夜、お風呂上がりのUSAさん。
「はぁ、気持ち良かった。
ん?やだ、爪伸びてきちゃってる」
USAさんはお風呂上がりの、柔らかい爪を切るのが好きです。
「爪切り、爪切りー」
“カタッ”
爪切りを取りに行った時、何か物音がしていることに気付く。
「ん?」
「にゃだだだだだっ」
「え?」
「なっ、なに!?びっくりしたー!
あなた、どろちゃん?」
どろちゃんは、にゃこさんとライバル関係にあるねこさんです。
“夜に爪を切ると、親の死に目にあえない”
突然どろちゃんが、USAさん宅の窓辺で、迷信を語り出しました。
「夜に爪を…ってそんな迷信あったっけ?」
なぜか迷信にうるさいタイプのどろちゃん。
迷信として昔から語られている行いをすると、どこからか現れるのです。
昔は小刀などで爪を切っていたため、暗い夜に
爪を切るとホントに危険だったそうです。
「わかったわよ、どろちゃん。
爪は明日、明るいうちに切るわ」
「にゃっ!」
どろちゃん、ご満悦。
今は小刀ではなく、爪切りもあるし、部屋の中も明るいのですが、今日はとりあえずどろちゃんの言うことを、聞いてあげることにしました。
とはいえ…
切りたいと思ったときに爪を切れないと、余計に爪のことが気になってしまいます。
「いいや、買っといたアイス食べよう。
ふんふーん。今日はバニラアイスー。
林檎のジャムのっけてたべよっ」
USAさん“鼻歌アンド口笛”を吹いて、気持ちを盛り上げています。
“ハッ”
“夜に口笛を吹くと、蛇が出る”
口笛に引き寄せられる、邪悪なもの…
口笛の音を聞きつけた“邪(じゃ)”が現れるのだそうです。
「あーそうなんだ。
口笛ね。ダメなのね…」
「にゃっ!」
「もう、アイスはやめて寝よ。
目も疲れてるし…
そうだ、ついでに目薬さしとこうかな」
“ハッ”
“夜、寝る前に目薬をさしてはいけない”
「なにそれ、全然知らない。
なんですか?それも迷信?」
「USAさん、ダメよ」
どろちゃんを抱っこしたきのこさんが、真面目な口調で語ります。
なぜか長く生きている方たちが、言いがちなお話。
「寝る前に目薬をさしたらね、目が潰れてしまうのよ」
“潰れる!?”
「まさかっ!?
そんな薬、売っても良いんですか?」
目が潰れてしまう薬?
22世紀からねこ型ロボットが購入してくる、未来グッズ並にけっこう危険です。
「寝る前に目薬をさすと、目が潰れる。
年配の方で今もそう信じている方が、いるみたいですね」
翌日。
USAさんは昨日のきのこさんの話を、改めてマメチュー先生に聞いていました。
「寝る前に目薬をさすと、目が潰れるっていうのは迷信じゃないんですか?」
「すごく昔…
特定の目薬の中には夜眠る前に、ささない方が良いものもあったんですよ」
「それって、なんでですか?」
「目薬に含まれている防腐剤が、刺激を与えてしまうんです」
「…防腐剤」
「今は大丈夫ですけど、昔はアレルギーを含む成分が含まれていたんです」
「なるほどー。
そうだったんですね」
「起きてまばたきをしていると、その成分は流れていきます。
でもすぐ目をつぶってしまうと、表面に防腐剤が留まってしまう。
なので今でも目薬さした後、10分くらいは起きていた方がいいんですよ」
「へー、知らなかったぁ」
「さすがに目が潰れるようなことは、ありませんけどね」
「それでも寝る直前に目薬は、しないようにします」
「はい。
あと爪も切るのではなく、ヤスリで削ればどろさんもプリプリ怒らなかったかもしれませんね」
「ほほぉ。なるほどですー。
じゃあ、今度ヤスリでやってみよ」
爪切りで切っても上手に切らないと、失敗して傷つけてしまうこともある。
「案外どろちゃん、為になる。
ちゃんと、どろちゃんのお言いつけ守ろっと」