だとは、思っていなかった。




大抵の生物は、生涯で多くの子どもを産むって聞いた。



それなのに、その子たちが無事成長することは、稀なんだってことも…




だから簡単に命が消えてしまうのが、当たり前の世の中なんだってことは知っている。




いつ死ぬかなんて分からない。



そういうものなんだ。



それは、本能で知っている。



短い命だから自由に動き続けられるように、僕たちは痛みもそんなに感じないように出来ているんだと思う。


死を恐れ、ずっと隠れたままでいたら、子孫を作ることなんてできないもの。


大人になって空を飛べるようになったら、自由に飛び回って、思いっきり満喫しようって夢みてたんだ。



僕たちを殺す危険な薬があるって聞いても僕を含め、みんなが大人になるのを楽しみにしていた。



多少危険でも、色々見てみたいし、色んなところに行ってみたい。




だって寿命は長くないんだもの。


生きているうちは、出来るだけ楽しみたい。



それでも一応安全のため、僕を殺そうとしてこない家を見つけて、侵入してみた。




やっぱり不法侵入して殺されるのは嫌だもの。



なんでだろう。



なんかさ、人の家って入りたくなるんだよね。



この家は、どんな悪さをしても僕のことを殺そうとはしてこない。


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でもいつも…



ティッシュにくるまれて“コロン”と、外に放り出されてしまう。

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だから懲りずに、また入る。



そしてあの明るく光っているやつに、カンカンぶつかりたいんだ。



カンッカカカカンッ!



“あ、やば“


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この家にいる、ねこという生物が僕に気づいて、つかまえてこようとする。



今やばいと思ったけれど、やっぱり余裕だった。



この家にいるねこという生物には、ちっともつかまる気がしないんだ。


次回へ続きます。