前回のお話
てんまさんの妹、しょうまさんは最近持病の喘息が悪化してきているのを感じていたため、検査をしに病院を訪れました。
22ppb以上で喘息の可能性
33ppb以上で喘息確実
しかししょうまさんの検査結果は、ppb130以上でした。
「わたしはね。
喘息を専門で見ていますけど、こんな数値は月一回あるかないかですよ。
ではしょうまさん。
今はどんな時に症状が出やすいですか」
「先生は何で、喘息専門の医師になったんですか?」
「今、関係ない質問はしなくてよろしい。
わたしの質問にまずこたえて下さい」
「そっけないなぁ。
そうですね。
冷たい空気を吸ったり、お酒を飲んだりした時が多いですかね。
市販のめんつゆとかでもアルコールが入っていると、症状が出たりします」
アルコールなどの刺激により、気道に炎症が起きる。
一酸化窒素を作る酵素が増えてしまう。
「あなた薬剤師なんでしょう?
吸入ステロイド薬は、適切に使用して下さいね」
「はい、承知しました」
吸入ステロイド薬というのは、長期管理薬(コントローラー)です。
気道の炎症を鎮めて予防をする。
そして症状が出てしまった時は、気管支をひろげる気管支拡張薬を使用します。
咳止めとは異なるもので、使用後すぐに効果が出ます。
ただし心臓がドキドキするなどの、副作用がある。
気管支拡張薬を使用しないですむように、普段から吸入ステロイド薬でコントロールをしていきます。
定期的な通院も大切です。
喘息の発作が起きた時のみの一時的な治療では、ますます発作を繰り返してしまいます。
治療は毎日続け、一時的に症状が治まったとしても勝手に治療をやめたりしてはいけません。
「しょうまさん、あなたねこを飼っていると言っていましたね」
「え?言ってました?」
「喘息には、ねこはいけないよ」
「でも、離れるわけにもいかないので」
自分の身体のために、家族と離れるなんてありえない。
生きる意味がなくなってしまう。
「では、ねこはその子で最後にしなさい」
「…」
喘息が原因で亡くなってしまう人は、年間1000人以上はいるそうです。
「大人なので責任は自分でとります」
「医者としては“ならお任せします”とは言えませんね。
とりあえず炎症がなくなること。
それが治療のゴールです」
「目標って高い方が燃えますよね?」
しょうまさんはニコリとして答えます。
「高い目標とは、思わないで欲しいんですけどね」
しょうまさんのゴールは、まだ先になりそうです。
「先生、しょうまさん!
頑張りましょう」
静かに見守っていた看護師さんが見かねたのか、優しく励ましてくれました。
長い付き合いになりそうな、先生と看護師さん。
しょうまさんは再び、ニコリとほほ笑みかえしました。