空気が澄んでいて、空を遮るような高い建物がないポ村では、星がとてもきれいに見えます。
七夕の時期には天の川を見物しに、観光客が来ることもあります。
星空というのは、色々な想像をかき立ててくれる。
“もしかしたらあの星々の中には、花や海や空が存在するかもしれない。
知的生命体も存在し、地球とはまた違った生活を送っているかもしれない”
そんなことを考えていると時を忘れて、長いこと星を眺めていられる気がします。
でも今年の七夕は、残念ながら曇り空…
「今年もお天気良くないね。
織姫さまと彦星は、一年に一回しか会えないのに」
トビーくんはしょんぼりしながら、五色の短冊を握りしめていました。
「てんまちゃん、人間関係についてのお願いは黄色い短冊にするんだったよね?」
「トビーくん、覚えてたんだ。そうだよ」
紫(黒)
青(緑)
赤
白
黄
五色の短冊には、それぞれ意味があるそうです。
“織姫さまと彦星が、毎年会えるようになりますように”
「ロマンチックなお願いだね」
「だってぇ。
年一回しか会えないのだって、寂しいだろうにさー」
「かわいそうにゃ」
「そうだよね。毎年会えると良いよね。
天の川も見たいしね」
七夕の時期は、梅雨真っ只中。
晴れる確率は、あまり高くなりません。
「あのさぁ」
さっきまで黙って聞いていたまゆさんが、口をはさんできました。
「地球のさぁ。
日本にある、とある地域に雨が降るとさ。
何でベガ(こと座/織姫)やアルタイル(ワシ座/彦星)に影響があるわけ?」
「も~、まゆちゃんったらおとな気ないっ」
「ふんっ」
「ロマンチックじゃないにゃ」
「何にゃこ…
今日はねこ森町に、行ってるんじゃないの?」
「行ってるにゃよ。
押し入れを使ったら“プッ”って行けるにゃ」
隣にあるねこ森町には、押し入れを使って移動出来るのです。
ベガとアルタイルに、白鳥座のデネブを加えた星々を夏の大三角と言います。
夏の夜空に光り輝く星です。
中でも一番輝いているのはデネブです。
地球を照らしてくれる太陽の大きさは、地球の約100倍ほど。
ベガとアルタイルは“太陽”の約2倍。
そしてデネブはなんと、太陽の約200倍なのだそうです。
このように大きな星は寿命が短く、その生涯を終えた後はブラックホール、もしくは中性子星になります。
大きい星は命を燃やし尽くすように、光を放っているので、太く短い人生になるのです。
「その図体のでかいデネブは、何の役割してんの?
七夕伝説に関係あるの?」
「織姫さまと彦星を、助けてくれるのかなぁ」
「そうだよ、トビーくん。
二人のためにカササギの群れ(デネブのこと)が、運んでくれるんだって。
雨や曇りの日でも」
「そうなの?
なら、天気が悪くても毎年会えるの?」
「う~ん。それがね。
私もよくまだ分からないの」
雨の日でも天の川に架かる橋を渡って行き来が出来るとも、天の川が氾濫してやっぱり会えなくなるとも言われていて、諸説あるようです。
「ねぇ、てんま。
そもそも奴らは、何で年一しか会えないんだっけ?」
次回へ続きます