まんまる、まるの、シルエット。
ねこのどろちゃんです。
高い木の上に登って、くつろいでいます。
まんまるのどろちゃん。
見ているとコロンと転がり落ちてきそうで不安になるのですが、不思議と安定しています。
その木の上から、草原の上をチョロチョロとうごめく何かを見つめています。
にゃこさんです。
にゃこさんはどうやら、ひとりで歩き回りながら、ブツブツ呟いているようです。
“クンクンクン”
「アイツの匂いがすんにゃ。
この辺にいるはずにゃのに…
隠れているのにゃろか。
また何か迷惑かけたり、してないにゃろか」
どうやらどろちゃんが近くにいることを、匂いで察知しているみたいです。
にゃこさんはいつでも、ポ村の人々が心配でなりません。
一方探されている方のどろちゃんは、微動だにせず、ブツブツ言いながらチョロついているにゃこさんを、見下ろしています。
「隠れていないで、さっさとにゃこの前に現れるにゃっ!
そんで今日は、にゃこと勝負するにゃっ」
にゃこさんはどろちゃんを、ライバルだと思っているみたいです。
ねこさん同士の勝負。
いわゆる縄張り争いです。
ねこさんは相手がどんなねこさんだろうが、縄張り争いをしてしまう宿命…
「ここは、にゃこのとこにゃ!」
勝負で勝ったねこさんが…
戦う男たちが、自分の領土を広げられる。
クンクンクン…
「近いっ近いにゃ。
絶対この辺にいるはずにゃ」
にゃこさんはどろちゃんを見つけるため、辺りを見回しています。
「にゃむ?なんにゃ?この大きい影…」
にゃこさんは、どろちゃんが登った木の影に気付き顔を上げる。
「ばっばっ…化け物にゃー!」
相変わらず、ねこさんは単純です。
“対峙するねこが自分より、高いところにいる”
ただそれだけのことなのに、高いところにいる相手のねこさんが、とても大きく見えてしまう。
「にゃわ、にゃわわわわゎ…」
「む?なんにゃて?
誰が化け物にゃて?」
どろちゃん木の上から、下りて来て地団駄。
どろちゃんは先程まで微動だにしなかったのに、失礼なことを言われた途端、おかんむり。
「なんにゃぁ…
化け物じゃにゃくて、お前きゃっ」
「そうにゃ。どろちゃんにゃ」
「そんなところで偉そうにして。
また泥棒を働いているにゃね?
そこは元々にゃこさんの席にゃ」
「泥棒?何でにゃ?
先にこの席にいたもの勝ちにゃ。
どろちゃんが勝ったんにゃ」
「むんにゃぁ!!それにゃら勝負にゃ!
お前に勝って、その席取り返すにゃ!」
「めんどくさいやつにゃね」
どろちゃん、テケテケと走り回る。
「待てっ!逃げるにゃ」
どろちゃんが去って行った事で、にゃこさんのいう“席”が空いたというのに、勝負にこだわっているため、にゃこさん気付いていません。
どろちゃん、突然のUターン。
にゃこさんのお手々から漂う、漢方の香りに飛びついて来ました。
今朝まゆさんのお薬をいじくって、にゃこさんは怒られたばかりです。
どうやらどろちゃんは、漢方薬の匂いが好きみたい。
クンクンクン
夢中で嗅いでおります。
「にゃきゃっ!お手々離すにゃっ!」
「もう、いやにゃあ~」
しっぽ巻いて逃走するにゃこさん。
結局本日も完敗。
領土は1ミリも奪い返せませんでした。
「今日はやられたけど、次は頑張んにゃ!」